【本編完結】作られた悪役令息は断罪後の溺愛に微睡む。

鏑木 うりこ

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33ボクは幸せになりたい2(アメシス視点

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「アメシス!立って、駄目だ。こんな所で……」

「あぁん……殿下ぁ……もう駄目ですぅ」

 立食形式のお茶会が始まってかなり最初の方に、ボクはか弱く倒れた。

「アメシス、なんで今日に限ってそんな!立って、頼む!私の為にも立ってこのお茶会をやり遂げるんだ!」

 やけに殿下の叱咤激励が激しい。でも無理ぃ~ここ最近の寝不足と、締め上げてコルセットでボクはフラフラだし、このまま続けたらまたボロが出ちゃう。なんとかバレる前に退場しないと駄目だもん!体調不良なら誰も文句は言わないでしょう?ボクはか弱い殿下の婚約者ってスタンスを取るんだ。そして勉強は……それなりに頑張るよう~

「殿下、わたしは……無理ですう~」

 大きな失敗をする前に家に帰らせてぇ~~お願い~。

「アメ……シス……、私の可愛いシス……。私は真実お前を愛していたよ……シス……無理なのか……」

「無理ですぅ」

 その時やけに殿下が寂し気だったのが気になるけれど、殿下は帰りの馬車を手配してくれた。

「……私は、このままお茶会に参加しなければならない。送ってやれずにすまない……」

「だ、大丈夫です!」

 大失敗を犯す前に馬車に乗り込みほっとした。うつらうつらしながら家につくと、ボクが早く帰ってきたからか父上が驚いて飛び出してきた。

「アメシス!!なんでもう帰ってきたんだ!?お茶会はどうした!!」

「ぐ、具合が悪くてぇ……それに長居したらマナーを覚えてないのバレちゃうし……」

「ば、馬鹿もーーーーんっ!!!」

「ひいっ!!」

 初めて父上に怒鳴られた!なんで、なんでぇ!?

「今日の……今日のお茶会は!殿下が、殿下が出来の悪いお前の点数稼ぎの為に開いてくれたお茶会だったのに!!殿下に言われただろう!?今日は何があっても最後までたっているようにと!」

「へ?」

「殿下が、王妃様に掛け合って「健康でいるのも大切な事でしょう?アメシスはとても健康で元気があります。見てあげてください」と!ただ参加して最後までいる。それが条件なのに!お前はお前は何故帰って来たーーーーー!!」

「えええーーーーーー!し、知らないよ、そんなの!!」

 そう言えばダングストン公爵の事を考えていた時に何度も殿下のお話を聞き逃したっけ。たいしたことないと思って聞き返さなかったら、もしかしてその事だったの!?

「頭の悪いお前の為に殿下が何とか組み込んでくださったのに……駄目だ、もう駄目だ……。アメシス、お前では殿下の婚約者は務まらない……婚約を解消すると申し込まれたら受けるしかない」

「嘘……い、嫌だ、嫌だよ!!!ボクは殿下の、サフィール殿下と結婚して幸せに暮らすんだ!!」

「無理だ……。マナーも覚えられん、今日のお茶会も最後まで参加できない……無理だ」

「嫌、いやああああああ!!!」

 その数日後に、王家から正式に婚約解消の書類が届いてボクとサフィール殿下の婚約は無くなってしまった。どうして、どうしてなの?ボク達愛し合っていたのに……酷い、これも全部アクアのせいだ……酷いよ、アクア……。

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