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32 ボクは幸せになりたい(アメシス視点
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「駄目だ、出来ない。駄目だ、覚えられない……うわあああんっ!」
「アメシス!早く用意をするんだ。今日は王妃様とのお茶会であろう!」
「無理ぃ……ボク、今日行かない」
「行かなければ問答無用で婚約解消されてしまうぞ!良いのか!!」
「ふぇ~ん……!お父様、代わりに出てください」
「馬鹿なこと言うな!メイド共、アメシスを支度させよ!」
「は、はい!」
こうしてボクはあわただしく身支度され、王宮へと向かわされる。勉強しても勉強しても全然覚えられない。だって歴代国王なんて何人いると思ってるの!?しかも似たような名前でさ、ナントカ3世、ナントカ5世。知るかそんなの!!自慢じゃないけど暗記系は不得意なんだよぉ!何が得意だって……?勉強は全部嫌いだ!
「アメシス、今日は……」
「ふええぇ……」
王太子のサフィール様が出迎えてくれた。今日の洋服はサフィール様が送って下さった、とても素敵な拵えなんだけれど、徹夜続きのボクは体調も最悪、肌のコンディションも悪い。化粧でなんとかカバーしているけれど、サフィール様が
「……大丈夫そうではないね……」
と、口ごもるくらい最悪な感じだった。それでもサフィール様は手を取ってエスコートしてくれる。
「……アクアに会ったのかい?」
「……はい……。ボクの事もお父様の事もアクアは冷たく見下してきました。たまたまタングストン公爵に見初められたからって……家族の事をあんな風に横柄に捨てるなんてあんまりです」
哀れっぽく殿下に訴える。もう最悪の噂を流している最中だ。タングストン家も最悪だし、そこで横暴に振る舞うアクアって事にしてね。ボク達はせっかく迎えに行ったのに、酷い裏切りを受けて悲しみに暮れているって感じ。アクアもタングストン家も社交界からつまはじきにされちゃえばいいんだ!
でも、ダングストン公爵はかっこよかったなあ……怖い感じだけど、それが逆にゾクゾクしちゃう!
「アメシス?聞いてる……?」
「え?あ、ハイ!」
ヤバ、なんにも聞いてなかった。殿下は何と仰ったんだろう?ま、いいか。今日こそは王妃様を怒らせて退出させないようにしないと。全然何にも覚えられなかったボクは良い事を考えたんだ……途中で具合が悪くなって帰ればいいって!そう、王妃様がいなくなる前にボクが倒れてしまえばボロを出さなくて済むでしょう?だからその為にもメイドにコルセットを思いっきり締め上げて貰ったの。
殿下から贈られた服は締め上げは必要ない形だったけれど、多少でもスタイルが良い方が良いし……。
「アメシス?良いね、必ずだよ」
「ひゃ?……は、はい!」
また聞いてなかった。ま、大丈夫だろう。ボクは長年コレで済ませて来たからその癖が抜けてなかったんだ。痕からアクアに聞けば完璧な答えを用意してあるし、聞きそびれた事も全部アクアが覚えている。そのアクアがいない生活にボクはまだ慣れていなくて……殿下の話をもう一度聞き返していれば良かったのに……。
「私も隣でフォローしよう。頑張ろうね、アメシス」
「はいっ!!殿下」
殿下は優しくてキラキラしている。でもあのタングストン公爵を見た後だとちょっと見劣りしちゃうんだよね。ボクは一番の美形は絶対殿下だって思ってたのに、あんなに整った顔の人がいたなんて。それに背も高くて体つきもしっかりしてて……抱きしめられるアクアが凄く華奢で可愛く見えるんだ。ボクとアクアはほとんど背も体つきも変わらない。ボクがタングストン公爵に抱きしめられてもあんな風に可愛らしく見えるんだろうな。
それに比べて殿下はちょっと頼りない。優しいけれど、背もそこそこだし体も細い。たまに僕の方がしっかりしなきゃって思うくらいな時もあるし……アクアの方が幸せそうなんだもん!!
殿下の事は好きだけど、魂のつがいかって聞かれたらなんか違う気がするんだよね。
アクアをしっかり守ってるタングストン公爵みたいにボクもしっかり守って欲しいんだよなぁ……。
サフィール殿下にエスコートされながら僕はアクアを見つめる優しくてとろけそうな真っ赤なイチゴジャムみたいなタングストン公爵の赤い瞳を思い出していた。
「アメシス!早く用意をするんだ。今日は王妃様とのお茶会であろう!」
「無理ぃ……ボク、今日行かない」
「行かなければ問答無用で婚約解消されてしまうぞ!良いのか!!」
「ふぇ~ん……!お父様、代わりに出てください」
「馬鹿なこと言うな!メイド共、アメシスを支度させよ!」
「は、はい!」
こうしてボクはあわただしく身支度され、王宮へと向かわされる。勉強しても勉強しても全然覚えられない。だって歴代国王なんて何人いると思ってるの!?しかも似たような名前でさ、ナントカ3世、ナントカ5世。知るかそんなの!!自慢じゃないけど暗記系は不得意なんだよぉ!何が得意だって……?勉強は全部嫌いだ!
「アメシス、今日は……」
「ふええぇ……」
王太子のサフィール様が出迎えてくれた。今日の洋服はサフィール様が送って下さった、とても素敵な拵えなんだけれど、徹夜続きのボクは体調も最悪、肌のコンディションも悪い。化粧でなんとかカバーしているけれど、サフィール様が
「……大丈夫そうではないね……」
と、口ごもるくらい最悪な感じだった。それでもサフィール様は手を取ってエスコートしてくれる。
「……アクアに会ったのかい?」
「……はい……。ボクの事もお父様の事もアクアは冷たく見下してきました。たまたまタングストン公爵に見初められたからって……家族の事をあんな風に横柄に捨てるなんてあんまりです」
哀れっぽく殿下に訴える。もう最悪の噂を流している最中だ。タングストン家も最悪だし、そこで横暴に振る舞うアクアって事にしてね。ボク達はせっかく迎えに行ったのに、酷い裏切りを受けて悲しみに暮れているって感じ。アクアもタングストン家も社交界からつまはじきにされちゃえばいいんだ!
でも、ダングストン公爵はかっこよかったなあ……怖い感じだけど、それが逆にゾクゾクしちゃう!
「アメシス?聞いてる……?」
「え?あ、ハイ!」
ヤバ、なんにも聞いてなかった。殿下は何と仰ったんだろう?ま、いいか。今日こそは王妃様を怒らせて退出させないようにしないと。全然何にも覚えられなかったボクは良い事を考えたんだ……途中で具合が悪くなって帰ればいいって!そう、王妃様がいなくなる前にボクが倒れてしまえばボロを出さなくて済むでしょう?だからその為にもメイドにコルセットを思いっきり締め上げて貰ったの。
殿下から贈られた服は締め上げは必要ない形だったけれど、多少でもスタイルが良い方が良いし……。
「アメシス?良いね、必ずだよ」
「ひゃ?……は、はい!」
また聞いてなかった。ま、大丈夫だろう。ボクは長年コレで済ませて来たからその癖が抜けてなかったんだ。痕からアクアに聞けば完璧な答えを用意してあるし、聞きそびれた事も全部アクアが覚えている。そのアクアがいない生活にボクはまだ慣れていなくて……殿下の話をもう一度聞き返していれば良かったのに……。
「私も隣でフォローしよう。頑張ろうね、アメシス」
「はいっ!!殿下」
殿下は優しくてキラキラしている。でもあのタングストン公爵を見た後だとちょっと見劣りしちゃうんだよね。ボクは一番の美形は絶対殿下だって思ってたのに、あんなに整った顔の人がいたなんて。それに背も高くて体つきもしっかりしてて……抱きしめられるアクアが凄く華奢で可愛く見えるんだ。ボクとアクアはほとんど背も体つきも変わらない。ボクがタングストン公爵に抱きしめられてもあんな風に可愛らしく見えるんだろうな。
それに比べて殿下はちょっと頼りない。優しいけれど、背もそこそこだし体も細い。たまに僕の方がしっかりしなきゃって思うくらいな時もあるし……アクアの方が幸せそうなんだもん!!
殿下の事は好きだけど、魂のつがいかって聞かれたらなんか違う気がするんだよね。
アクアをしっかり守ってるタングストン公爵みたいにボクもしっかり守って欲しいんだよなぁ……。
サフィール殿下にエスコートされながら僕はアクアを見つめる優しくてとろけそうな真っ赤なイチゴジャムみたいなタングストン公爵の赤い瞳を思い出していた。
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