【本編完結】作られた悪役令息は断罪後の溺愛に微睡む。

鏑木 うりこ

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22 嵌らないピースと嵌ったピース

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「い、居ない?!そんなはずないよね、絶対アクアだよ!」

「私もそう思うが……やはり我らが足を運ばねばならんのか」

 アメシスとクレスト公爵はむむ、と唸ったが結局はアクアがいると言うネージュ国への旅を決めた。
 結局アメシスはこの短期間でマナーや知識の遅れを取り戻す事は出来ない。次に大きな場で何かやらかす前に、代役のアクアを連れて来なければ王太子の婚約者の座を追われてしまう。
 そしてクレスト公爵はどんどん悪化して行く公爵家の収入を青い顔で見ていた。何をどうやって効率を上げていたかわからないが、アメシス……いや、アクアがやっていた頃はもっとお金が入ってきていたのだ。

「な、何が、何が違うのだ?!」

「分かりません……!」

 執事ですら原因が掴めない。とにかくアクアに確かめなければクレスト家はいずれ没落してしまう。そうでなくてもアメシスの王太子妃の座も雲行きが怪しくなっているのに。

「金はかかるが仕方がない。高速馬車を用意しろ!急いでネージュへ向かう!」

「は、はい!」

 こうして2人はアクアの住むタングストン家に向けて出発したのだった。



 そんな事をアクアは全く気が付かず、今日もノエレージュと笑いあったり、孤児院の視察に出かけたり、タングストン公爵夫人として皆に感謝されながら笑顔で過ごしていた。上から押さえつけられる事もなく、本来の自分の思うままに行動できる事にアクアは感謝を忘れない。

「私……旦那様のつがいになれてよかった……とても幸せです」

「私もだよアクア。君がいると私の中の欠けていた物が満ちてくるのが分かるんだ。いつも何か足りなくてイライラしていた自分が嘘のようだ」

「私もです……旦那様の暖かさが私を満たしてくれる……」

 いつも寄り添っている2人をみて人々は自然と笑顔になる。

「何というか、夜の空とお月様みたいだなぁ」

「そうだなぁもう悪魔公爵なんて呼べないなぁ」

 徐々にノエレージュのあだ名も悪魔公爵から月を抱く夜空の様だと変化して行く。苛烈で人を罰するのを何の躊躇いもなく行う冷血漢から、歳若い伴侶を大切にする優しい公爵へと。

「「やっぱりアクア様は凄い!」」

 そしてまだまだ増え続ける芋の贈り物にアクアの困惑は続いていた。

「孤児院でもこんなにお芋は食べないし、どうしたら良いでしょうか」

「別の物が好きだと噂を流してみようか?きゅうりとか」

 確かにアクアはきゅうりもトマトもよく食べる。

「きゅうりは日持ちしませんのでたくさんいただく事があればもっと困ってしまいます」

「そうだな、では何が良いのだ?」

 何がいいのかと問われると返答に困ってああでもないこうでもないと悩んでいる。それをみてノエレージュも使用人達も……街の人まで微笑ましく思っているのだった。

 

 
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