【本編完結】作られた悪役令息は断罪後の溺愛に微睡む。

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
21 / 54

19 だってぇ面倒だったからー

しおりを挟む
「な、な、な、な!!!」

「だってぇ……」

 どうしても1人じゃアクアを探せないと悟ったボクはしょうがないからお父様にお願いした。最初は

「やっぱりお兄様がいないと寂しくて……」

 と、かわい子ぶってみたけど、

「殿下が居られるだろう?」

 で、終わって話にならなかった。埒が明かずにボクとアクアの入れ替わりをお父様に漏らしてしまった。

「ア、あのアクアが……?!ではお前がやって来た領地の帳簿も、人員管理も全部アクアがやっていたのか?!」

「……うん」

「アメシス、お前も出来るのだよな??お前が経営に関わるようになってから、我が領の収入はずっと増え続けているんだ」

「えっ?!」

 アクアってそんな事までやってたの??あ、でも大人になったら経営にも関わらないといけないとか言ってたし、学園でもなんかそんな事言ってたけど、ボクは殿下のお嫁さんになって楽しく暮らすんだから仕事なんてしなくて良いって思って……。でも学園のテストで点が悪いのは主人公としてはあり得ないから、テストはアクアに受けさせて……。

「アクアみたいな経営の事を何も知らん、馬鹿みたいなテストの答案しか書けない奴とお前は違うと思っていたのに……アメシス、まさかとは思うが学園のテストはどうしていたのだ……?」

「えっと……」

 ヤバ……バレちゃった。

「ひ、瞳の色を入れ替えて、ア、アクアがテストを受けていただと?!完全な不正ではないか!!」

「お、お父様っ!声が、声が大きいですっ!!」

 慌ててお父様の大きな口を塞ぐ。だってぇ面倒だったんだもん。

「ま、まさかとは思う、信じたくないのだがあの笑うしかない学園のテストは……アメシス、お前の解答なのか……??」

 えっ?!アクアの答案ならボクが瞳の色を入れ替えてる書いたよ?だってアクアもテスト出さなきゃいけないもん。ボクそんな酷い答え書いてないけど??えーと、うーん、あ、そうだ!

「ア、アクアの答案になるからぁわざと頭が悪そうな事を書いたんですよ、お父様」

 そういうとあからさまにホッとして、椅子にどかっと腰を下ろした。

「そ、そうだよな、私の可愛いアメシスがあんな阿呆な訳ないよな。あれでは王太子妃どころか分家の子爵家に嫁がせるのも気が引けるレベルだものな!はは、そうだよ、そうだよな!ははは、はははは!」

「そ、そうですよ、お父様。ふふ、ふふふ」

 とにかくアクアを探して秘密裏に連れ帰るという事になった。それにしてもボクは転生者だよ?そんなに阿呆な訳ないじゃん!と思って学園で使っていた教科書を開いてみるとちんぷんかんぷんだった……全然分かんない……。
 そっともう使われていない日当たりの悪いアクアの部屋へ入ってみて、アクアの使っていた教科書を開いてみるとびっしりと書き込みがあって、勉強していた事が良く分かった。

「なんだ、これ……気持ち悪い……」

 小さな字でびっしりと書き込んである。一緒に使っていたノートも書き込みだらけだけれど、見やすかった。
 アクアのノートを見ながらなら、教科書に書いてある事が少し理解できる。

「本当に勉強してたんだ……必死に。捨てられる悪役令息の癖に!」

 何だかイライラが募って教科書もノートもゴミ箱に捨ててやった。もう学園は卒業したんだし、要らないだろう!!



しおりを挟む
感想 94

あなたにおすすめの小説

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

処理中です...