20 / 54
20 困った私と困ったボク
しおりを挟む
「悪魔公爵のお嫁様見たかい?」
「可愛い男の子だろう!?銀色の髪に水色の目のキラキラした!」
「うんうん!どうもね、平民の出らしくて凄く平民に優しいんだよ。そして知ってるか?そんなお嫁様の好物は……」
「「「ふかした芋!」」」
何故か公爵家にお芋がたくさん届くようになってしまった。一体どうしてなんだろう?芋は好きだけれど、貯蔵してもこれは食べきれないのではないのだろうか……?
「秋になったら焼き芋大会でもすればいいのかな……?」
私の好物がふかし芋だとあちこちに広がってそのせいで皆が持って来てくれたと後から聞いて恥ずかしいやら嬉しいやらでびっくりした。私が大量のお芋に囲まれて困っていた頃にもっと困った状況になっている人達がいたのだった。
「アメシス」
「で、殿下ぁ……」
あの卒業パーティで悪役令息を断罪し、国外追放した。そうして主人公であるボクは王太子殿下と結ばれてずっと幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし!だったのに……物語はそこでハッピーエンドで終わって幸せに暮らすのに、ボクは殿下に叱られていた。
「君らしくもないマナー違反だ。学園での君のマナーは完璧だし、先生からいつも合格をいただいていただろう?今日に限って一体どうしたんだ?」
そ、それは……マナーなんて堅苦しい事嫌いだったから、授業もテストも全部紫に瞳の色を変えたアクアが出ていたんだもん。だってあの鈍くさくて平民出のアクアが出来るんだよ?この物語の主人公のボクならちょちょいのちょいで出来ちゃうじゃん。だから面倒なテストなんてアクアにやって貰ってちょうどいいって思ってたんだ。
でも今日、いざ王妃様とのお茶会に出てみると何が何だかさっぱりわからなくて、お茶を零すし、カップは割っちゃうし大変だった……。王妃様はあまり怒っていなかったけれど、
「失礼、呼び出しだわ」
と、途中退席してしまった……。王妃様がいなくなると他の参加者もいなくなって、ボクは一人ぽつんと残されたんだった……。
「母上はカンカンにお怒りで、なだめるのが大変だった」
「えっ……そんなに怒っているようには見えなかったんですけれど」
だって呼ばれて行っちゃったんだよ?それなのに殿下は心底呆れた顔をしながらため息をついた。
「普通お茶会で主催が帰ってしまう事などないんだよ、常識だろう?それなのに行ってしまったという事は相当許せない事が起こったという事だ。マナー以前の問題だよ、アメシス。一体どうしてしまったんだい、優秀な君が」
ど、どうしよう……そういうやり取りも面倒くさすぎて全部アクアに任せていたから、ボク……わからなくなってるんだ!
「え……その、あの……や、やはり兄がいなくなったのは……結構ショックだったというか……何というか」
「……そういえばそうか。無理をさせたね、アメシス。母上にはそうお伝えしておくよ。次は大丈夫だよ、と」
「は、はい……」
まずいまずいまずい!ハッピーエンドのその先があるんだった!ど、どうしよう……これから必死で勉強するしかないの!?ううっやだよそんなの。今まで通り遊んで、面倒くさい事はアクアに押し付けて暮らしたいよ!
……そうだ、アクアを呼び戻そう!そうしてまたアクアにさせればいいんだ。どうせボクたちが入れ替わっても誰もきがつかないんだから!ボクはどうやって殿下に内緒でアクアの居所を捜せるか考え始めた。
アクア、死んでないよね?頼むよー!
「可愛い男の子だろう!?銀色の髪に水色の目のキラキラした!」
「うんうん!どうもね、平民の出らしくて凄く平民に優しいんだよ。そして知ってるか?そんなお嫁様の好物は……」
「「「ふかした芋!」」」
何故か公爵家にお芋がたくさん届くようになってしまった。一体どうしてなんだろう?芋は好きだけれど、貯蔵してもこれは食べきれないのではないのだろうか……?
「秋になったら焼き芋大会でもすればいいのかな……?」
私の好物がふかし芋だとあちこちに広がってそのせいで皆が持って来てくれたと後から聞いて恥ずかしいやら嬉しいやらでびっくりした。私が大量のお芋に囲まれて困っていた頃にもっと困った状況になっている人達がいたのだった。
「アメシス」
「で、殿下ぁ……」
あの卒業パーティで悪役令息を断罪し、国外追放した。そうして主人公であるボクは王太子殿下と結ばれてずっと幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし!だったのに……物語はそこでハッピーエンドで終わって幸せに暮らすのに、ボクは殿下に叱られていた。
「君らしくもないマナー違反だ。学園での君のマナーは完璧だし、先生からいつも合格をいただいていただろう?今日に限って一体どうしたんだ?」
そ、それは……マナーなんて堅苦しい事嫌いだったから、授業もテストも全部紫に瞳の色を変えたアクアが出ていたんだもん。だってあの鈍くさくて平民出のアクアが出来るんだよ?この物語の主人公のボクならちょちょいのちょいで出来ちゃうじゃん。だから面倒なテストなんてアクアにやって貰ってちょうどいいって思ってたんだ。
でも今日、いざ王妃様とのお茶会に出てみると何が何だかさっぱりわからなくて、お茶を零すし、カップは割っちゃうし大変だった……。王妃様はあまり怒っていなかったけれど、
「失礼、呼び出しだわ」
と、途中退席してしまった……。王妃様がいなくなると他の参加者もいなくなって、ボクは一人ぽつんと残されたんだった……。
「母上はカンカンにお怒りで、なだめるのが大変だった」
「えっ……そんなに怒っているようには見えなかったんですけれど」
だって呼ばれて行っちゃったんだよ?それなのに殿下は心底呆れた顔をしながらため息をついた。
「普通お茶会で主催が帰ってしまう事などないんだよ、常識だろう?それなのに行ってしまったという事は相当許せない事が起こったという事だ。マナー以前の問題だよ、アメシス。一体どうしてしまったんだい、優秀な君が」
ど、どうしよう……そういうやり取りも面倒くさすぎて全部アクアに任せていたから、ボク……わからなくなってるんだ!
「え……その、あの……や、やはり兄がいなくなったのは……結構ショックだったというか……何というか」
「……そういえばそうか。無理をさせたね、アメシス。母上にはそうお伝えしておくよ。次は大丈夫だよ、と」
「は、はい……」
まずいまずいまずい!ハッピーエンドのその先があるんだった!ど、どうしよう……これから必死で勉強するしかないの!?ううっやだよそんなの。今まで通り遊んで、面倒くさい事はアクアに押し付けて暮らしたいよ!
……そうだ、アクアを呼び戻そう!そうしてまたアクアにさせればいいんだ。どうせボクたちが入れ替わっても誰もきがつかないんだから!ボクはどうやって殿下に内緒でアクアの居所を捜せるか考え始めた。
アクア、死んでないよね?頼むよー!
160
お気に入りに追加
4,461
あなたにおすすめの小説
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる