6 / 54
6 静かに生きたい
しおりを挟む
「そうして私は立派な「悪役令息」になりました」
いつか耐えきれなくてアメシスに泣きついた事があった。
「もう嫌だ!こんな事したくない。殺されても良い、誰かを傷つけたり恨まれたりもう嫌だ!いつまでこんなことをしなくちゃ行けないんだ?アメシス!」
「うるさいなぁ!断罪される時までに決まってるでしょ!」
苛ついたアメシスが言うには学園を卒業する頃にはそうなる、と言われた。それを信じ、私は悪役を続けた。
月に数回、アメシスの元に婚約者の王子様がやってくる日もチャンスだった。ほぼ全員が王子様のお世話に忙しい。誰も私に目を向けない。その隙にここから解放されたらどうやって生きたら良いか考える事ができた。
大抵は何かの楽器の稽古か、アメシスが安請け合いしたバザーの売り物作りなんかで時間は無くなっていたけれど。
私は本当に全て話してしまった。でももう良い。なんだかスッキリしたし、もうアメシスに会うことなんてないんだから。
「その話が本当なら、アメシスとやらは学校の成績は良くないのではないか?」
「テストの時、私と入れ替わりました。瞳の色というのは強い印象を持つらしく、誰も私とアメシスの入れ替わりに誰も気がつきませんでした」
「君の答案がアメシスの成績となり、アメシスの答案が君の成績となった。君は学園で成績も相当悪かったそうだが、だとするとアメシス自身の実力も最低限であると推測されるのだが?」
それについて私はよく分からないと答えるしかなかった。
「平民の私でも覚える内容が貴族で転生者の自分に分からない筈がないと言っていましたから、何か不思議な力でもあるのでしょう」
お頭はふむ、と小さく呟いて
「明日までにお前の処遇を決める」
と言って出て行った。一人残された俺はその場に座り込む事しか出来ない。
「なんつーかお前も大変だったんだな」
「平民では知りえない知識や読み書き計算などを教えて貰えたことはありがたいと思います……でも私はあのまま平民として暮らしていたかった……」
あの時、引き離された家族はどうなったんだろう。たまに自由になる時間に見に行った事がある。私が住んでいた家は別の人が住んでいて、前の住人の事は誰も知らなかった。私の力ではそれ以上追跡のしようも無く、泣く泣く諦めたのだ。
「もう、あの国には戻りたくない。どこか違う国で静かに人に恨まれずに生きたい」
「そうか、まあお頭が良い事考えてくれるさ」
「あ、ありがとう……ございます」
山賊は割と良い人で、色んな話をしてくれた。縄で括ってあった手と足も自由にしてくれたし、毛布も貸してくれる。
汚れた汚い毛布だったけれど、クレスト家の絹の寝具より暖かい気がした。
いつか耐えきれなくてアメシスに泣きついた事があった。
「もう嫌だ!こんな事したくない。殺されても良い、誰かを傷つけたり恨まれたりもう嫌だ!いつまでこんなことをしなくちゃ行けないんだ?アメシス!」
「うるさいなぁ!断罪される時までに決まってるでしょ!」
苛ついたアメシスが言うには学園を卒業する頃にはそうなる、と言われた。それを信じ、私は悪役を続けた。
月に数回、アメシスの元に婚約者の王子様がやってくる日もチャンスだった。ほぼ全員が王子様のお世話に忙しい。誰も私に目を向けない。その隙にここから解放されたらどうやって生きたら良いか考える事ができた。
大抵は何かの楽器の稽古か、アメシスが安請け合いしたバザーの売り物作りなんかで時間は無くなっていたけれど。
私は本当に全て話してしまった。でももう良い。なんだかスッキリしたし、もうアメシスに会うことなんてないんだから。
「その話が本当なら、アメシスとやらは学校の成績は良くないのではないか?」
「テストの時、私と入れ替わりました。瞳の色というのは強い印象を持つらしく、誰も私とアメシスの入れ替わりに誰も気がつきませんでした」
「君の答案がアメシスの成績となり、アメシスの答案が君の成績となった。君は学園で成績も相当悪かったそうだが、だとするとアメシス自身の実力も最低限であると推測されるのだが?」
それについて私はよく分からないと答えるしかなかった。
「平民の私でも覚える内容が貴族で転生者の自分に分からない筈がないと言っていましたから、何か不思議な力でもあるのでしょう」
お頭はふむ、と小さく呟いて
「明日までにお前の処遇を決める」
と言って出て行った。一人残された俺はその場に座り込む事しか出来ない。
「なんつーかお前も大変だったんだな」
「平民では知りえない知識や読み書き計算などを教えて貰えたことはありがたいと思います……でも私はあのまま平民として暮らしていたかった……」
あの時、引き離された家族はどうなったんだろう。たまに自由になる時間に見に行った事がある。私が住んでいた家は別の人が住んでいて、前の住人の事は誰も知らなかった。私の力ではそれ以上追跡のしようも無く、泣く泣く諦めたのだ。
「もう、あの国には戻りたくない。どこか違う国で静かに人に恨まれずに生きたい」
「そうか、まあお頭が良い事考えてくれるさ」
「あ、ありがとう……ございます」
山賊は割と良い人で、色んな話をしてくれた。縄で括ってあった手と足も自由にしてくれたし、毛布も貸してくれる。
汚れた汚い毛布だったけれど、クレスト家の絹の寝具より暖かい気がした。
186
お気に入りに追加
4,461
あなたにおすすめの小説

愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

【完結】家も家族もなくし婚約者にも捨てられた僕だけど、隣国の宰相を助けたら囲われて大切にされています。
cyan
BL
留学中に実家が潰れて家族を失くし、婚約者にも捨てられ、どこにも行く宛てがなく彷徨っていた僕を助けてくれたのは隣国の宰相だった。
家が潰れた僕は平民。彼は宰相様、それなのに僕は恐れ多くも彼に恋をした。

成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
「君と番になるつもりはない」と言われたのに記憶喪失の夫から愛情フェロモンが溢れてきます
grotta
BL
【フェロモン過多の記憶喪失アルファ×自己肯定感低め深窓の令息オメガ】
オスカー・ブラントは皇太子との縁談が立ち消えになり別の相手――帝国陸軍近衛騎兵隊長ヘルムート・クラッセン侯爵へ嫁ぐことになる。
以前一度助けてもらった彼にオスカーは好感を持っており、新婚生活に期待を抱く。
しかし結婚早々夫から「つがいにはならない」と宣言されてしまった。
予想外の冷遇に落ち込むオスカーだったが、ある日夫が頭に怪我をして記憶喪失に。
すると今まで抑えられていたαのフェロモンが溢れ、夫に触れると「愛しい」という感情まで漏れ聞こえるように…。
彼の突然の変化に戸惑うが、徐々にヘルムートに惹かれて心を開いていくオスカー。しかし彼の記憶が戻ってまた冷たくされるのが怖くなる。
ある日寝ぼけた夫の口から知らぬ女性の名前が出る。彼には心に秘めた相手がいるのだと悟り、記憶喪失の彼から与えられていたのが偽りの愛だと悟る。
夫とすれ違う中、皇太子がオスカーに強引に復縁を迫ってきて…?
夫ヘルムートが隠している秘密とはなんなのか。傷ついたオスカーは皇太子と夫どちらを選ぶのか?
※以前ショートで書いた話を改変しオメガバースにして公募に出したものになります。(結末や設定は全然違います)
※3万8千字程度の短編です

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる