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6 静かに生きたい
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「そうして私は立派な「悪役令息」になりました」
いつか耐えきれなくてアメシスに泣きついた事があった。
「もう嫌だ!こんな事したくない。殺されても良い、誰かを傷つけたり恨まれたりもう嫌だ!いつまでこんなことをしなくちゃ行けないんだ?アメシス!」
「うるさいなぁ!断罪される時までに決まってるでしょ!」
苛ついたアメシスが言うには学園を卒業する頃にはそうなる、と言われた。それを信じ、私は悪役を続けた。
月に数回、アメシスの元に婚約者の王子様がやってくる日もチャンスだった。ほぼ全員が王子様のお世話に忙しい。誰も私に目を向けない。その隙にここから解放されたらどうやって生きたら良いか考える事ができた。
大抵は何かの楽器の稽古か、アメシスが安請け合いしたバザーの売り物作りなんかで時間は無くなっていたけれど。
私は本当に全て話してしまった。でももう良い。なんだかスッキリしたし、もうアメシスに会うことなんてないんだから。
「その話が本当なら、アメシスとやらは学校の成績は良くないのではないか?」
「テストの時、私と入れ替わりました。瞳の色というのは強い印象を持つらしく、誰も私とアメシスの入れ替わりに誰も気がつきませんでした」
「君の答案がアメシスの成績となり、アメシスの答案が君の成績となった。君は学園で成績も相当悪かったそうだが、だとするとアメシス自身の実力も最低限であると推測されるのだが?」
それについて私はよく分からないと答えるしかなかった。
「平民の私でも覚える内容が貴族で転生者の自分に分からない筈がないと言っていましたから、何か不思議な力でもあるのでしょう」
お頭はふむ、と小さく呟いて
「明日までにお前の処遇を決める」
と言って出て行った。一人残された俺はその場に座り込む事しか出来ない。
「なんつーかお前も大変だったんだな」
「平民では知りえない知識や読み書き計算などを教えて貰えたことはありがたいと思います……でも私はあのまま平民として暮らしていたかった……」
あの時、引き離された家族はどうなったんだろう。たまに自由になる時間に見に行った事がある。私が住んでいた家は別の人が住んでいて、前の住人の事は誰も知らなかった。私の力ではそれ以上追跡のしようも無く、泣く泣く諦めたのだ。
「もう、あの国には戻りたくない。どこか違う国で静かに人に恨まれずに生きたい」
「そうか、まあお頭が良い事考えてくれるさ」
「あ、ありがとう……ございます」
山賊は割と良い人で、色んな話をしてくれた。縄で括ってあった手と足も自由にしてくれたし、毛布も貸してくれる。
汚れた汚い毛布だったけれど、クレスト家の絹の寝具より暖かい気がした。
いつか耐えきれなくてアメシスに泣きついた事があった。
「もう嫌だ!こんな事したくない。殺されても良い、誰かを傷つけたり恨まれたりもう嫌だ!いつまでこんなことをしなくちゃ行けないんだ?アメシス!」
「うるさいなぁ!断罪される時までに決まってるでしょ!」
苛ついたアメシスが言うには学園を卒業する頃にはそうなる、と言われた。それを信じ、私は悪役を続けた。
月に数回、アメシスの元に婚約者の王子様がやってくる日もチャンスだった。ほぼ全員が王子様のお世話に忙しい。誰も私に目を向けない。その隙にここから解放されたらどうやって生きたら良いか考える事ができた。
大抵は何かの楽器の稽古か、アメシスが安請け合いしたバザーの売り物作りなんかで時間は無くなっていたけれど。
私は本当に全て話してしまった。でももう良い。なんだかスッキリしたし、もうアメシスに会うことなんてないんだから。
「その話が本当なら、アメシスとやらは学校の成績は良くないのではないか?」
「テストの時、私と入れ替わりました。瞳の色というのは強い印象を持つらしく、誰も私とアメシスの入れ替わりに誰も気がつきませんでした」
「君の答案がアメシスの成績となり、アメシスの答案が君の成績となった。君は学園で成績も相当悪かったそうだが、だとするとアメシス自身の実力も最低限であると推測されるのだが?」
それについて私はよく分からないと答えるしかなかった。
「平民の私でも覚える内容が貴族で転生者の自分に分からない筈がないと言っていましたから、何か不思議な力でもあるのでしょう」
お頭はふむ、と小さく呟いて
「明日までにお前の処遇を決める」
と言って出て行った。一人残された俺はその場に座り込む事しか出来ない。
「なんつーかお前も大変だったんだな」
「平民では知りえない知識や読み書き計算などを教えて貰えたことはありがたいと思います……でも私はあのまま平民として暮らしていたかった……」
あの時、引き離された家族はどうなったんだろう。たまに自由になる時間に見に行った事がある。私が住んでいた家は別の人が住んでいて、前の住人の事は誰も知らなかった。私の力ではそれ以上追跡のしようも無く、泣く泣く諦めたのだ。
「もう、あの国には戻りたくない。どこか違う国で静かに人に恨まれずに生きたい」
「そうか、まあお頭が良い事考えてくれるさ」
「あ、ありがとう……ございます」
山賊は割と良い人で、色んな話をしてくれた。縄で括ってあった手と足も自由にしてくれたし、毛布も貸してくれる。
汚れた汚い毛布だったけれど、クレスト家の絹の寝具より暖かい気がした。
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