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4 君が、悪役令息だ

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「で?訳あり坊ちゃんだと?」

 牢の前に少しだけ偉そうな人が来た。あまり灯りがないせいで顔は良く見えないが、きっとこの人が山賊のお頭なんだろう。話してみろ、と言われて私は自分がどういう存在か全て話す事にした。

「私は元々ただの平民でした……」

 私が8歳の時だった。家の前に豪華な馬車が止まって、そして私はクレスト家に売られた。それまで父さんと母さん、そして兄弟と幸せに暮らしていたけれど、私がオメガでありそしてこの珍しい白銀の髪の毛であったことが災いしたようだ。この容姿に目をつけられて、無理やり家族の元から連れ去られたのだ。
 平民がいくら嫌がっても貴族に勝てるわけがない。大金を押し付けれられた私の本当の家族は泣くしかなく、そしてその後行方不明になっているようだった。別の国にでも逃げていてくれればいいなと思ってはいるがそれを確かめる手段は私にはなかった。

「今日からキミはボクのお兄ちゃんだ!名前はアクアだよ、いいね?」

「ひっ……!」

「あー、お返事しなきゃダメだろう?分かんない子はお仕置きされるんだぞ?」

 無理やり連れて来られたクレスト家で美しいアメシスと初めて会った。アメシスはニコニコ笑いながら私が兄だという……意味が分からなかった。風呂に入れられ、着替え、整えると私とアメシスはかなり似た顔つきであることがわかる。

「うん、これなら双子のお兄ちゃんでいけるね!」

 嬉しそうに喜ぶアメシス。そして「アメシスの願いだからなあ」と苦笑するクレスト家の人々。そう、私はアメシスの為にこの家に売られてきたのだった。そしてアメシスと二人きりになった時……彼はとんでもない事を言い出した。

「ボクはねぇ。この世界がBL小説だって知ってるんだ~なにせ、ボクは転生者だからねぇ」

「……?」

 私にはアメシスが言っている言葉の意味がほとんどわからなかった。

「ボクはねえ、間違っても悪役令息にはなりたくないし、ざまぁもされたくない。ボクは王子様と結婚してずっと幸せに暮らしたいんだよ。だからね……」

 まだ8歳ながら私に微笑みかけた邪悪なアメシスの表情は今でも震えがくるくらい恐ろしかった。

「悪役令息を作っちゃえばいいんだ。最初から悪役令息を用意しておけばそいつがざまぁされてボクは幸せになれる、分かるかい?アクア。その為に君を用意したんだよ、ボクはね!」

 それからさっきまでの笑顔はなんだったのかと目を疑うほどの天使の笑顔でアメシスは笑う。

「君が、悪役令息だ」


 意味が分からない、それでも私はとんでもない所に連れて来られたという事だけは分かった。そこからの生活は思い出したくもないくらい酷い物だった。
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