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44 ここで暮らして行っても良いでしょうか?
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次の日になりますと、近隣諸国からのお客様は一段と増えたようでした。
「お城に泊っていらっしゃる方もいますし、城下の高級宿は大繁盛らしいですわよ」
「まあ……街の皆さんの迷惑になっていなければいいのですが」
「上得意様が迷惑になるわけがございませんわ。喜んでお世話しているはずです」
その日は朝食はかなり素早く終え、皆様お客様のお相手へと向かわれました。
「すいません、アイリーン様。流石に我々だけゆっくり食事という訳にもいかなくて。アイリーン様とレンブラントはゆっくり食べてくださいね」
「そうよ、レンブラントはいっぱい食べないと。大きくなったらまたお洋服を買う楽しみがあるわあ!」
「そうだなあ、剣も身長にあったものをお祖父様が買ってやるからなぁ!はっはっは!」
シュマイゼル様や前王陛下が席を立つ中、わたくしとレンブラントが座っている訳にはいきませんが、全員から引き留められてしまいました。
「アイリーン様。今はまだ正式な婚約者ではなく、お客様という事になっていますから、ね?」
「今だけかもしれませんよ~?こんなにゆっくり朝食を召し上がれるのは」
メイドが楽しそうに声をかけてきます。そう言われてみればそうかもしれません……。わたくしは浮かせた腰をもう一度椅子の上に乗せました。
「お母様はいつも朝食の席でも忙しそうでしたものね。テーブルの上に書類もなく、決裁を求める侍従が飛んでこない朝食は珍しいです」
「レ、レンブラント……!」
おやめなさい、この場にいた全員が変な顔をしてしまったではないですか!
「そ、そんなに忙しかったのですね……」
「お願いです、もう少しごゆっくりして、ご自愛ください~~!」
メイド達が泣き出してしまったわ……もう、余計な事は言わないで欲しいものです。
「アイリーン様!本日のドレスも素敵ですわ」
「今日のお化粧は昨日と違いますわね?」
「レンブラント様もいらっしゃったのね、今日も凛々しいですわ」
「ありがとうございます、淑女の皆様」
今日の私は落ち着いた赤のドレスにとても大きなダイヤを胸に飾っております。レンブラントも同じような色の礼服で、見ればシュマイゼル様も同じようなお色で……お揃いですわね?
今日は噂を聞きつけた耳の早いマルグ国の貴族達もやってきて、華やかなパーティとなっております。お父様やお母様の姿も見えまして
「レイクリフ家は色々やりがいがありりそうよ」
と、生き生きとした笑顔を見せて下さったので、お母様にも何か重大な仕事があるようでしたし、お父様も
「絶対庭にブランコをつけてやるからな!」
と、少し変わった張り切り方をしていました。フレジットの姿が見えませんがきっと華やかな席は嫌がってレイクリフの屋敷で書類とにらめっこをしているのでしょう。
「レンブラントさま、よろしければお庭におせきをもうけておりますの。きてくださりませんか?」
「わたしでよければよろこんで」
レンブラントは同じくらいの年の女の子に誘われて庭の方に移動しています。きっとこの国の貴族のお嬢さんなのでしょう。お母様が付き添いでついて行ってくださると言うのでお任せしました。わたくしも見に行きたかったのですが、何があったのか聞きたがる各国の高貴なご婦人方のお相手をしなくてはなりません。
「私はこれで良かったと思っておりますのよ」
「そうですわ。私達もいつも悔しい思いで見ていましたからね」
「ありがとうございます」
皆様、優しい言葉をかけてくださってとても胸に染み入りました。
「ところでなんですが……随分と大きな……」
「ダイヤモンドでございますよね?」
ふふ、わかっておりますわ。シュマイゼル様がこのアクセサリーと共に商人を用意したのですから。
「ええ、何でも今年は当たり年とのことで、かなり大きなものが掘り出されたようなのです。宜しければ宝石商と職人を呼んでいます。ご足労を願ってもよろしいでしょうか?」
「まあ!マルグ産のダイヤと言えばこの辺りでは知らぬものがいないくらいの輝きですものね。楽しみだわ」
わたくしはこうして、戸惑いながらもこの国へ馴染んで行くのでした。
「お城に泊っていらっしゃる方もいますし、城下の高級宿は大繁盛らしいですわよ」
「まあ……街の皆さんの迷惑になっていなければいいのですが」
「上得意様が迷惑になるわけがございませんわ。喜んでお世話しているはずです」
その日は朝食はかなり素早く終え、皆様お客様のお相手へと向かわれました。
「すいません、アイリーン様。流石に我々だけゆっくり食事という訳にもいかなくて。アイリーン様とレンブラントはゆっくり食べてくださいね」
「そうよ、レンブラントはいっぱい食べないと。大きくなったらまたお洋服を買う楽しみがあるわあ!」
「そうだなあ、剣も身長にあったものをお祖父様が買ってやるからなぁ!はっはっは!」
シュマイゼル様や前王陛下が席を立つ中、わたくしとレンブラントが座っている訳にはいきませんが、全員から引き留められてしまいました。
「アイリーン様。今はまだ正式な婚約者ではなく、お客様という事になっていますから、ね?」
「今だけかもしれませんよ~?こんなにゆっくり朝食を召し上がれるのは」
メイドが楽しそうに声をかけてきます。そう言われてみればそうかもしれません……。わたくしは浮かせた腰をもう一度椅子の上に乗せました。
「お母様はいつも朝食の席でも忙しそうでしたものね。テーブルの上に書類もなく、決裁を求める侍従が飛んでこない朝食は珍しいです」
「レ、レンブラント……!」
おやめなさい、この場にいた全員が変な顔をしてしまったではないですか!
「そ、そんなに忙しかったのですね……」
「お願いです、もう少しごゆっくりして、ご自愛ください~~!」
メイド達が泣き出してしまったわ……もう、余計な事は言わないで欲しいものです。
「アイリーン様!本日のドレスも素敵ですわ」
「今日のお化粧は昨日と違いますわね?」
「レンブラント様もいらっしゃったのね、今日も凛々しいですわ」
「ありがとうございます、淑女の皆様」
今日の私は落ち着いた赤のドレスにとても大きなダイヤを胸に飾っております。レンブラントも同じような色の礼服で、見ればシュマイゼル様も同じようなお色で……お揃いですわね?
今日は噂を聞きつけた耳の早いマルグ国の貴族達もやってきて、華やかなパーティとなっております。お父様やお母様の姿も見えまして
「レイクリフ家は色々やりがいがありりそうよ」
と、生き生きとした笑顔を見せて下さったので、お母様にも何か重大な仕事があるようでしたし、お父様も
「絶対庭にブランコをつけてやるからな!」
と、少し変わった張り切り方をしていました。フレジットの姿が見えませんがきっと華やかな席は嫌がってレイクリフの屋敷で書類とにらめっこをしているのでしょう。
「レンブラントさま、よろしければお庭におせきをもうけておりますの。きてくださりませんか?」
「わたしでよければよろこんで」
レンブラントは同じくらいの年の女の子に誘われて庭の方に移動しています。きっとこの国の貴族のお嬢さんなのでしょう。お母様が付き添いでついて行ってくださると言うのでお任せしました。わたくしも見に行きたかったのですが、何があったのか聞きたがる各国の高貴なご婦人方のお相手をしなくてはなりません。
「私はこれで良かったと思っておりますのよ」
「そうですわ。私達もいつも悔しい思いで見ていましたからね」
「ありがとうございます」
皆様、優しい言葉をかけてくださってとても胸に染み入りました。
「ところでなんですが……随分と大きな……」
「ダイヤモンドでございますよね?」
ふふ、わかっておりますわ。シュマイゼル様がこのアクセサリーと共に商人を用意したのですから。
「ええ、何でも今年は当たり年とのことで、かなり大きなものが掘り出されたようなのです。宜しければ宝石商と職人を呼んでいます。ご足労を願ってもよろしいでしょうか?」
「まあ!マルグ産のダイヤと言えばこの辺りでは知らぬものがいないくらいの輝きですものね。楽しみだわ」
わたくしはこうして、戸惑いながらもこの国へ馴染んで行くのでした。
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