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36 初デートは突然に
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「色々考えましたが、もしこのままわたくしがマルグ国へ留まる事をお許しいただけるのなら……」
「すぐに婚約発表をしましょう!」
「それがいいわ!」
「めでたい」
「……お話を少し聞いていただいてもよろしいでしょうか……」
シュマイゼル様と前王であるシュマイゼル様のお父様とお母様はとても仲が良く、そっくりな方々だとしみじみ感じます。
「あ、すまない。話してください」
「この様子では間違いなく明日もナザールの建国祭を終えた方々がこの国へ訪れます。わたくしのような者にでも分かりやすいようにこの国の方針や特産、力を入れている産業など教えて頂ければ……」
「ア、アイリーン……そんなに働かなくていいのよ?ナザールではあなたが国王の仕事も全て行っていたらしいからとても忙しかったでしょうが、これからは半分で良いの。少しおしゃれや茶会など王妃らしいことをのんびりとしてくれるだけでいいのよ?」
皇后様が労るようにやんわり言ってくださいますが、それではわたくしの気が収まりません。
「いいえ、路頭に迷うしかなかったわたくしとレンブラント。そして我がハイランド家、使用人の全てをこちらで良くして頂いている恩を返さねば……」
「恩など感じなくてよろしいのですよ。私が貴女を逃さないため、気を引きたい為に私が望んで来ていただいている事なんですから」
何でもないとおっしゃいますが、あれだけの人数を増やすというのはとても大変な事だと、人を使う立場であったわたくしも知っている事です。わたくしが一歩も引かぬつもりで身構えますと……。
「分かりました、では今からデートに参りましょう」
「はっ?!デ、デート?!」
待ってください、デートとは、あの男女で出歩くお話のアレのことですか?!
「ええ、お忍びで行きましょう!さ、すぐに着替えて。父上、母上、ちょっと出かけて来ます」
「あら、良いわね。ディア・アプリコットが新作ケーキ出してたわよ。食べてらっしゃい」
「美味かったぞ!レンはプリンが良かったようだ」
待ってください、わたくし小さな頃からエルファード様と婚約をしていましたので、デートという物は話でしか知らないのです!
「えっ、あの、こ、困ります。突然言われても……っ」
「大丈夫ですよ、侍女達に任せておけば完璧な変装を施してくれますから!さあ、支度をしましょう」
「えっ!あのっ!」
わたくしはあれよあれよと言う間に少し丈が短く歩き易い街娘がよく着るワンピースに控えめの化粧を施した姿になって街角に立っていました。
「そのスカートも可愛いですよ!私の事はゼルと、あなたの事はアイリとお呼びしてもよろしいですか?」
「え?ええ……それでお願いします」
隣にはシュマイゼル様が立っていていつものように笑っていらっしゃいます。
「手を……手を繋ぎましょう。逸れるといけないので」
「あ……はい……」
男性と街を歩くなんて、初めての経験です。図らずも少女の頃に憧れて止まなかったデートと言う物をする事になるとは。
思ったよりドキドキと胸が高鳴って、上手く返事ができませんでした。
「すぐに婚約発表をしましょう!」
「それがいいわ!」
「めでたい」
「……お話を少し聞いていただいてもよろしいでしょうか……」
シュマイゼル様と前王であるシュマイゼル様のお父様とお母様はとても仲が良く、そっくりな方々だとしみじみ感じます。
「あ、すまない。話してください」
「この様子では間違いなく明日もナザールの建国祭を終えた方々がこの国へ訪れます。わたくしのような者にでも分かりやすいようにこの国の方針や特産、力を入れている産業など教えて頂ければ……」
「ア、アイリーン……そんなに働かなくていいのよ?ナザールではあなたが国王の仕事も全て行っていたらしいからとても忙しかったでしょうが、これからは半分で良いの。少しおしゃれや茶会など王妃らしいことをのんびりとしてくれるだけでいいのよ?」
皇后様が労るようにやんわり言ってくださいますが、それではわたくしの気が収まりません。
「いいえ、路頭に迷うしかなかったわたくしとレンブラント。そして我がハイランド家、使用人の全てをこちらで良くして頂いている恩を返さねば……」
「恩など感じなくてよろしいのですよ。私が貴女を逃さないため、気を引きたい為に私が望んで来ていただいている事なんですから」
何でもないとおっしゃいますが、あれだけの人数を増やすというのはとても大変な事だと、人を使う立場であったわたくしも知っている事です。わたくしが一歩も引かぬつもりで身構えますと……。
「分かりました、では今からデートに参りましょう」
「はっ?!デ、デート?!」
待ってください、デートとは、あの男女で出歩くお話のアレのことですか?!
「ええ、お忍びで行きましょう!さ、すぐに着替えて。父上、母上、ちょっと出かけて来ます」
「あら、良いわね。ディア・アプリコットが新作ケーキ出してたわよ。食べてらっしゃい」
「美味かったぞ!レンはプリンが良かったようだ」
待ってください、わたくし小さな頃からエルファード様と婚約をしていましたので、デートという物は話でしか知らないのです!
「えっ、あの、こ、困ります。突然言われても……っ」
「大丈夫ですよ、侍女達に任せておけば完璧な変装を施してくれますから!さあ、支度をしましょう」
「えっ!あのっ!」
わたくしはあれよあれよと言う間に少し丈が短く歩き易い街娘がよく着るワンピースに控えめの化粧を施した姿になって街角に立っていました。
「そのスカートも可愛いですよ!私の事はゼルと、あなたの事はアイリとお呼びしてもよろしいですか?」
「え?ええ……それでお願いします」
隣にはシュマイゼル様が立っていていつものように笑っていらっしゃいます。
「手を……手を繋ぎましょう。逸れるといけないので」
「あ……はい……」
男性と街を歩くなんて、初めての経験です。図らずも少女の頃に憧れて止まなかったデートと言う物をする事になるとは。
思ったよりドキドキと胸が高鳴って、上手く返事ができませんでした。
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