23 / 64
23 カエルは駄目だ!
しおりを挟む
「あの……シュマイゼル王。宜しければこの爺に少しお聞かせ願いたいのですが……」
執事のマーセルは執事の鏡の様な人なので、マーセルの方からシュマイゼル様に声をかけるのにはとても驚きました。
マーセルが礼儀を欠いてまで聞きたい事は何なのでしょうか?わたくしも少し気になってしまい、諫める事を怠りました。
「ああ、なんだ。私に答えられる事ならば」
良かった、シュマイゼル様も気を悪くしていらっしゃらないようです。これがエルファード様なら烈火の如く怒り狂って……忘れましょう、あの方の事は。
「シュマイゼル様は随分とアイリーン様にご執心のように見受けられますが、いつアイリーン様をお見初めになったのです?この爺、とんと見当がつきませぬ」
それはわたくしも知りたい所でございました。記憶にある限りのシュマイゼル様と交流と言えば王妃になってからの外交のみであったかと思いますが。その頃なのでしょうか?
シュマイゼル様はまた苦い顔をなさってから
「ひ、引かないで下さいね」
と、前置きしてから話して下さいました。
「アイリーン様は、5歳の頃、ニールス国のラペル侯爵令息と婚約しておったでしょう?」
「ええ……生まれた頃からヴェルフェ・ラペル侯爵令息とは婚約を交わしておりました」
「そしてその頃、ラペル家に遊びに行かれたはずです」
「そう……だったでしょうか?」
流石にその頃の事ははっきりと覚えておりませんが、マーセルを見るとこくりと頷いたのでどうやらそうらしいですね。
「ニールス国ラペル侯爵家のタウンハウスの隣の家は……あの、バルト公爵家でして」
「はあ?」
わたくしは少し話が見えませんが、マーセルが小声で
「シュマイゼル様のお母上様であらせられる皇后様はバルト家のご出身でありましたな」
と呟くのです。
「あの時、私は母に連れられてバルトの屋敷に遊びに来ていて……垣根越しにヴェルフェとあなたに会いました……そして恋に落ちたのです」
5歳でしたわよね?わたくし。
「引かないでって言ったのに……」
流石のわたくしも顔に出てしまいました。
「恋には落ちましたが、もう貴女はヴェルフェの婚約者でしたから、諦めました。そしてあなたに似た令嬢を探し……見つけられずに……引かないでって言ったのに……」
流石のわたくしでも……ちょっと……。
「流石にそれは良くないと思い、諦めて勉学に打ち込んだのですが、なんと貴女はあの阿呆カエルの婚約者にされてしまった!ヴェルフェなら諦めもつきました、あいつはできる男です。今もニールスの中枢で頭角を現していますし。でも、でもカエルは駄目だ!!」
しくしくと泣いていたかと思うとガバリと頭を上げ
「あんなのに、あんなのに恋しい人が奪われたんですよ!何度もナザールに戦を仕掛けてアレをカエルの日干しにしてやろうと思いました!でも、マグルとナザールの間にはニールスがあるんです!ニールスはとても友好な素晴らしい国です。戦に巻き込むわけには行かないんです!だから……叶いませんでした……」
わたくしはニールスがあって良かったと心から思ったのでした。
あとシュマイゼル様は顔に似合わず中々執着心が強い方のようでした……わたくし、大丈夫でしょうか?少しだけ心配になってしまいました。
執事のマーセルは執事の鏡の様な人なので、マーセルの方からシュマイゼル様に声をかけるのにはとても驚きました。
マーセルが礼儀を欠いてまで聞きたい事は何なのでしょうか?わたくしも少し気になってしまい、諫める事を怠りました。
「ああ、なんだ。私に答えられる事ならば」
良かった、シュマイゼル様も気を悪くしていらっしゃらないようです。これがエルファード様なら烈火の如く怒り狂って……忘れましょう、あの方の事は。
「シュマイゼル様は随分とアイリーン様にご執心のように見受けられますが、いつアイリーン様をお見初めになったのです?この爺、とんと見当がつきませぬ」
それはわたくしも知りたい所でございました。記憶にある限りのシュマイゼル様と交流と言えば王妃になってからの外交のみであったかと思いますが。その頃なのでしょうか?
シュマイゼル様はまた苦い顔をなさってから
「ひ、引かないで下さいね」
と、前置きしてから話して下さいました。
「アイリーン様は、5歳の頃、ニールス国のラペル侯爵令息と婚約しておったでしょう?」
「ええ……生まれた頃からヴェルフェ・ラペル侯爵令息とは婚約を交わしておりました」
「そしてその頃、ラペル家に遊びに行かれたはずです」
「そう……だったでしょうか?」
流石にその頃の事ははっきりと覚えておりませんが、マーセルを見るとこくりと頷いたのでどうやらそうらしいですね。
「ニールス国ラペル侯爵家のタウンハウスの隣の家は……あの、バルト公爵家でして」
「はあ?」
わたくしは少し話が見えませんが、マーセルが小声で
「シュマイゼル様のお母上様であらせられる皇后様はバルト家のご出身でありましたな」
と呟くのです。
「あの時、私は母に連れられてバルトの屋敷に遊びに来ていて……垣根越しにヴェルフェとあなたに会いました……そして恋に落ちたのです」
5歳でしたわよね?わたくし。
「引かないでって言ったのに……」
流石のわたくしも顔に出てしまいました。
「恋には落ちましたが、もう貴女はヴェルフェの婚約者でしたから、諦めました。そしてあなたに似た令嬢を探し……見つけられずに……引かないでって言ったのに……」
流石のわたくしでも……ちょっと……。
「流石にそれは良くないと思い、諦めて勉学に打ち込んだのですが、なんと貴女はあの阿呆カエルの婚約者にされてしまった!ヴェルフェなら諦めもつきました、あいつはできる男です。今もニールスの中枢で頭角を現していますし。でも、でもカエルは駄目だ!!」
しくしくと泣いていたかと思うとガバリと頭を上げ
「あんなのに、あんなのに恋しい人が奪われたんですよ!何度もナザールに戦を仕掛けてアレをカエルの日干しにしてやろうと思いました!でも、マグルとナザールの間にはニールスがあるんです!ニールスはとても友好な素晴らしい国です。戦に巻き込むわけには行かないんです!だから……叶いませんでした……」
わたくしはニールスがあって良かったと心から思ったのでした。
あとシュマイゼル様は顔に似合わず中々執着心が強い方のようでした……わたくし、大丈夫でしょうか?少しだけ心配になってしまいました。
243
お気に入りに追加
7,186
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結保証】嘘で繋がった婚約なら、今すぐ解消いたしましょう
ネコ
恋愛
小侯爵家の娘リュディアーヌは、昔から体が弱い。しかし婚約者の侯爵テオドールは「君を守る」と誓ってくれた……と信じていた。ところが、実際は健康体の女性との縁談が来るまでの“仮婚約”だったと知り、リュディアーヌは意を決して自ら婚約破棄を申し出る。その後、リュディアーヌの病弱は実は特異な魔力によるものと判明。身体を克服する術を見つけ、自由に動けるようになると、彼女の周りには真の味方が増えていく。偽りの縁に縛られる理由など、もうどこにもない。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした
せいめ
恋愛
美しい旦那様は結婚初夜に言いました。
「君を愛するつもりはない」と。
そんな……、私を愛してくださらないの……?
「うっ……!」
ショックを受けた私の頭に入ってきたのは、アラフォー日本人の前世の記憶だった。
ああ……、貧乏で没落寸前の伯爵様だけど、見た目だけはいいこの男に今世の私は騙されたのね。
貴方が私を妻として大切にしてくれないなら、私も好きにやらせてもらいますわ。
旦那様、短い結婚生活になりそうですが、どうぞよろしく!
誤字脱字お許しください。本当にすみません。
ご都合主義です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】真面目だけが取り柄の地味で従順な女はもうやめますね
祈璃
恋愛
「結婚相手としては、ああいうのがいいんだよ。真面目だけが取り柄の、地味で従順な女が」
婚約者のエイデンが自分の陰口を言っているのを偶然聞いてしまったサンドラ。
ショックを受けたサンドラが中庭で泣いていると、そこに公爵令嬢であるマチルダが偶然やってくる。
その後、マチルダの助けと従兄弟のユーリスの後押しを受けたサンドラは、新しい自分へと生まれ変わることを決意した。
「あなたの結婚相手に相応しくなくなってごめんなさいね。申し訳ないから、あなたの望み通り婚約は解消してあげるわ」
*****
全18話。
過剰なざまぁはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる