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16 狸は一匹とは限らない
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それから二日して、私達はアバンテのお父さんの協力を得て、町長さんの炭鉱夫のパーティーに出席する事ができた。
きらびやかなホールで私達はできる限りの綺麗な格好をし(私は魔女の服を着て行った。そうそう、もちろんセラノのお父さんも来ていた)、町長さんの話に耳を傾けた。
町長さんは名前をスタークさんと言い――つまりはこの人がシェナの石炭工場の持ち主であり、スターク炭鉱の経営を担っている――初老でしわの刻まれた厳しそうな顔をしていたが、話を聞くとシェナの街のこれからの発展を考え、同時に町民の事も考えた発言だった。誰一人として反対意見を出す人はおらず、スターク町長の乾杯の音頭に炭鉱夫の人達は希望の色を浮かべていた。
街が栄え、発展するのだ。そこで働く人達は嬉しいに決まっている。そしてそんな人々の嬉しそうな顔を見る事が、町長さんの望みなのかもしれない。中々立派な人だ。私はそう思った。
――だけどそれは、人間の立場からでだけ考えた見方だ。私達はそれを後に知る事になった。
*
その日は曇っていた。照りつける太陽の光はないものの、その代わりにまとわりつく蒸し暑さは増していた。往来を歩く人々の多くも暑さにやや顔をしかめている。私はその曇った空を見上げながら、これでは炭鉱夫の人達も大変だろうなと思った。
お昼過ぎになり、私は街を一周して来た。いつも通りの変わらぬ街。災厄の陰など微塵も見えない。
私はふと、以前セラノに見せてもらった丘の上からの街の展望を見たくなって、路地裏を抜けると丘を登り始めた。時計は午後三時半を指していたけど、朝からの蒸し暑さは手を緩める気配はなかった。
丘の上の林を抜け展望の場所に行く前に、アバンテ達のアジト――小屋に誰かいるかもしれないと思ってそちらに寄ってみる。
しかし小屋には今誰もいない様だった。縄梯子に赤い手拭いが縛られている時は、不在の合図。少年団の皆から教えてもらった暗号だ。私はアジトを通り過ぎて展望の場所に行った。
「あら」誰もいないと思った展望台に、こちらに背を向けて――街の方を向きうずくまっている人がいたのだった。柔らかそうな栗毛色のショートの髪、赤いベレー帽。その人は私が近づいて行くのに、全く気付かなかった。
「…アバンテ…?」
彼女は私の声を聞いた途端、跳ねるようにこちらを見た。人に知られたくない秘密のある時に、人に見つかってしまったような、そんな表情だ。負けん気の強そうな眉毛が悲しそうに曲がっている。くしゃくしゃになったその顔に、ぼろぼろと涙が流されていた。
「アバンテ?」
私が更に近づくと、アバンテは私から顔を隠す様に手をやり、後に後ずさろうとする。私はそんなアバンテの肩に手をかける。
「アバンテ、どうしたの!」
「何でもない!何でもないよ、ラン!」
彼女はいやいやをするように頭を振ると、ごしごしと涙を拭く。私はそんなアバンテが急に小さく見えて、もう片方の手もそえてアバンテの肩をつかんだ。
「どうしたのよアバンテ!」
「……」
もう、アバンテは私から離れようとはしていない。少し経ってアバンテのしゃっくりが少し収まると、アバンテは無言で私の胸に頭を寄せた。
「――父さんと母さんが離婚するって言うんだ…」
アバンテは思い出すのも辛そうに切り出した。
「…私のおじいさんは町長――スタークさんと一緒にこの街の発展に尽くした人で、炭坑をいくつか持った会社を経営していた。おじいさんが死んでからはあたしの父さんが店の経営を引き継いだんだけど…あたしの父さん、会社の仕事が忙しいらしくてなかなか家族との時間が取れないんだ。母さんは仕事を控えめにして、もっと家族との時間も取って下さいって、いつも言う。
あたしが物心ついた時から父さんと母さんはそんな言い合いをする事が多かったんだけど…。最近になっていきなり、母さんが離婚を真剣に考えるようになって…二人共アバンテは父さんと母さん、どっちについていくの。なんて…言って…そんなの…選べるわけがないよ…くそ…家になんて帰りたくない…いっそのこと…あたしが…あたしが家を出て行ってやろうか…!くそ…」
一度は止まりかけた涙が再び溢れ出すと、彼女は私の肩に頭を預けた。「アバンテ、アバンテ」と私は彼女の名前を繰り返し繰り返し言いながらその頭に手を回した。
――アバンテは、この会って間もない快活な女の子は――私の憧れだった。
誰に対しても物怖じしない強さに、人をすっぽりと受け入れる優しさがみなぎっている。大勢の子達に囲まれてうろたえる私を、少年団に誘ってくれたのはアバンテだった。
どこにいても元気で弱い所を見せたりしないのは私と対照的で、まるで昔からの親密な友達のように感じていた。その金色の髪はいつもまぶしかった。
そんなアバンテが、小さく子供の様に泣きじゃくっている。
アバンテの優しさ――とか強さとか――、そんな風に彼女を見せていたのは家庭の事情の反発からだったのかも…そんな事を考える。
私は、アバンテは私が持ってない強さを備えた、ずっと向こうの場所を歩いているのだと思っていた。だけど違った。アバンテは私の歩く魔女の道とは違うけど、やっぱり私と同じ様に、同じ年頃の子供達が持っているような悩みを抱えている。それでも――アバンテは悩みに埋もれないで、皆の前では明るく振舞っていた。彼女の――芯の強い部分だと、私が彼女を見習うべき部分だと思う。
そんなアバンテが健気に感じられてならなくて。
「アバンテが――いなくなったら二人共、悲しいと思うと思うよ。この間、アバンテのお父さんには町長館のパーティーに出席させてもらったわよね。私すごく嬉しくて…アバンテのお父さん素敵な人だなーって、思ったよ。アバンテのお父さんすごくアバンテの事可愛がっているって思った…だから…一度、よく話して…アバンテがどんな事を望んでいるのか、二人に言ってあげなよ」
「うん…うん…」
「もう一度会いに行ったらどうかな。私も一緒に行こうか?」
すると彼女はしばらく無言でいた後頭を私の肩から離し、両膝頭の上に頭を沈めて、私の顔の横に静止する様に片手を出した。
「大丈夫だよ。ラン!」
泣き声で、だけど自分を元気付けようとする明るい気持ちを込めて、アバンテは言った。
「うん…ごめんね…いきなりさあ…へへ、あたしらしくなかったね」
「そんな事はないよ」
「…あたし、父さんと母さんと、もっと話してみる。絶対離婚になんかさせない」
「うん」アバンテの眼は、気持ちを整理しているかの様に静かに街を見下ろしている。私も彼女に習い、街を見下ろしていた。
「お――い、大変だあ!」
風のささやきだけであった、その静かな空間を破るようにその声は聞こえた。
振り返ると、少年団の子達が三人こちらに走りよって来るのが見えた。
「大変って、どうしたんだい?」
落ち着きを取り戻して普段と何ら変わらない調子のアバンテが、そう聞いた。少年団の子は、急いで丘を登って来た呼吸を整えるのももどかしいと言った風で、必至に何かを伝えようとしていた。
「セラノがすっげえ高熱を出してぶっ倒れたらしいんだ」
「ええ!」
私達は揃って顔を見合わせた。
日はもうかなり暮れなずんでいる。僅かなそよ風が私達の髪を撫でた。
*
ノックをしてそっと部屋のドアを開けた。セラノ達家族の部屋のベッドに、セラノは寝かされていた。
「セラノ」私達は彼にそっと寄った。眼をつぶっているけど、顔は紅潮し、汗をかいている。苦しそうに荒い息を吐いていた。
「やだ、セラノ…」
アバンテも心底心配そうにセラノを覗き込んだ。だけどアバンテが顔を近づけてもセラノは答えるどころか、気付いていない様子だった。
「ついさっき倒れちまって…」
マーカントさんが桶に水をくんで部屋に入った。枕もとに寄ってタオルを絞ると、換えてやった。
「今お医者様とうちの亭主に知らせにいってもらったとこさ。こんな高熱が出て…」
マーカントさんは眉間にしわをよせてそう言った。その口がかすかに震えている。
セラノの手が無意識に空をさぐった。更に苦しそうな息を吐いて、汗の量も増えた。
「セラノ、セラノ!」
その手を取ろうとしかけたけど、いち早くマーカントさんが手を取った。私達はといえば、なすすべもなくうろたえていた。
「ああ、セラノ――なんでだろう、昨日までは、昨日まではあんなに元気だったのに、こんなに苦しそうに…」
アバンテの顔は蒼白になっていた。セラノを見ながら私の手を探り寄せる。私達はセラノのこのあまりの急な容態の変化に、それを理解しきる心が追いついていなかった。
後でがちゃりという音が聞こえ、白衣を着た、バッグを持った男の人が部屋に入って来た。お医者様だ。
「ああイーストロッド先生、セラノが、セラノがいきなり高熱を出しちまったんです!どうか診てやってください」
マーカントさんはお医者様にすがるようにその肩袖をつかんだ。イーストロッドと呼ばれたその先生は、マーカントさんの肩を少しさすると、無言でセラノの診察を始めたのだった。
「セラノ――ッ!」
ドンという音がして部屋のドアが開く。
「静かにおしよ!」マーカントさんが強い声でその人に言った。
「す、すまねえ…」セラノのお父さんだ。
「先生、セラノはどこが悪くなっちまったんですか?風邪ですか?治るんですか?」
すっとセラノの苦しそうな顔を見、先生に聞いた。だけど先生は無言で首を振るばかり。
「先生、一体セラノはなんの病気なんですか!?」
「…」
随分と長い間セラノの体を診ると先生は、椅子から立ち上がり、こっちを向いてうつむき加減に口を開き始めた。
「…わからない、わからないんだ…風邪の症状には似ているが…風邪ではない。かといって、他に悪い部分は見当たらないのに、この高熱を出している…原因が不明なのだ!」
「なんですって!」
マーカントさん、アバンテ、私、は皆一様に手を口に当てて叫んだ。
しばらくの間、誰も何も言えなかった。セラノが突然高熱を出したとはいえ、いつかはそれはきっと治るものだと思っていたし、ましてや原因不明などとは思ってもいなかったからだ。
「…とりあえずしばらく様子を見るしかない…解熱剤と精神安定剤を使ってみるが、それで治るとは…」
凍りついたような雰囲気の中、それを救ってあげられない自分の無力さを呪うような顔をして、先生は搾るように言った。
「…そりゃつまり…うちの息子は助からねえかもしれねえって事ですか…?」
セラノのお父さんが立ち尽くす先生の袖を、迷子になった子供が親を見つけてすがるように、震える手でつかんでつぶやいた。
「先生…」
マーカントさんもセラノの傍を一旦離れ、先生の所に寄っていった。
「分からんが…――しかし!高熱が出ているのにその原因もわからないのでは…わしもこう見えて数年前まで都市の方で最先端の医術を学んできた医者だ。しかし…しかし、こんな病気は、見た事も聞いた事もないんだ…」
再びハッと息を呑む音が、部屋に響き渡った。
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誰も動き出そうとはしなかった。いや、できなかった。凍りつくような想像が、悪魔のように私達の体をぎゅうっとつかんでいたからだ。
「…最善はつくすつもりだ」
それでもなお医者の責任を持ってイーストロッド先生はつぶやいた。そして再びセラノの体を見、どこに異常があるのか診察しはじめた。精神安定剤を打って、形だけは落ち着きを取り戻したセラノの手を、マーカントさんが再び握り締める。
しかし、その手には先程の痛そうなまでの心配から来る強さはもう無かった。力を入れたくても入れられないような、呆けた、すがるような眼でただ先生とセラノを交互に見ていた。お父さんもマーカントさんの肩に手を置いて、生気のない顔でセラノを見ている。
私も朝までのセラノの元気さを思い出すと、自然涙が込み上げてくるのを感じた。
――泣いている場合じゃない。私にも何かできる事はないのか――。そう思った時、私はある事に気付いた。
部屋に、何か異質な気配が残っていた。
それは人間界の気配ではなく精霊界の気配。常にただよっている大気や、風の精霊の気配とも違う…もっとまがまがしいものの――これは…もしかすると…。
私は、ある考えに達した。だけどその考えが正しければ私はまさに今、ここで自分が魔女だと言う事を皆に打ち明けなければならないのであった――。
自分の考えがその事と結びついて、一瞬私の決意を引き止めようとした。だけど、今はそんな事を悩んでいるいとまは無い。
「私、心当たりがあります」
つぶやくように私は言った。部屋中の人達が私が何を言い出すのかと注目した。
「ちょっと待っていて下さい」
私は部屋を出ると、素早く自分の部屋に入った。バッグをあさり、塔から持ってきた魔法の林檎を取り出す。旅立ちの日からもう数日間が経ったというのに、林檎はその鮮やかな黄緑色のつややかさを失っておらず、瑞々しかった。そしてそれと小さな入れ物に入った塩を取り出す。これは、コリネロスがまじないをかけてくれた悪い精霊祓いの塩だ。それ等を持って、今度は食堂に行く。小さな桶を見つけて、それに水を八分目程入れる。私は桶をセラノの横になっている部屋に持っていった。
「ラン!」
アバンテが部屋の前で、一体私がどうしてしまったのかと立っていた。
「アバンテ、ごめんちょっとそこ通らせて」
私は桶の水をこぼさないように、アバンテの横を通り部屋のドアの内側のとこいらに桶を置いた。
「ラ、ランちゃん?」
「もう…ちょっと待ってもらえますか」
桶の中に林檎を入れる。林檎は桶の水の中にほぼ沈み込んだ。私はそこにコリネロスの塩を少しずつ入れていった。やがて林檎は徐々に浮き始め、その半分を水面に出した所で私は塩を入れるのをやめた。
それらの一連の行動を、マンカートさんや先生は怪訝な顔で見ている。私は説明を始める事にした。
セラノに近づきその顔に手を当てる。
「やっぱり」
「何だ君は?セラノ君の友達か?一体何が分かったというんだね」
「先生、これは病気ではありません。セラノの精霊力が、普段よりずっと強くなるように…呪いをかけられています」
精霊力というものは実は人間にも宿っている。だけどそれは本当に微々たる物で、例えば精霊を感じる程には強くはない。もしそれが強かったとしたら、人間の体の構造に耐えられないからだ。
「呪い?呪いだって?」先生の言葉に頷いた。
「…私、聞いた事があります。強い恨みを持ってしまった精霊は、人の体を悪くさせる精霊力の源を撒き散らすって。下級の精霊にそれを運ばせて、人の具合を悪くさせるんです」
「呪い、精霊力?君は何をいっているんだ。そんなものは存在しないよ!昔話に出てくる魔女じゃああるまいし!今は皆セラノ君が心配なんだ。冗談を言っている場合じゃないんだよっ!」
先生は私をぎょろっと睨んで、語気を荒くした。私は少しびくっとしたけど、それには怯まずに言った。
「セラノの事、私だってすごく心配です!だからこそ――私は魔女だから、精霊の呪いなら、私が何とかしなきゃいけないんです」
「ラン――あんたどうしちゃったんだ」
先生ではなくて、アバンテが後から私の肩を掴んで叫んだ。私はアバンテの方を見ると、静かに左手をかざした。
「アバンテ――本当なのよ!私、人間ではなくて、魔女なの」
私は精霊の言葉をかすかにつぶやくと、一瞬意識を集中させた。精神が精霊界で精霊との交信を果たし、魔法の力で精霊の力が具現化される――私の左手の中に、赤々と燃える小さな火柱が立った。
「うわああぁっ!」
声をあげたのはセラノのお父さんだった。
「ラ、ラ…」先生、アバンテも皆驚いて後ずさる。信じられないような物を見たという眼が、あらゆる角度から私を指した。
「風よ、優しき風よ――」今度は私の言葉に従い、いずこかから二陣の風が吹き出した。風は、互いに交差し、混じりながら小さな螺旋を描く。その中に、火柱は何事もなかったかのように消えていた。
「信じて――私、魔女なんです」
誰も、何も言わなかった。
皆に正体を打ち明けなければならなくなった時から、私の焦りは段々と治まってきた。魔女として、災厄を鎮める者として、セラノを助ける為として、私が今言わなくてはならない事、しなくてはならない事がはっきりと頭に浮かぶ。細かく説明するのは全てが終わった後でいい――。
私は精霊の事、何故セラノの症状がわかったのかを一応説明した。皆説明をいきなり完全に理解してくれたとは思えない。当たり前だった。
「で、ラン…じゃあその林檎は何なんだ…?」
こういう時には大人程考えが固まっていない私達のような人間の方が柔軟性がある。アバンテはいち早く、とは言っても驚いた面持ちで、そう聞いた。
「うん、アバンテ、お父さんやマーカントさん、先生よく聞いて。これがセラノを回復させる為に大事なのよ――恨みを持った精霊は呪いの対象に選んだ人間の枕元に使いをやってこさせて、何度も何度も呪いをかけてその人間を呪い殺そうとする事があると聞きます。
精霊の命令を受けて呪いをかけにやって来る者とは――災いを呼ぶ忌まわしき者、…下級精霊ホブゴブリン。私の考えるセラノを救う方法とは、枕元に現れるホブゴブリンを捕まえて、彼等に命令しているその元凶を止める事です。その為に――ホブゴブリンを捕まえる為にこの林檎が必要になってくるんです。
ホブゴブリンは普段人間はおろか私達魔女にも見えません。どうすればその姿を暴く事ができるか…この林檎と、魔法の塩を使った林檎探知という魔法――魔法の塩の溶けた塩水につかり、丁度よく水面に浮かんだ魔法の林檎。この均衡の取れた魔法力によって浮かぶ林檎が、邪悪な力を感じて均衡を崩し、水面下に沈み込んだ時、その時がホブゴブリンが近づいてきた事を知らせるアラームになります――を使うんです」
「……」
「……」
「本当にその…ホブゴブリンが来るの…?ラン」
信じたいけど、あまりに日常からかけ離れすぎて理解が追いつかないと言った顔で、アバンテが言った。
その時!
塩水に浸かった林檎は、誰の手にも触れていないのにもかかわらず、途端にぶるぶると震え始めたのだった!
それから二日して、私達はアバンテのお父さんの協力を得て、町長さんの炭鉱夫のパーティーに出席する事ができた。
きらびやかなホールで私達はできる限りの綺麗な格好をし(私は魔女の服を着て行った。そうそう、もちろんセラノのお父さんも来ていた)、町長さんの話に耳を傾けた。
町長さんは名前をスタークさんと言い――つまりはこの人がシェナの石炭工場の持ち主であり、スターク炭鉱の経営を担っている――初老でしわの刻まれた厳しそうな顔をしていたが、話を聞くとシェナの街のこれからの発展を考え、同時に町民の事も考えた発言だった。誰一人として反対意見を出す人はおらず、スターク町長の乾杯の音頭に炭鉱夫の人達は希望の色を浮かべていた。
街が栄え、発展するのだ。そこで働く人達は嬉しいに決まっている。そしてそんな人々の嬉しそうな顔を見る事が、町長さんの望みなのかもしれない。中々立派な人だ。私はそう思った。
――だけどそれは、人間の立場からでだけ考えた見方だ。私達はそれを後に知る事になった。
*
その日は曇っていた。照りつける太陽の光はないものの、その代わりにまとわりつく蒸し暑さは増していた。往来を歩く人々の多くも暑さにやや顔をしかめている。私はその曇った空を見上げながら、これでは炭鉱夫の人達も大変だろうなと思った。
お昼過ぎになり、私は街を一周して来た。いつも通りの変わらぬ街。災厄の陰など微塵も見えない。
私はふと、以前セラノに見せてもらった丘の上からの街の展望を見たくなって、路地裏を抜けると丘を登り始めた。時計は午後三時半を指していたけど、朝からの蒸し暑さは手を緩める気配はなかった。
丘の上の林を抜け展望の場所に行く前に、アバンテ達のアジト――小屋に誰かいるかもしれないと思ってそちらに寄ってみる。
しかし小屋には今誰もいない様だった。縄梯子に赤い手拭いが縛られている時は、不在の合図。少年団の皆から教えてもらった暗号だ。私はアジトを通り過ぎて展望の場所に行った。
「あら」誰もいないと思った展望台に、こちらに背を向けて――街の方を向きうずくまっている人がいたのだった。柔らかそうな栗毛色のショートの髪、赤いベレー帽。その人は私が近づいて行くのに、全く気付かなかった。
「…アバンテ…?」
彼女は私の声を聞いた途端、跳ねるようにこちらを見た。人に知られたくない秘密のある時に、人に見つかってしまったような、そんな表情だ。負けん気の強そうな眉毛が悲しそうに曲がっている。くしゃくしゃになったその顔に、ぼろぼろと涙が流されていた。
「アバンテ?」
私が更に近づくと、アバンテは私から顔を隠す様に手をやり、後に後ずさろうとする。私はそんなアバンテの肩に手をかける。
「アバンテ、どうしたの!」
「何でもない!何でもないよ、ラン!」
彼女はいやいやをするように頭を振ると、ごしごしと涙を拭く。私はそんなアバンテが急に小さく見えて、もう片方の手もそえてアバンテの肩をつかんだ。
「どうしたのよアバンテ!」
「……」
もう、アバンテは私から離れようとはしていない。少し経ってアバンテのしゃっくりが少し収まると、アバンテは無言で私の胸に頭を寄せた。
「――父さんと母さんが離婚するって言うんだ…」
アバンテは思い出すのも辛そうに切り出した。
「…私のおじいさんは町長――スタークさんと一緒にこの街の発展に尽くした人で、炭坑をいくつか持った会社を経営していた。おじいさんが死んでからはあたしの父さんが店の経営を引き継いだんだけど…あたしの父さん、会社の仕事が忙しいらしくてなかなか家族との時間が取れないんだ。母さんは仕事を控えめにして、もっと家族との時間も取って下さいって、いつも言う。
あたしが物心ついた時から父さんと母さんはそんな言い合いをする事が多かったんだけど…。最近になっていきなり、母さんが離婚を真剣に考えるようになって…二人共アバンテは父さんと母さん、どっちについていくの。なんて…言って…そんなの…選べるわけがないよ…くそ…家になんて帰りたくない…いっそのこと…あたしが…あたしが家を出て行ってやろうか…!くそ…」
一度は止まりかけた涙が再び溢れ出すと、彼女は私の肩に頭を預けた。「アバンテ、アバンテ」と私は彼女の名前を繰り返し繰り返し言いながらその頭に手を回した。
――アバンテは、この会って間もない快活な女の子は――私の憧れだった。
誰に対しても物怖じしない強さに、人をすっぽりと受け入れる優しさがみなぎっている。大勢の子達に囲まれてうろたえる私を、少年団に誘ってくれたのはアバンテだった。
どこにいても元気で弱い所を見せたりしないのは私と対照的で、まるで昔からの親密な友達のように感じていた。その金色の髪はいつもまぶしかった。
そんなアバンテが、小さく子供の様に泣きじゃくっている。
アバンテの優しさ――とか強さとか――、そんな風に彼女を見せていたのは家庭の事情の反発からだったのかも…そんな事を考える。
私は、アバンテは私が持ってない強さを備えた、ずっと向こうの場所を歩いているのだと思っていた。だけど違った。アバンテは私の歩く魔女の道とは違うけど、やっぱり私と同じ様に、同じ年頃の子供達が持っているような悩みを抱えている。それでも――アバンテは悩みに埋もれないで、皆の前では明るく振舞っていた。彼女の――芯の強い部分だと、私が彼女を見習うべき部分だと思う。
そんなアバンテが健気に感じられてならなくて。
「アバンテが――いなくなったら二人共、悲しいと思うと思うよ。この間、アバンテのお父さんには町長館のパーティーに出席させてもらったわよね。私すごく嬉しくて…アバンテのお父さん素敵な人だなーって、思ったよ。アバンテのお父さんすごくアバンテの事可愛がっているって思った…だから…一度、よく話して…アバンテがどんな事を望んでいるのか、二人に言ってあげなよ」
「うん…うん…」
「もう一度会いに行ったらどうかな。私も一緒に行こうか?」
すると彼女はしばらく無言でいた後頭を私の肩から離し、両膝頭の上に頭を沈めて、私の顔の横に静止する様に片手を出した。
「大丈夫だよ。ラン!」
泣き声で、だけど自分を元気付けようとする明るい気持ちを込めて、アバンテは言った。
「うん…ごめんね…いきなりさあ…へへ、あたしらしくなかったね」
「そんな事はないよ」
「…あたし、父さんと母さんと、もっと話してみる。絶対離婚になんかさせない」
「うん」アバンテの眼は、気持ちを整理しているかの様に静かに街を見下ろしている。私も彼女に習い、街を見下ろしていた。
「お――い、大変だあ!」
風のささやきだけであった、その静かな空間を破るようにその声は聞こえた。
振り返ると、少年団の子達が三人こちらに走りよって来るのが見えた。
「大変って、どうしたんだい?」
落ち着きを取り戻して普段と何ら変わらない調子のアバンテが、そう聞いた。少年団の子は、急いで丘を登って来た呼吸を整えるのももどかしいと言った風で、必至に何かを伝えようとしていた。
「セラノがすっげえ高熱を出してぶっ倒れたらしいんだ」
「ええ!」
私達は揃って顔を見合わせた。
日はもうかなり暮れなずんでいる。僅かなそよ風が私達の髪を撫でた。
*
ノックをしてそっと部屋のドアを開けた。セラノ達家族の部屋のベッドに、セラノは寝かされていた。
「セラノ」私達は彼にそっと寄った。眼をつぶっているけど、顔は紅潮し、汗をかいている。苦しそうに荒い息を吐いていた。
「やだ、セラノ…」
アバンテも心底心配そうにセラノを覗き込んだ。だけどアバンテが顔を近づけてもセラノは答えるどころか、気付いていない様子だった。
「ついさっき倒れちまって…」
マーカントさんが桶に水をくんで部屋に入った。枕もとに寄ってタオルを絞ると、換えてやった。
「今お医者様とうちの亭主に知らせにいってもらったとこさ。こんな高熱が出て…」
マーカントさんは眉間にしわをよせてそう言った。その口がかすかに震えている。
セラノの手が無意識に空をさぐった。更に苦しそうな息を吐いて、汗の量も増えた。
「セラノ、セラノ!」
その手を取ろうとしかけたけど、いち早くマーカントさんが手を取った。私達はといえば、なすすべもなくうろたえていた。
「ああ、セラノ――なんでだろう、昨日までは、昨日まではあんなに元気だったのに、こんなに苦しそうに…」
アバンテの顔は蒼白になっていた。セラノを見ながら私の手を探り寄せる。私達はセラノのこのあまりの急な容態の変化に、それを理解しきる心が追いついていなかった。
後でがちゃりという音が聞こえ、白衣を着た、バッグを持った男の人が部屋に入って来た。お医者様だ。
「ああイーストロッド先生、セラノが、セラノがいきなり高熱を出しちまったんです!どうか診てやってください」
マーカントさんはお医者様にすがるようにその肩袖をつかんだ。イーストロッドと呼ばれたその先生は、マーカントさんの肩を少しさすると、無言でセラノの診察を始めたのだった。
「セラノ――ッ!」
ドンという音がして部屋のドアが開く。
「静かにおしよ!」マーカントさんが強い声でその人に言った。
「す、すまねえ…」セラノのお父さんだ。
「先生、セラノはどこが悪くなっちまったんですか?風邪ですか?治るんですか?」
すっとセラノの苦しそうな顔を見、先生に聞いた。だけど先生は無言で首を振るばかり。
「先生、一体セラノはなんの病気なんですか!?」
「…」
随分と長い間セラノの体を診ると先生は、椅子から立ち上がり、こっちを向いてうつむき加減に口を開き始めた。
「…わからない、わからないんだ…風邪の症状には似ているが…風邪ではない。かといって、他に悪い部分は見当たらないのに、この高熱を出している…原因が不明なのだ!」
「なんですって!」
マーカントさん、アバンテ、私、は皆一様に手を口に当てて叫んだ。
しばらくの間、誰も何も言えなかった。セラノが突然高熱を出したとはいえ、いつかはそれはきっと治るものだと思っていたし、ましてや原因不明などとは思ってもいなかったからだ。
「…とりあえずしばらく様子を見るしかない…解熱剤と精神安定剤を使ってみるが、それで治るとは…」
凍りついたような雰囲気の中、それを救ってあげられない自分の無力さを呪うような顔をして、先生は搾るように言った。
「…そりゃつまり…うちの息子は助からねえかもしれねえって事ですか…?」
セラノのお父さんが立ち尽くす先生の袖を、迷子になった子供が親を見つけてすがるように、震える手でつかんでつぶやいた。
「先生…」
マーカントさんもセラノの傍を一旦離れ、先生の所に寄っていった。
「分からんが…――しかし!高熱が出ているのにその原因もわからないのでは…わしもこう見えて数年前まで都市の方で最先端の医術を学んできた医者だ。しかし…しかし、こんな病気は、見た事も聞いた事もないんだ…」
再びハッと息を呑む音が、部屋に響き渡った。
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誰も動き出そうとはしなかった。いや、できなかった。凍りつくような想像が、悪魔のように私達の体をぎゅうっとつかんでいたからだ。
「…最善はつくすつもりだ」
それでもなお医者の責任を持ってイーストロッド先生はつぶやいた。そして再びセラノの体を見、どこに異常があるのか診察しはじめた。精神安定剤を打って、形だけは落ち着きを取り戻したセラノの手を、マーカントさんが再び握り締める。
しかし、その手には先程の痛そうなまでの心配から来る強さはもう無かった。力を入れたくても入れられないような、呆けた、すがるような眼でただ先生とセラノを交互に見ていた。お父さんもマーカントさんの肩に手を置いて、生気のない顔でセラノを見ている。
私も朝までのセラノの元気さを思い出すと、自然涙が込み上げてくるのを感じた。
――泣いている場合じゃない。私にも何かできる事はないのか――。そう思った時、私はある事に気付いた。
部屋に、何か異質な気配が残っていた。
それは人間界の気配ではなく精霊界の気配。常にただよっている大気や、風の精霊の気配とも違う…もっとまがまがしいものの――これは…もしかすると…。
私は、ある考えに達した。だけどその考えが正しければ私はまさに今、ここで自分が魔女だと言う事を皆に打ち明けなければならないのであった――。
自分の考えがその事と結びついて、一瞬私の決意を引き止めようとした。だけど、今はそんな事を悩んでいるいとまは無い。
「私、心当たりがあります」
つぶやくように私は言った。部屋中の人達が私が何を言い出すのかと注目した。
「ちょっと待っていて下さい」
私は部屋を出ると、素早く自分の部屋に入った。バッグをあさり、塔から持ってきた魔法の林檎を取り出す。旅立ちの日からもう数日間が経ったというのに、林檎はその鮮やかな黄緑色のつややかさを失っておらず、瑞々しかった。そしてそれと小さな入れ物に入った塩を取り出す。これは、コリネロスがまじないをかけてくれた悪い精霊祓いの塩だ。それ等を持って、今度は食堂に行く。小さな桶を見つけて、それに水を八分目程入れる。私は桶をセラノの横になっている部屋に持っていった。
「ラン!」
アバンテが部屋の前で、一体私がどうしてしまったのかと立っていた。
「アバンテ、ごめんちょっとそこ通らせて」
私は桶の水をこぼさないように、アバンテの横を通り部屋のドアの内側のとこいらに桶を置いた。
「ラ、ランちゃん?」
「もう…ちょっと待ってもらえますか」
桶の中に林檎を入れる。林檎は桶の水の中にほぼ沈み込んだ。私はそこにコリネロスの塩を少しずつ入れていった。やがて林檎は徐々に浮き始め、その半分を水面に出した所で私は塩を入れるのをやめた。
それらの一連の行動を、マンカートさんや先生は怪訝な顔で見ている。私は説明を始める事にした。
セラノに近づきその顔に手を当てる。
「やっぱり」
「何だ君は?セラノ君の友達か?一体何が分かったというんだね」
「先生、これは病気ではありません。セラノの精霊力が、普段よりずっと強くなるように…呪いをかけられています」
精霊力というものは実は人間にも宿っている。だけどそれは本当に微々たる物で、例えば精霊を感じる程には強くはない。もしそれが強かったとしたら、人間の体の構造に耐えられないからだ。
「呪い?呪いだって?」先生の言葉に頷いた。
「…私、聞いた事があります。強い恨みを持ってしまった精霊は、人の体を悪くさせる精霊力の源を撒き散らすって。下級の精霊にそれを運ばせて、人の具合を悪くさせるんです」
「呪い、精霊力?君は何をいっているんだ。そんなものは存在しないよ!昔話に出てくる魔女じゃああるまいし!今は皆セラノ君が心配なんだ。冗談を言っている場合じゃないんだよっ!」
先生は私をぎょろっと睨んで、語気を荒くした。私は少しびくっとしたけど、それには怯まずに言った。
「セラノの事、私だってすごく心配です!だからこそ――私は魔女だから、精霊の呪いなら、私が何とかしなきゃいけないんです」
「ラン――あんたどうしちゃったんだ」
先生ではなくて、アバンテが後から私の肩を掴んで叫んだ。私はアバンテの方を見ると、静かに左手をかざした。
「アバンテ――本当なのよ!私、人間ではなくて、魔女なの」
私は精霊の言葉をかすかにつぶやくと、一瞬意識を集中させた。精神が精霊界で精霊との交信を果たし、魔法の力で精霊の力が具現化される――私の左手の中に、赤々と燃える小さな火柱が立った。
「うわああぁっ!」
声をあげたのはセラノのお父さんだった。
「ラ、ラ…」先生、アバンテも皆驚いて後ずさる。信じられないような物を見たという眼が、あらゆる角度から私を指した。
「風よ、優しき風よ――」今度は私の言葉に従い、いずこかから二陣の風が吹き出した。風は、互いに交差し、混じりながら小さな螺旋を描く。その中に、火柱は何事もなかったかのように消えていた。
「信じて――私、魔女なんです」
誰も、何も言わなかった。
皆に正体を打ち明けなければならなくなった時から、私の焦りは段々と治まってきた。魔女として、災厄を鎮める者として、セラノを助ける為として、私が今言わなくてはならない事、しなくてはならない事がはっきりと頭に浮かぶ。細かく説明するのは全てが終わった後でいい――。
私は精霊の事、何故セラノの症状がわかったのかを一応説明した。皆説明をいきなり完全に理解してくれたとは思えない。当たり前だった。
「で、ラン…じゃあその林檎は何なんだ…?」
こういう時には大人程考えが固まっていない私達のような人間の方が柔軟性がある。アバンテはいち早く、とは言っても驚いた面持ちで、そう聞いた。
「うん、アバンテ、お父さんやマーカントさん、先生よく聞いて。これがセラノを回復させる為に大事なのよ――恨みを持った精霊は呪いの対象に選んだ人間の枕元に使いをやってこさせて、何度も何度も呪いをかけてその人間を呪い殺そうとする事があると聞きます。
精霊の命令を受けて呪いをかけにやって来る者とは――災いを呼ぶ忌まわしき者、…下級精霊ホブゴブリン。私の考えるセラノを救う方法とは、枕元に現れるホブゴブリンを捕まえて、彼等に命令しているその元凶を止める事です。その為に――ホブゴブリンを捕まえる為にこの林檎が必要になってくるんです。
ホブゴブリンは普段人間はおろか私達魔女にも見えません。どうすればその姿を暴く事ができるか…この林檎と、魔法の塩を使った林檎探知という魔法――魔法の塩の溶けた塩水につかり、丁度よく水面に浮かんだ魔法の林檎。この均衡の取れた魔法力によって浮かぶ林檎が、邪悪な力を感じて均衡を崩し、水面下に沈み込んだ時、その時がホブゴブリンが近づいてきた事を知らせるアラームになります――を使うんです」
「……」
「……」
「本当にその…ホブゴブリンが来るの…?ラン」
信じたいけど、あまりに日常からかけ離れすぎて理解が追いつかないと言った顔で、アバンテが言った。
その時!
塩水に浸かった林檎は、誰の手にも触れていないのにもかかわらず、途端にぶるぶると震え始めたのだった!
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