【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ

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10 何をすればいいのかすらわからない

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「あ、あの……何をすれば」
「建国祭の準備に決まっておるだろう!開催は明日からなのだぞ!」
「ですから、準備の為に何をすれば良いかと……」
「は?!何を言っておるのだ、責任者は誰だ、呼んでこい!」
「……王妃アイリーン様が指揮を取っておりました……あの、呼び戻すことなどは……」
「するはずがないっ!!」

 アイリーンとレンブラントがシュマイゼルに伴われ王宮を出る。そして宰相ローランドと騎士団長のヴィッツが退去してすぐにエルファードは困っていた。
 建国祭の準備など毎年侍従に「やっておけ」と言いさえすれば、滞りなく終わっていた。

「去年通りに……」
「去年通りに何をすれば……?」
「そ、そんなことお前が考えろ!」
「分からないから聞いているので……」

 侍従は青い顔をしてエルファードに聞き返す。去年の事を知る者は引き潮より素早く城から去って行った。
 思えばこの城の要職を務めていた者達はハイランド伯爵家ゆかりの者が多かった気がする。

「な、何とかしろ!去年の記録でも見れば良いではないか!!」

「去年の記録はどこにあるのですか……?」

「し、しらん!自分で探せ!!」

 エルファードはその場から離れた、いや逃げ出した。

「毎年の事だろう?!何故出来んのだ!」

 何故か?自分の胸に手を当てればわかる事なのだが、それを認める事は出来ない。と言う事に。

「ええい!腹立たしい!」

 怒りに任せて準備の終わらぬパーティ会場から出て来たが、残された者たちは右往左往するしかなかった。

「エルファードさまぁ……」

「だ、大丈夫だよ、ネリーニ。何も心配する事はない。私達は明日の建国祭に華々しく登場して国内外に私達の事を知らしめれば良いのだ」

「ええ!そうですわね」

 エルファードの腕にしなだりかかり、ネリーニは微笑む。

「やっとあの醜くてうるさい女がいなくなったんだ……今日からお前が正妃だ!」

「嬉しいですわ」

 そう言いながら仲良く腕を絡ませ合う二人だが、不安の空気がまとわりつき晴れる事はなかった。


 
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