【完結】お飾りではなかった王妃の実力

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
3 / 64

3 ほぼ全員知っていた?

しおりを挟む
 離婚宣言を受けてもう馬車でマルグ国へ向かっております。早すぎる展開に少し頭痛を感じますが、レンブラントとシュマイゼル様は楽しそうに外を眺めておしゃべりをしています。
 いつの間にこんなに打ち解けたのでしょうか?

「シュマイゼル様。私はあまり外へ出してもらえなかったので、とても楽しいです」
「レンブラント殿、そこは父上と言ってくださって構いませんよ」
「では、私の事はレンでお願いします父上」
「分かりました、レン。所でレンの母上の好物は何ですか? 」
「甘いプリンですね。こっそり夜中に二人で食べるのが醍醐味です。今度は父上もお招きしましょう」
「それは光栄です、ぜひお願いします」

 何かしら? この外堀を埋められて行ってる感じは。わたくしはそこまでしていただくほどの人間ではありませんのに。思わずわたくしをのけ者に仲良くなる男性達から目を反らし窓の外をみると、追いついてくる馬の蹄の音が聞こえて来ました。

「陛下」

 馬車と並走し始めた騎士の一人が外から声をかけてきます。まあ、なんと騎乗の腕もよろしい方なのですね。相当訓練を積んでいるのでしょう。

「ハイランド家にも色よい返事を頂けました。一族郎党全て越してくるとのことです」
「なるほど、もう準備は出来ていたと言うわけか。流石ハイランド伯」
「他国を出し抜けて良かったですね! 」
「ははは、10日も前から来ていて正解だったな! 」

 そういえばシュマイゼル様はやけに早くおつきでしたわね。騎士とのやり取りを聞いていたレンブラントはわたくしも聞きたかった事を聞いてくれました。

「父上。父上はこうなる事をご存じだったのですか?」
「建国祭の準備に忙しかったアイリーン様とナザールの城の者以外ほぼ全員こうなると思っていたと思うぞ」
「……もしかしてナザールのエルファードの暗愚っぷりは有名なのですか……? 」
「レンには申し訳ないが、この辺り一帯で知らぬ者はおらんなぁ……」
「うわあ……」

 レンブラントが頭を抱えてしまいました……。わたくしも色々頑張ったのですが、あの方を賢王とするのは無理なものは無理なのでした。

 わたくしと王太子エルファード様の婚約は私が10歳の時でございました。私にはこの国ではなく隣国に5歳の時から婚約者がいたのですが、どうしてもと前国王に脅しと圧力をかけられ、泣く泣くその方とは婚約解消し、5つ上のエルファード様と婚約をさせられたのでした。

 ええ、エルファード様は15歳の時に小さな頃からの婚約者に捨てられたのです。
 そして白羽の矢が当たってしまったのがわたくしというわけです。流石に住み暮らし、拝領している国の王から脅迫紛いの婚約承諾書が届いては首を縦に振るしかありません。
 そこからわたくしはエルファード様の婚約者となり、王子妃教育並びに王妃教育、王配としての教育とさまざまな方に師事を仰ぐ日々でした。
 ええ、最初から王配教育でしたわ。最初から国政は私が握るよう手配されておりました。

 エルファード様はわたくしが2学年ほど飛び級スキップで学園へ入学した際に1年間だけ同じ学舎へ通いましたが、卒業を許されたレベルでございました。なるほど、わたくしが政治のすべてを取り仕切るように勉強をさせられたか、良く分かるような学園の成績だったのです。
 なぜ同じ空気を吸っているのにこうもテストの点数が悪いのか理解できませんし、座学が壊滅的なら運動はおできになるの?と思うと晴天に隠れ損ねてそこら辺で干からびかけているカエルのように、良く運動場の床の上に伸びておりました。

ファード殿下」

 エルファード様のお耳には入った事がないようですが、倒れてひどい事になっている自国の王太子を見て、下級生達がよく呟く言葉でございました……。あの方が得意なものとはなんなのか、学園生活で見出すことはできませんでした。

しおりを挟む
感想 175

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

【完結保証】第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね

ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

処理中です...