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打倒!元実家!
74 ディライト家の没落2
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シュマリエ・ディライトはディライト公爵令嬢であり、学園の2年生だ。高位貴族らしい貴族で、少し傲慢な所とあまり賢くない頭を、家柄で補っていた。
そのシュマリエは最近特に不機嫌が続いている。以前に学園の購買にあったこともある大人気のパン屋「ポム・カレン」の限定商品がどうしても手に入らないのである。
「今月の学園前店のプチ・フルールシリーズの可愛らしさといったら」
爵位が同じ公爵令嬢の耳に揺れる小ぶりな花のイヤリング。
「あら!大通り店のブルーの方がお気に入りですわ」
シュマリエより家柄が劣る令嬢も色違いを持っている。
「南店のイエローはお姉様に差し上げましたのよ」
毎月初めになるとこの話題で持ちきりになる。なのに、シュマリエは一度も手にした事がなかった。
「わたくしは……今月もダメでしたわ」
そう、ポロリと溢すと
「そうなんですね」「あら、そうでしたの」
少し含みを感じる慰めの言葉が聞こえてくる。
「皆様はどうやってチケットを手に入れられるのでしょうか」
「父が頂いて来ましたわよ?」
「懇意にしている商会が、用意してくれますわ」
「月初めに並んで買いますわ」
どれもこれも毎月行っているのだが、シュマリエの手にチケットは入らない。
毎月使用人に並ばせているのだが、
「売り切れだそうです」
「昨日から並びましたよね?!」
先頭に並んでいたのに何故か毎月買う事が出来ないのだ。おかしい!おかしい!と思いつつも手に入る事はなかった。
「旦那様……御領地の事なのですが……」
「人が減っている?!どう言う事だ?」
「隣接する領地に……移動しているようで……」
流通が大幅に減っているのだ。
「どうも隣の領地に大きな工房が出来たらしく、そちらに人が流れております更に逆隣の領地に大きな宿泊施設が出来たとかで、そちらに人が……」
つまり、公爵家の領地の周りに魅力的な施設が出来、皆そちらに移動していると言うのだ。
「どう言う事だ……」
公爵領は何も変わらない。ただ周りが発展したのだ、不自然なほど、素早く魅力的に。
「王都から離れているのに、歌劇場などもでき……なんと歌い手は人魚だそうで……」
「なんと……珍しい……」
自分もそれはみたいと思ったがそのせいでディライト領からは人と金が減っている。
領地が隣接している全ての領地に何らかの魅力溢れる施設が出来ているのだ。
「我が領地にも、そのような物を作れば良いのではないか?誰が作ったんだ?」
報告に来た執事は、元々顔色は良くなかったが、それを聞いて更に顔色をなくした。
「あの……非常に申し上げ難い事なのですが……」
「なんだ、言ってみろ」
言い淀む執事に苛立ちを覚える。執事は、ぐっと力をいれて、言葉を絞り出す。
「リリー商会と言う……商会が全て取り仕切っております」
「聞いた事ないな?」
「……少し前に出来て、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの商会で、王家の覚えもめでたく、特に王太子様からの信頼が厚く……」
王太子・エイムドか……。ジュディウスは顔を顰める。我がディライト家は王太子に嫌われてている。アマリリーの息子を殺しかけた件で疎まれた。
あの王太子が在位している間、我がディライト家の繁栄は難しいのかもしれない。
「そのリリー商会とやらに連絡を取るんだ」
「無理でございます」
「何?!」
きっぱりと言い切る執事に、驚きを通り越して怒りを覚えた。連絡すら取る気がないとはどう言う事だ!
「リリー商会は絶対にディライト家の要望には応えません……」
「話を持って行く前から何を言っておるのだ!そんな手腕の商会なら是非取り立てて我が家に出入りさせればよかろう!新しい御用聞きも決まっておらんのだし!ちょうど良いではないか!」
「ですから、無理なのでございます!リリー商会の代表はアマリリー様でございます!!」
「な、なん……だと……?」
『人殺し』
そう言い捨てて、振り返る事もなく去っていった妹の名前を愕然とした気持ちで、ジュディウスは耳にした。
そのシュマリエは最近特に不機嫌が続いている。以前に学園の購買にあったこともある大人気のパン屋「ポム・カレン」の限定商品がどうしても手に入らないのである。
「今月の学園前店のプチ・フルールシリーズの可愛らしさといったら」
爵位が同じ公爵令嬢の耳に揺れる小ぶりな花のイヤリング。
「あら!大通り店のブルーの方がお気に入りですわ」
シュマリエより家柄が劣る令嬢も色違いを持っている。
「南店のイエローはお姉様に差し上げましたのよ」
毎月初めになるとこの話題で持ちきりになる。なのに、シュマリエは一度も手にした事がなかった。
「わたくしは……今月もダメでしたわ」
そう、ポロリと溢すと
「そうなんですね」「あら、そうでしたの」
少し含みを感じる慰めの言葉が聞こえてくる。
「皆様はどうやってチケットを手に入れられるのでしょうか」
「父が頂いて来ましたわよ?」
「懇意にしている商会が、用意してくれますわ」
「月初めに並んで買いますわ」
どれもこれも毎月行っているのだが、シュマリエの手にチケットは入らない。
毎月使用人に並ばせているのだが、
「売り切れだそうです」
「昨日から並びましたよね?!」
先頭に並んでいたのに何故か毎月買う事が出来ないのだ。おかしい!おかしい!と思いつつも手に入る事はなかった。
「旦那様……御領地の事なのですが……」
「人が減っている?!どう言う事だ?」
「隣接する領地に……移動しているようで……」
流通が大幅に減っているのだ。
「どうも隣の領地に大きな工房が出来たらしく、そちらに人が流れております更に逆隣の領地に大きな宿泊施設が出来たとかで、そちらに人が……」
つまり、公爵家の領地の周りに魅力的な施設が出来、皆そちらに移動していると言うのだ。
「どう言う事だ……」
公爵領は何も変わらない。ただ周りが発展したのだ、不自然なほど、素早く魅力的に。
「王都から離れているのに、歌劇場などもでき……なんと歌い手は人魚だそうで……」
「なんと……珍しい……」
自分もそれはみたいと思ったがそのせいでディライト領からは人と金が減っている。
領地が隣接している全ての領地に何らかの魅力溢れる施設が出来ているのだ。
「我が領地にも、そのような物を作れば良いのではないか?誰が作ったんだ?」
報告に来た執事は、元々顔色は良くなかったが、それを聞いて更に顔色をなくした。
「あの……非常に申し上げ難い事なのですが……」
「なんだ、言ってみろ」
言い淀む執事に苛立ちを覚える。執事は、ぐっと力をいれて、言葉を絞り出す。
「リリー商会と言う……商会が全て取り仕切っております」
「聞いた事ないな?」
「……少し前に出来て、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの商会で、王家の覚えもめでたく、特に王太子様からの信頼が厚く……」
王太子・エイムドか……。ジュディウスは顔を顰める。我がディライト家は王太子に嫌われてている。アマリリーの息子を殺しかけた件で疎まれた。
あの王太子が在位している間、我がディライト家の繁栄は難しいのかもしれない。
「そのリリー商会とやらに連絡を取るんだ」
「無理でございます」
「何?!」
きっぱりと言い切る執事に、驚きを通り越して怒りを覚えた。連絡すら取る気がないとはどう言う事だ!
「リリー商会は絶対にディライト家の要望には応えません……」
「話を持って行く前から何を言っておるのだ!そんな手腕の商会なら是非取り立てて我が家に出入りさせればよかろう!新しい御用聞きも決まっておらんのだし!ちょうど良いではないか!」
「ですから、無理なのでございます!リリー商会の代表はアマリリー様でございます!!」
「な、なん……だと……?」
『人殺し』
そう言い捨てて、振り返る事もなく去っていった妹の名前を愕然とした気持ちで、ジュディウスは耳にした。
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