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海へ

54 焼き魚にしよう

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「ガラス工房を手配してくれ、マルス」

「良いですね」

「工房が出来るまで、リトの工房で作成して欲しい。みんな素晴らしい技術だ!」

 ギアナ様はやっぱり良いようにしてくれる。6人はギアナ様と契約し、この街で暮らす事になった。出身地がこの街で、リーダーだったジモンさんがイフリート様と特殊契約を結んだ。

「ガラスを作る工房でのみ、私の力を貸そう」

 つまりは一緒に出かけたり、何かと戦闘したりは無理という事だ。 

「水の中でないだけで気分が良い!」

 長年閉じ込められていたイフリート様は少しこの地で休んで行くようだ。

「特産品……しかもフォレストーン商会から……ガラス売り出し……うふふ、あはは!あはははは!!」

 マルスさんが嬉しそうに壊れていた。

「あーー!一体どれだけの売り上げになるのか!!腕がなりますぅーー!金庫!金庫室を新調しなければ!」

 鼻息も動悸も荒かった。

「し!か!も!このザック君の掘った穴を使えば!フォレストーン商会海底支店!売れる!売れますよー!人魚族にアイスクリームをお見舞いしてやりますよ!」

 確かにアイスは海の中じゃ食べられないもんね。

「しかも!ガラスの材料が手に入りやすい!」

 あの宮殿のそばは海流と関係で、材料の砂がたくさん寄っているらしい。だから元からガラス工房が設置されていたようだ。
 
「んふふふ!腕が鳴ります!」

 俺は知らなかったマルスさんの一面を見た。

「あいつ凄いだろ?安心して商会を譲れる」

 自分の事のようにギアナ様は目を細めて踊り出しそうなマルスさんを見ていた。

「スラムから拾って来たとは思えん」

 そうか、マルスさんも何か事情があったんだな。そして今はあんなに楽しそうだ。良かった、良い方向に動いている気がする。

「リトぉー!」

「ぶっ!」

 俺の顔面に人魚型小型爆弾が飛んできて張り付いた。

「遊んでー!遊んでー!」

「おいこら!リトは俺と話し中だ。ミミーと遊んでこい」

「はぁーい、旦那さまー」

 子供らしい身のこなしと変わり身の早さでジュールは屋敷の中を走り回っている。
 ずっと寂しいし、兄の真似をしなくちゃと思って大人しくしていた反動だろう。分身したか?!と思うほどあちこちから顔を出している。

 宮殿の方にもジュールを連れて行って、衛兵とメイドに見せた。

「えっ?!本当にジュールディアス様?!」

「嘘っ!本当だわ!」

「みんな……騙しててごめんなしゃい……」

 泣きながら謝ると逆にメイド達も頭を下げた。

「ジュール様だったなんて!!私達はてっきりダルタン様だと!」

「すいません!1人にさせてしまった!寂しかったでしょう?!ジュール様!」

 わっと皆んなに囲まれて、一瞬キョトンとしたが、わあわあ泣き出した。
 ジュールは皆んなから可愛がられているようだった。

「そのダルタンって言うのが今回の騒動の発端だな。焼き魚にしよう」

 ギアナ様の目が本気だったので、その場にいた全員が頭の先から尻尾までガタガタと震えた。

 俺、人魚の丸焼きは食べたくないです!!
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