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海へ
49 お兄ちゃんは許しません!
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どうしても、どうしても気になってしまったんだ。だから足が止まってしまった。あの顔は……あの表情は。
待って!おいていかないで!
「わあ!」
「捕まえた!」
冷たい手に捕まった。あの人だ。青い髪に金の瞳。すごく怒っている。これだけ近いと耳栓をしていても何を言っているか分かってしまうし、声も聞こえる。
「僕から!僕の宮殿から逃げるなんて!許さない!許さないんだから!」
俺は言い返した。きっと言い返せる!だって俺は長男だもの!
「あんな風に無理やり連れて来られたら誰だって逃げたくなる!逃げるのは当たり前だ!」
大きい声で叫んでやった!俺の声の大きさにびっくりしたのか、びくっと身をすくませて手を離した。
「だって……だって……」
やっぱり間違いない。この人は……この子は……。
「誰も……来てくれないんだもん……うわあああああああん!!!」
大声で泣きだした。途端にその長身が縮み始めて、手足が短くなる。顔が丸みを帯びて、瞳が大きい6.7歳の子供の姿になった。ああ、やっぱり。俺の弟たちより小さいや。
見たことがある表情だったんだ。男の子が頑張って我慢してる顔、それだった。お母様がリンにかかりっきり、カレンがシュルと遊びに行って家にいなかった。たった一人で家に残っていたザザがこんな顔をしていた。
ただいま、と扉を開けたら涙目で振り向いたけれど、すぐにぬぐって何でもない風をしていたっけ。寂しくて悲しくて、でも平気なふりをしているそんな顔。その後ザザを抱きしめたらワンワン泣き出した。
「でも ダメなものはだめっ‼」
俺はしっかり叱りつけた!お兄ちゃんは許しませんっ!
「うわぁーーーーごめんなさいいいーーー!」
俺の膝の上に突っ伏して、大声で泣いている。俺は耳栓を外した。
「ねえ君、名前は?」
「ジュールディアス……」
「ジュールはどうして人間を捕まえて来て、ガラスを作らせてたの?」
「僕の宮殿がきれいになったら……みんな来てくれると思ったの……」
ぐずぐず、ぐずぐず。鼻水を垂らしながらジュールは訴えた。やっぱり子供の考えだった。持っていたハンカチで鼻を拭いてやる。
でも、この子なりに頑張って考えたんだろう。どうやったら、みんなが見てくれるか、どうやったら……1人でいなくて済むか。
「どうして大人の格好をしていたの?」
「お兄様に……お願いされたの……お兄様と交代したの……そしたら、1人なの……お魚しか僕の言う事聞いてくれなくて……寂しかったの。うわぁあん!」
何か事情がありそう。
「1人でトンネルを来たの?帰れる?」
「帰りたくない……リト、一緒にいて……」
うーーーん!小さな子をこんな所で置いていく訳には行かないけど、戻る訳にも行かない。しょうがない!
「一緒に行こうか」
「リト!」
ジュールの靴はもう体に合わない。20歳くらいの姿だったジュールは縮んで今や7.8歳。ぶかぶかだ。これじゃあ歩けないよね。
「はい、おいで」
「?」
背中を向けると、おんぶが分からなかったみたい。
「つかまって」
恐る恐る伸ばして来た手を取って、背中に担ぎあげる。
「ゆっくり行くからね?」
「!うん!」
ジュールは背中でもにょもにょしばらく動いていたけど、静かになってしまった。これは寝ちゃったやつだ。俺、知ってる。
「おんぶしたままいけると良いけど」
俺はトンネルを進んだ。明かりは幸いジュールが持ってきたものがあったので道は見えた。どうしようもなかったら、サラやんに頼むつもりだった。
ジュールに一体何があったのか……。分からないけど、このままじゃダメだ。
俺の長男魂に火がついてしまった!
待って!おいていかないで!
「わあ!」
「捕まえた!」
冷たい手に捕まった。あの人だ。青い髪に金の瞳。すごく怒っている。これだけ近いと耳栓をしていても何を言っているか分かってしまうし、声も聞こえる。
「僕から!僕の宮殿から逃げるなんて!許さない!許さないんだから!」
俺は言い返した。きっと言い返せる!だって俺は長男だもの!
「あんな風に無理やり連れて来られたら誰だって逃げたくなる!逃げるのは当たり前だ!」
大きい声で叫んでやった!俺の声の大きさにびっくりしたのか、びくっと身をすくませて手を離した。
「だって……だって……」
やっぱり間違いない。この人は……この子は……。
「誰も……来てくれないんだもん……うわあああああああん!!!」
大声で泣きだした。途端にその長身が縮み始めて、手足が短くなる。顔が丸みを帯びて、瞳が大きい6.7歳の子供の姿になった。ああ、やっぱり。俺の弟たちより小さいや。
見たことがある表情だったんだ。男の子が頑張って我慢してる顔、それだった。お母様がリンにかかりっきり、カレンがシュルと遊びに行って家にいなかった。たった一人で家に残っていたザザがこんな顔をしていた。
ただいま、と扉を開けたら涙目で振り向いたけれど、すぐにぬぐって何でもない風をしていたっけ。寂しくて悲しくて、でも平気なふりをしているそんな顔。その後ザザを抱きしめたらワンワン泣き出した。
「でも ダメなものはだめっ‼」
俺はしっかり叱りつけた!お兄ちゃんは許しませんっ!
「うわぁーーーーごめんなさいいいーーー!」
俺の膝の上に突っ伏して、大声で泣いている。俺は耳栓を外した。
「ねえ君、名前は?」
「ジュールディアス……」
「ジュールはどうして人間を捕まえて来て、ガラスを作らせてたの?」
「僕の宮殿がきれいになったら……みんな来てくれると思ったの……」
ぐずぐず、ぐずぐず。鼻水を垂らしながらジュールは訴えた。やっぱり子供の考えだった。持っていたハンカチで鼻を拭いてやる。
でも、この子なりに頑張って考えたんだろう。どうやったら、みんなが見てくれるか、どうやったら……1人でいなくて済むか。
「どうして大人の格好をしていたの?」
「お兄様に……お願いされたの……お兄様と交代したの……そしたら、1人なの……お魚しか僕の言う事聞いてくれなくて……寂しかったの。うわぁあん!」
何か事情がありそう。
「1人でトンネルを来たの?帰れる?」
「帰りたくない……リト、一緒にいて……」
うーーーん!小さな子をこんな所で置いていく訳には行かないけど、戻る訳にも行かない。しょうがない!
「一緒に行こうか」
「リト!」
ジュールの靴はもう体に合わない。20歳くらいの姿だったジュールは縮んで今や7.8歳。ぶかぶかだ。これじゃあ歩けないよね。
「はい、おいで」
「?」
背中を向けると、おんぶが分からなかったみたい。
「つかまって」
恐る恐る伸ばして来た手を取って、背中に担ぎあげる。
「ゆっくり行くからね?」
「!うん!」
ジュールは背中でもにょもにょしばらく動いていたけど、静かになってしまった。これは寝ちゃったやつだ。俺、知ってる。
「おんぶしたままいけると良いけど」
俺はトンネルを進んだ。明かりは幸いジュールが持ってきたものがあったので道は見えた。どうしようもなかったら、サラやんに頼むつもりだった。
ジュールに一体何があったのか……。分からないけど、このままじゃダメだ。
俺の長男魂に火がついてしまった!
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