33 / 117
虎
33 俺、やらかした?
しおりを挟む
手に持っていたそれをポロリと落としてしまった。
あ!割れちゃう!
「よっ」
上手にギアナ様が空中で捕まえてくれた。良かった!ひとまず、胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます」
「リト」
「はい。何ですか??」
「色々聞きたい事があるんだが、良いかな?」
ん?何だろう??そして俺は周りを見回す。辺りはとっぷり日が暮れて真っ暗。
お屋敷の方から何十人も皆んながこっちを見ている。
「あ、あれ??」
お腹が急にぐーーーーっと良い音を立てた。
「まずは、何か食べないとだな」
「はいぃぃ……」
これは恥ずかしい……。食堂でパンとスープを貰う。ああ!美味しい!俺ってばどんだけ集中してやってたんだ……恥ずかしい!そしていつから見られてたんだろう!
「リト、まずこれだが虎で良いんだな?しかも白いから俺だな?」
えっ!1番最初そこなの?!まずそこなの?!と、心の中でツッコミを入れてから答えた。
「え、あ、はい……そのつもりです……」
座って両足を前に伸ばした姿の白い虎……のつもりですが、ころんと丸く可愛らしくなってしまった。
「俺が貰っていいんだな?!」
「え!あ、ごめんなさい!書類を押さえるのにちょうど良いかと思ったんですが、あまり上手に出来なくて……!別の物に作り変えますね!!」
「駄目だ!寄越せ!」
「いえっ!壊して別の物に!」
「俺のだ!壊すな!!!」
「いえいえ!」
「あのーーー」
言い合っている俺たちの間に執事さんがニョキっと顔を出した。
「あのグラスについて聞きたい者がたくさんおるのですが……」
「あ!そうだった。どうですか?使えそうですか??怪我してから初めてやったので大変でした!」
テーブルの上に10脚のグラスが乗っている。うん、大きさも形もなかなか揃ってまあまあの出来だ。
「使えそうも何も……こんな美しいグラス……使っていいのか?」
ギアナ様が1つ手に取っている。そんなに見ちゃ作りが甘いところが判っちゃう!
「えっ!やっぱりダメでした?!うーん、ごめんなさい!なんとか使い物にならないかと思ったんですが……!手の怪我ってやっぱり響きますね。もう少し良くなればもうちょっと良い物が出来ると思うんです」
「これ以上良い物を作ってどうする?!国宝にする気かーーー!」
「うわーー!ごめんなさいー!今すぐ割って作り直してきますーーー!」
「割るなーー!!」
「だまらっしゃいっ!!」
「「ひゃっ!」」
この執事さん、こんな大きな声出たんだ……びっくりした!こほん、咳払いを一つして、執事さんは喋りだす。
「リトさん、まずこのグラスは素晴らしいです。我が家で使ってよろしいですか?」
「ミミーが壊した物の代わりになればと思ったので……」
ふむ。執事さんはグラスを一つ持ち上げる。
「透明度が段違いですね。澄んだ水の様に美しい。そしてこの薄さ……リトさん、あなたは一体何者なんですか?」
「え?ただの木こりの息子ですが……」
執事さんとギアナ様は顔を見合わせてたけど、本当に木こりの息子だしなあ。
「ま、まあ。このグラスは使ってもよろしいのですね?」
「使えますか?!良かった!どうぞよろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げると、向こうからミミーが走って来た。
「リトさーーーん!ありがとうぉぉ!!私!私ぃ!!とんでもないことをしたってえ!!!どうしようかと、どうしようかとぉ!!」
「えへへ、俺の趣味が役に立って良かったよ。でももう壊さないでね」
「わかったー!ありがとう!リトさん!」
涙と鼻水にまみれたミミーは、先輩に付き添われて帰って行った。良かった良かった!
「一件落着!」
「いや待て、リト」
ギアナ様に止められた。
「まだサラマンダーは良い。なんだ?他に風と土の精霊もいなかったか?」
「ええ、ぴゅーやんにザックですね。さっきのガラスを白くする時に手伝ってくれます」
いい奴らですよ!
「三系統の精霊と契約しているのか……どうなってるんだ?リト、お前は大魔導師なのか?」
「?だから俺は木こりの息子ですってば……」
ギアナ様は変な所で人の話を聞いてないなぁ!
「いや!火の精霊と契約しているだけでも凄いのに、風と土もとはあり得ないぞ!」
「契約ってそんな凄いことしてないですよ。ちょっと手伝って貰っているだけですよ」
精霊達は遊び疲れたのかもう姿を消し寝ている。そんな自由な仲なんだよ!
「いや、しかし……」
「そ、そんなに変ですか……?」
お、俺って異常だったのかな….山の中暮らしで比べる人とかいなかったから、これくらい割と大丈夫かと思ってたよ!
「ご、ごめんなさい……俺、山の中で暮らしてて、普通が分かってなかったみたいです……もうしないので怒らないで下さい……」
やってしまった。俺の常識の無さがこんなところで……。あれ?もしかして俺嫌われた?あっ……どうしよう……。
「お、俺!もう寝ますーーーー!」
とりあえず走って逃げた。色々やらかしすぎて自分が恥ずかしい!
あ!割れちゃう!
「よっ」
上手にギアナ様が空中で捕まえてくれた。良かった!ひとまず、胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます」
「リト」
「はい。何ですか??」
「色々聞きたい事があるんだが、良いかな?」
ん?何だろう??そして俺は周りを見回す。辺りはとっぷり日が暮れて真っ暗。
お屋敷の方から何十人も皆んながこっちを見ている。
「あ、あれ??」
お腹が急にぐーーーーっと良い音を立てた。
「まずは、何か食べないとだな」
「はいぃぃ……」
これは恥ずかしい……。食堂でパンとスープを貰う。ああ!美味しい!俺ってばどんだけ集中してやってたんだ……恥ずかしい!そしていつから見られてたんだろう!
「リト、まずこれだが虎で良いんだな?しかも白いから俺だな?」
えっ!1番最初そこなの?!まずそこなの?!と、心の中でツッコミを入れてから答えた。
「え、あ、はい……そのつもりです……」
座って両足を前に伸ばした姿の白い虎……のつもりですが、ころんと丸く可愛らしくなってしまった。
「俺が貰っていいんだな?!」
「え!あ、ごめんなさい!書類を押さえるのにちょうど良いかと思ったんですが、あまり上手に出来なくて……!別の物に作り変えますね!!」
「駄目だ!寄越せ!」
「いえっ!壊して別の物に!」
「俺のだ!壊すな!!!」
「いえいえ!」
「あのーーー」
言い合っている俺たちの間に執事さんがニョキっと顔を出した。
「あのグラスについて聞きたい者がたくさんおるのですが……」
「あ!そうだった。どうですか?使えそうですか??怪我してから初めてやったので大変でした!」
テーブルの上に10脚のグラスが乗っている。うん、大きさも形もなかなか揃ってまあまあの出来だ。
「使えそうも何も……こんな美しいグラス……使っていいのか?」
ギアナ様が1つ手に取っている。そんなに見ちゃ作りが甘いところが判っちゃう!
「えっ!やっぱりダメでした?!うーん、ごめんなさい!なんとか使い物にならないかと思ったんですが……!手の怪我ってやっぱり響きますね。もう少し良くなればもうちょっと良い物が出来ると思うんです」
「これ以上良い物を作ってどうする?!国宝にする気かーーー!」
「うわーー!ごめんなさいー!今すぐ割って作り直してきますーーー!」
「割るなーー!!」
「だまらっしゃいっ!!」
「「ひゃっ!」」
この執事さん、こんな大きな声出たんだ……びっくりした!こほん、咳払いを一つして、執事さんは喋りだす。
「リトさん、まずこのグラスは素晴らしいです。我が家で使ってよろしいですか?」
「ミミーが壊した物の代わりになればと思ったので……」
ふむ。執事さんはグラスを一つ持ち上げる。
「透明度が段違いですね。澄んだ水の様に美しい。そしてこの薄さ……リトさん、あなたは一体何者なんですか?」
「え?ただの木こりの息子ですが……」
執事さんとギアナ様は顔を見合わせてたけど、本当に木こりの息子だしなあ。
「ま、まあ。このグラスは使ってもよろしいのですね?」
「使えますか?!良かった!どうぞよろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げると、向こうからミミーが走って来た。
「リトさーーーん!ありがとうぉぉ!!私!私ぃ!!とんでもないことをしたってえ!!!どうしようかと、どうしようかとぉ!!」
「えへへ、俺の趣味が役に立って良かったよ。でももう壊さないでね」
「わかったー!ありがとう!リトさん!」
涙と鼻水にまみれたミミーは、先輩に付き添われて帰って行った。良かった良かった!
「一件落着!」
「いや待て、リト」
ギアナ様に止められた。
「まだサラマンダーは良い。なんだ?他に風と土の精霊もいなかったか?」
「ええ、ぴゅーやんにザックですね。さっきのガラスを白くする時に手伝ってくれます」
いい奴らですよ!
「三系統の精霊と契約しているのか……どうなってるんだ?リト、お前は大魔導師なのか?」
「?だから俺は木こりの息子ですってば……」
ギアナ様は変な所で人の話を聞いてないなぁ!
「いや!火の精霊と契約しているだけでも凄いのに、風と土もとはあり得ないぞ!」
「契約ってそんな凄いことしてないですよ。ちょっと手伝って貰っているだけですよ」
精霊達は遊び疲れたのかもう姿を消し寝ている。そんな自由な仲なんだよ!
「いや、しかし……」
「そ、そんなに変ですか……?」
お、俺って異常だったのかな….山の中暮らしで比べる人とかいなかったから、これくらい割と大丈夫かと思ってたよ!
「ご、ごめんなさい……俺、山の中で暮らしてて、普通が分かってなかったみたいです……もうしないので怒らないで下さい……」
やってしまった。俺の常識の無さがこんなところで……。あれ?もしかして俺嫌われた?あっ……どうしよう……。
「お、俺!もう寝ますーーーー!」
とりあえず走って逃げた。色々やらかしすぎて自分が恥ずかしい!
22
お気に入りに追加
1,257
あなたにおすすめの小説
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
激レア能力の所持がバレたら監禁なので、バレないように生きたいと思います
森野いつき
BL
■BL大賞に応募中。よかったら投票お願いします。
突然異世界へ転移した20代社畜の鈴木晶馬(すずき しょうま)は、転移先でダンジョンの攻略を余儀なくされる。
戸惑いながらも、鈴木は無理ゲーダンジョンを運良く攻略し、報酬として能力をいくつか手に入れる。
しかし手に入れた能力のひとつは、世界が求めているとんでもない能力のひとつだった。
・総愛され気味
・誰endになるか言及できません。
・どんでん返し系かも
・甘いえろはない(後半)
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
腐男子ですが、お気に入りのBL小説に転移してしまいました
くるむ
BL
芹沢真紀(せりざわまさき)は、大の読書好き(ただし読むのはBLのみ)。
特にお気に入りなのは、『男なのに彼氏が出来ました』だ。
毎日毎日それを舐めるように読み、そして必ず寝る前には自分もその小説の中に入り込み妄想を繰り広げるのが日課だった。
そんなある日、朝目覚めたら世界は一変していて……。
無自覚な腐男子が、小説内一番のイケてる男子に溺愛されるお話し♡
天涯孤独な天才科学者、憧れの異世界ゲートを開発して騎士団長に溺愛される。
竜鳴躍
BL
年下イケメン騎士団長×自力で異世界に行く系天然不遇美人天才科学者のはわはわラブ。
天涯孤独な天才科学者・須藤嵐は子どもの頃から憧れた異世界に行くため、別次元を開くゲートを開発した。
チートなし、チート級の頭脳はあり!?実は美人らしい主人公は保護した騎士団長に溺愛される。
兄上の五番目の花嫁に選ばれたので尻を差し出します
月歌(ツキウタ)
BL
今日は魔王である兄上が、花嫁たちを選ぶ日。魔樹の華鏡に次々と美しい女性が映し出される。選ばれたのは五人。だけど、そのなかに僕の姿があるのだけれど・・何事?
☆表紙絵
AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる