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俺
14 俺達やばいんだって?
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「お母様に会いたいのですが!」
「アマリリー様は現在忙しく….」
嘘だ。すぐ分かった。あの最初の日からもう1週間、お母様とリンに会えない。あの後お母様とリン、俺とカレン、ザザ、シュルに分けられた。風呂と着替えを貰ったまでは良かったが、メイドさんに阻まれ、お母様に会えなくなった。
食事も何かと理由をつけられて別にされる。
勝手知らない他人の屋敷だ。どこになにがあるか分からない。
「ぴゅーやん、探せる?」
みんなが寝た後、風の精霊のぴゅーやんにお願いしてみると、うーん、と難しそうな顔をした。
ぴゅーやんは羽根の生えた妖精のような姿で俺に教えてくれる。
「リト、この家おれ好きじゃない。どんよりしてて空気が汚いんだ。山に帰りたいな」
「あーなんかそれ分かる!」
「だろ?で、澱んでるからあんまり探せないんだ」
「そっか……」
「あ、でも探してみっから!」
無理しないでね、と言うと大丈夫だぜ!と飛んで行った。きっと疲れてすぐ帰って来るだろう。
精霊に好かれていない家なんだな……。サラやんもザックも出てきたがらない。早く爺ちゃまの家に行きたいな。
朝起きると、メイドさんが朝の支度を手伝ってくれる。顔を洗って、服を着替えるが、そろそろザザとシュルは限界だ。
「母さんどこ?」「リンは?早く会わせて」
メイドを近寄らせなくなった。
「俺もおかしいと思います。お母様とリンに会わせてください」
「旦那様からのご指示です」
それしか言わない。
「兄ちゃん」「兄ちゃん!」「お兄様」
切れるよ?兄弟を守る為なら、兄は凄いんだからね?
「あまり、俺達を舐めないで!」
メイドが伸ばして来た手の先に、炎が踊る。
リト、限界や!もう暴れてまおう!
サラやんの意識が伝わって来た。
「みんな、サラやんが怒ってる!お母様を探そう」
3人は頷き、出るなと言われた扉から駆け出した。
「きゃーー!誰か!誰か!おぼっちゃま達が逃げました!」
逃げましたって言ったか?!俺達は捕まっていたのか?!
「みんな、この屋敷から逃げよう」
「お母様は!?」
走りながらカレンが心配そうに聞いてくる。
「俺が後から迎えに来る。カレンとザザとシュルを先に逃した方が早く動けるの、分かるだろ?」
足手まといだと言われて、ザザとシュルが悔しそうな顔をする。でも2人ともわかっている。唇を噛み締めてこくりとうなずいた。
俺たちが逃げ出すのは、ある程度予想済みだったのか、行手には衛兵が待ち構えていたが、サラやんの炎に驚いている隙に走り抜ける。
「ぴゅーやん!」
風の精霊にお願いして、4人で窓から飛び出す。
2階の高さからだったが、ぴゅーやんのアシストで、きれいに着々とした。
そのまま走り抜け、屋敷の塀はザックが壊れている所を見つけてくれたので抜け出ることが出来た。
俺達は走る。まず追っ手をまかなければ。
「良いか、みんなよく聞いて」
俺は3人を集める。
「南の爺ちゃまの家を目指すんだ。爺ちゃまの名前はルシリア伯爵。シュリとアマリリーの子供と言えば分かってくれる。……カレンとザザは母さんそっくりだし、シュルは父さんそっくりだから、顔を見ただけで信じてくれると思う」
カレンにお金を握らせて、必要な物を少しだけ詰めたバッグをアイテムボックスから取り出した。
「必ず後で合流する、良いね。母さんとリンも連れて行く」
こくり、カレンは頷いた。
「爺ちゃまは絶対大丈夫だ。爺ちゃまの家で会おう!」
3人を置いて俺は馬車乗り場と逆の山のほうに走り出した。
「こっちだ!」「追え!」
そんな声が聞こえる。多分追っ手は俺を追ってくる。何故なら、俺の指に王子からつけられた婚約指輪がはまっているからだ。
「あの子が居れば、王家との繋がりが……」
ぴゅーやんがおじさんと誰かが話していたのを聞いた。
「閉じ込めて、ルシリアには渡すな」
「精霊も使えるようだ。だから王子も……」
「兄弟も全てきれいな顔をしている。婚約者を探さねば、我が家の繁栄の為に」
頭が痛くなった。俺たちはお母様の実家ディライト家にお世話になる予定はない。なのに、なんでそこんちの子供みたいになっているんだ?
それに俺は王子様と結婚なんてしないし!普通に女の子と結婚して、平民として暮らす予定だ。
ついでに学園も行く気はない。カレンの勉強が捗るように、一緒にやっていただけ。
爺ちゃまの家で俺は働くつもりだ。爺ちゃまが硝子を売る場所を探して来てくれるはずだからね!
……んまあ、俺たちを追いかけている屋敷の人は、最悪オレを捕まえれば良いはずだ。
俺とお母様さえ押さえておけば、他の子はおびき出せるって思ってるだろうし。
だから俺はどんどん逃げた。街を走り抜け、山のほうに。知らない山だったけど、山は得意だしな!
「いたか!」「いねぇ!」「チョロチョロ逃げやがって!」
追って来た男は5人。あんまりに俺が捕まらないのでイライラしている。剣を抜いてる奴もいる……怖いな……。
俺はとうとう岩場に追い詰められたが、ザックは石を投げるし、サラやんは炎で威嚇してくれる。ぴゅーやんも風で砂を任か巻き上げて助けてくれる。
抵抗を続ける俺に男達はブチ切れた。
「もう良い!例の指輪だけ持って帰れば良いんだろう!!」
本気で斬りかかられると一瞬だった。
「あう……」
ざっくり……肩から、胸にかけて一撃だった。痛みで意識が朦朧とする。斬られた所が熱い。
死にたくない……おれが死んだらみんなどうなるの?
「この指輪、取れないぜ!」
「なら、切ってしまえ!」
「……ひぅ……!」
痛い痛い痛い……もう何も分からなかった。
お母様、カレン、ザザ、シュル、リン……俺、死にたくないよ……。
「アマリリー様は現在忙しく….」
嘘だ。すぐ分かった。あの最初の日からもう1週間、お母様とリンに会えない。あの後お母様とリン、俺とカレン、ザザ、シュルに分けられた。風呂と着替えを貰ったまでは良かったが、メイドさんに阻まれ、お母様に会えなくなった。
食事も何かと理由をつけられて別にされる。
勝手知らない他人の屋敷だ。どこになにがあるか分からない。
「ぴゅーやん、探せる?」
みんなが寝た後、風の精霊のぴゅーやんにお願いしてみると、うーん、と難しそうな顔をした。
ぴゅーやんは羽根の生えた妖精のような姿で俺に教えてくれる。
「リト、この家おれ好きじゃない。どんよりしてて空気が汚いんだ。山に帰りたいな」
「あーなんかそれ分かる!」
「だろ?で、澱んでるからあんまり探せないんだ」
「そっか……」
「あ、でも探してみっから!」
無理しないでね、と言うと大丈夫だぜ!と飛んで行った。きっと疲れてすぐ帰って来るだろう。
精霊に好かれていない家なんだな……。サラやんもザックも出てきたがらない。早く爺ちゃまの家に行きたいな。
朝起きると、メイドさんが朝の支度を手伝ってくれる。顔を洗って、服を着替えるが、そろそろザザとシュルは限界だ。
「母さんどこ?」「リンは?早く会わせて」
メイドを近寄らせなくなった。
「俺もおかしいと思います。お母様とリンに会わせてください」
「旦那様からのご指示です」
それしか言わない。
「兄ちゃん」「兄ちゃん!」「お兄様」
切れるよ?兄弟を守る為なら、兄は凄いんだからね?
「あまり、俺達を舐めないで!」
メイドが伸ばして来た手の先に、炎が踊る。
リト、限界や!もう暴れてまおう!
サラやんの意識が伝わって来た。
「みんな、サラやんが怒ってる!お母様を探そう」
3人は頷き、出るなと言われた扉から駆け出した。
「きゃーー!誰か!誰か!おぼっちゃま達が逃げました!」
逃げましたって言ったか?!俺達は捕まっていたのか?!
「みんな、この屋敷から逃げよう」
「お母様は!?」
走りながらカレンが心配そうに聞いてくる。
「俺が後から迎えに来る。カレンとザザとシュルを先に逃した方が早く動けるの、分かるだろ?」
足手まといだと言われて、ザザとシュルが悔しそうな顔をする。でも2人ともわかっている。唇を噛み締めてこくりとうなずいた。
俺たちが逃げ出すのは、ある程度予想済みだったのか、行手には衛兵が待ち構えていたが、サラやんの炎に驚いている隙に走り抜ける。
「ぴゅーやん!」
風の精霊にお願いして、4人で窓から飛び出す。
2階の高さからだったが、ぴゅーやんのアシストで、きれいに着々とした。
そのまま走り抜け、屋敷の塀はザックが壊れている所を見つけてくれたので抜け出ることが出来た。
俺達は走る。まず追っ手をまかなければ。
「良いか、みんなよく聞いて」
俺は3人を集める。
「南の爺ちゃまの家を目指すんだ。爺ちゃまの名前はルシリア伯爵。シュリとアマリリーの子供と言えば分かってくれる。……カレンとザザは母さんそっくりだし、シュルは父さんそっくりだから、顔を見ただけで信じてくれると思う」
カレンにお金を握らせて、必要な物を少しだけ詰めたバッグをアイテムボックスから取り出した。
「必ず後で合流する、良いね。母さんとリンも連れて行く」
こくり、カレンは頷いた。
「爺ちゃまは絶対大丈夫だ。爺ちゃまの家で会おう!」
3人を置いて俺は馬車乗り場と逆の山のほうに走り出した。
「こっちだ!」「追え!」
そんな声が聞こえる。多分追っ手は俺を追ってくる。何故なら、俺の指に王子からつけられた婚約指輪がはまっているからだ。
「あの子が居れば、王家との繋がりが……」
ぴゅーやんがおじさんと誰かが話していたのを聞いた。
「閉じ込めて、ルシリアには渡すな」
「精霊も使えるようだ。だから王子も……」
「兄弟も全てきれいな顔をしている。婚約者を探さねば、我が家の繁栄の為に」
頭が痛くなった。俺たちはお母様の実家ディライト家にお世話になる予定はない。なのに、なんでそこんちの子供みたいになっているんだ?
それに俺は王子様と結婚なんてしないし!普通に女の子と結婚して、平民として暮らす予定だ。
ついでに学園も行く気はない。カレンの勉強が捗るように、一緒にやっていただけ。
爺ちゃまの家で俺は働くつもりだ。爺ちゃまが硝子を売る場所を探して来てくれるはずだからね!
……んまあ、俺たちを追いかけている屋敷の人は、最悪オレを捕まえれば良いはずだ。
俺とお母様さえ押さえておけば、他の子はおびき出せるって思ってるだろうし。
だから俺はどんどん逃げた。街を走り抜け、山のほうに。知らない山だったけど、山は得意だしな!
「いたか!」「いねぇ!」「チョロチョロ逃げやがって!」
追って来た男は5人。あんまりに俺が捕まらないのでイライラしている。剣を抜いてる奴もいる……怖いな……。
俺はとうとう岩場に追い詰められたが、ザックは石を投げるし、サラやんは炎で威嚇してくれる。ぴゅーやんも風で砂を任か巻き上げて助けてくれる。
抵抗を続ける俺に男達はブチ切れた。
「もう良い!例の指輪だけ持って帰れば良いんだろう!!」
本気で斬りかかられると一瞬だった。
「あう……」
ざっくり……肩から、胸にかけて一撃だった。痛みで意識が朦朧とする。斬られた所が熱い。
死にたくない……おれが死んだらみんなどうなるの?
「この指輪、取れないぜ!」
「なら、切ってしまえ!」
「……ひぅ……!」
痛い痛い痛い……もう何も分からなかった。
お母様、カレン、ザザ、シュル、リン……俺、死にたくないよ……。
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