22 / 23
お芋の勇者
22 勇者の屋台
しおりを挟む
「ちゃうべー!おらはお芋屋さんでねーべ。勇者だっぺよー可愛いねぇちゃんがたー!芋食うか?」
「食べるー!」
魔王様のお姉様が窓から手を振っている。いやはやお芋屋さんはどこでも女性の心を揺さぶるものですね!
「では門を開けますから、屋台ごと中へどうぞ」
勝手口から屋台は入れないと判断した門番は中に戻ってスイッチを押す。魔導機に魔力が流れて、無駄に大きくてでかい魔王城の大門がゴゴゴ……と地鳴りを立てながら開いた。
「ごゆっくり~」
「助かったっぺよーありがとなー」
コトコトと勇者は焼き芋屋台を引いて魔王城に侵入を果たした。
「きゃー!焼き芋よーーー!」
魔王城に勤める女性という女性全てが集まった気がする。
「いっぺぇあるでおさねぇでくんろー。屋台はあっちいで火傷すたら可愛いおててが泣いてまうっぺよ!」
「お芋ちゃん優しいのね!」
紙袋にガサガサと大きなサツマイモを入れて手渡ししながら、お芋の勇者はぷくっと膨れた。
「おらの名前はお芋ちゃんでねえど?パーシヴァル・ポテテっていうんだど!」
「お芋じゃん」
「でも本人に言うでねぇ!」
「あははは!」
はふはふ、ほふほふ!と美味しそうに焼き芋を頬張るもお芋の勇者パーシヴァルの顔は浮かない。
「はーーどうすっぺなぁ。倒すべき魔王様もおらんし、しゃーねぇがら山に帰るべかなぁ?」
残念そうに呟くお芋屋さんにお姉様は言葉をかける。
「うーん、レディアルちゃんはケーキ屋さんだもんねぇ、いま魔王城には一の兄様しか居ないのよね。レディアルちゃんと比べたらあり得ないほど弱いけど、折角だから戦ってく?」
「はぁー記念になるべかなぁ?ちょっとお手合わせ願うかいなぁ?」
特別マッチが開催される事になった。
お茶を吹いたのは兄1である。
「待て!待て待て!何故私が勇者と戦わねばならん!」
「しょうがないでしょう?レディアルちゃんはケーキ屋さんから戻ってこないんだもん」
「2はどうした!」
2は2番目のカジノを経営しているヤツである。
「ショコラティエから戻ってないわよ」
「え……ずっと?」
こくり、と頷いたのは姉1である。
「鳥がこんな手紙を持ってきたけど無視してるわ」
ぺらりと一枚の紙切れを開くと中には
助けて
と、チョコレート塗れの文字が書いてある。
「……見なかった事にしよう」
「そうね」
救援の手紙をビリビリに割いて、燃やしてしまう。
「だから残ってるのは一の兄様しかいないのよ。折角だからボコボコにされなさいよ」
「折角ってなんですか、折角って!」
だがしかし、根が真面目な兄1は城の庭、パーシヴァルの前に立っていた。
「はぁ、貴方が勇者ですか、初めてまして」
「あんれまぁ~なんつー別嬪さんだべなぁ……おら、たまげてまったよお!」
「んんっ?!解析しづらい地方言語の使い手の方でしたか」
「ほげぇーめんこいだげてなく、頭っこさぁ賢いたぁ!はー!おら、ますます気に入っただあ!」
「え?」
今なんと?若干聞き取り辛いもこの勇者、気に入ったとか言ってませんでした?!
「ぜひども!結局を前提におづぎあいさせていただげませんかのう?」
「は?!」
待て、いや待て、お芋ちゃん!間違ってるぞ!この城にはたくさんの美しい女性がいるし、さっきまできゃいきゃいちやほや囲まれていたじゃないか!なのに、この芋は何を言ってるんだ?!
「食べるー!」
魔王様のお姉様が窓から手を振っている。いやはやお芋屋さんはどこでも女性の心を揺さぶるものですね!
「では門を開けますから、屋台ごと中へどうぞ」
勝手口から屋台は入れないと判断した門番は中に戻ってスイッチを押す。魔導機に魔力が流れて、無駄に大きくてでかい魔王城の大門がゴゴゴ……と地鳴りを立てながら開いた。
「ごゆっくり~」
「助かったっぺよーありがとなー」
コトコトと勇者は焼き芋屋台を引いて魔王城に侵入を果たした。
「きゃー!焼き芋よーーー!」
魔王城に勤める女性という女性全てが集まった気がする。
「いっぺぇあるでおさねぇでくんろー。屋台はあっちいで火傷すたら可愛いおててが泣いてまうっぺよ!」
「お芋ちゃん優しいのね!」
紙袋にガサガサと大きなサツマイモを入れて手渡ししながら、お芋の勇者はぷくっと膨れた。
「おらの名前はお芋ちゃんでねえど?パーシヴァル・ポテテっていうんだど!」
「お芋じゃん」
「でも本人に言うでねぇ!」
「あははは!」
はふはふ、ほふほふ!と美味しそうに焼き芋を頬張るもお芋の勇者パーシヴァルの顔は浮かない。
「はーーどうすっぺなぁ。倒すべき魔王様もおらんし、しゃーねぇがら山に帰るべかなぁ?」
残念そうに呟くお芋屋さんにお姉様は言葉をかける。
「うーん、レディアルちゃんはケーキ屋さんだもんねぇ、いま魔王城には一の兄様しか居ないのよね。レディアルちゃんと比べたらあり得ないほど弱いけど、折角だから戦ってく?」
「はぁー記念になるべかなぁ?ちょっとお手合わせ願うかいなぁ?」
特別マッチが開催される事になった。
お茶を吹いたのは兄1である。
「待て!待て待て!何故私が勇者と戦わねばならん!」
「しょうがないでしょう?レディアルちゃんはケーキ屋さんから戻ってこないんだもん」
「2はどうした!」
2は2番目のカジノを経営しているヤツである。
「ショコラティエから戻ってないわよ」
「え……ずっと?」
こくり、と頷いたのは姉1である。
「鳥がこんな手紙を持ってきたけど無視してるわ」
ぺらりと一枚の紙切れを開くと中には
助けて
と、チョコレート塗れの文字が書いてある。
「……見なかった事にしよう」
「そうね」
救援の手紙をビリビリに割いて、燃やしてしまう。
「だから残ってるのは一の兄様しかいないのよ。折角だからボコボコにされなさいよ」
「折角ってなんですか、折角って!」
だがしかし、根が真面目な兄1は城の庭、パーシヴァルの前に立っていた。
「はぁ、貴方が勇者ですか、初めてまして」
「あんれまぁ~なんつー別嬪さんだべなぁ……おら、たまげてまったよお!」
「んんっ?!解析しづらい地方言語の使い手の方でしたか」
「ほげぇーめんこいだげてなく、頭っこさぁ賢いたぁ!はー!おら、ますます気に入っただあ!」
「え?」
今なんと?若干聞き取り辛いもこの勇者、気に入ったとか言ってませんでした?!
「ぜひども!結局を前提におづぎあいさせていただげませんかのう?」
「は?!」
待て、いや待て、お芋ちゃん!間違ってるぞ!この城にはたくさんの美しい女性がいるし、さっきまできゃいきゃいちやほや囲まれていたじゃないか!なのに、この芋は何を言ってるんだ?!
1
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
【完結】神様はそれを無視できない
遊佐ミチル
BL
痩せぎすで片目眼帯。週三程度で働くのがせいっぱいの佐伯尚(29)は、誰が見ても人生詰んでいる青年だ。当然、恋人がいたことは無く、その手の経験も無い。
長年恨んできた相手に復讐することが唯一の生きがいだった。
住んでいたアパートの退去期限となる日を復讐決行日と決め、あと十日に迫ったある日、昨夜の記憶が無い状態で目覚める。
足は血だらけ。喉はカラカラ。コンビニのATMに出向くと爪に火を灯すように溜めてきた貯金はなぜか三桁。これでは復讐の武器購入や交通費だってままならない。
途方に暮れていると、昨夜尚を介抱したという浴衣姿の男が現れて、尚はこの男に江東区の月島にある橋の付近っで酔い潰れていて男に自宅に連れ帰ってもらい、キスまでねだったらしい。嘘だと言い張ると、男はその証拠をバッチリ録音していて、消して欲しいなら、尚の不幸を買い取らせろと言い始める。
男の名は時雨。
職業:不幸買い取りセンターという質屋の店主。
見た目:頭のおかしいイケメン。
彼曰く本物の神様らしい……。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
魔王様は俺のクラスメートでした
棚から現ナマ
BL
前世を憶えている主人公ミルは、チートもなくラノベのような世界で、ごく平凡に庭師見習いとして働いて暮らしていた。 ある日、なぜか魔王様に踏まれてしまったミルは、魔王様が前世のクラスメートだったことに気が付き、おもわず名前を呼んでしまう。 呼ばれた魔王様はミルを自分の王宮に連れ込んで……。 逃げたいミルと、どうしても手放せない魔王様の話し。もちろんハッピーエンド。
まるでおとぎ話
志生帆 海
BL
追い詰められて……もう、どうしたら……どこへ行けばいいのか分からない。
病弱な弟を抱えた僕は、怪しげなパーティーへと向かっている。
こちらは2018年5月Twitter上にて募集のあった『絵師様アンソロジー企画』参加作品の転載になります。1枚の絵師さまの絵に、参加者が短編を書きました。
15,000程度の短編になりますので、気軽にお楽しみいただければ嬉しいです。
愛する者の腕に抱かれ、獣は甘い声を上げる
すいかちゃん
BL
獣の血を受け継ぐ一族。人間のままでいるためには・・・。
第一章 「優しい兄達の腕に抱かれ、弟は初めての発情期を迎える」
一族の中でも獣の血が濃く残ってしまった颯真。一族から疎まれる存在でしかなかった弟を、兄の亜蘭と玖蘭は密かに連れ出し育てる。3人だけで暮らすなか、颯真は初めての発情期を迎える。亜蘭と玖蘭は、颯真が獣にならないようにその身体を抱き締め支配する。
2人のイケメン兄達が、とにかく弟を可愛がるという話です。
第二章「孤独に育った獣は、愛する男の腕に抱かれ甘く啼く」
獣の血が濃い護は、幼い頃から家族から離されて暮らしていた。世話係りをしていた柳沢が引退する事となり、代わりに彼の孫である誠司がやってくる。真面目で優しい誠司に、護は次第に心を開いていく。やがて、2人は恋人同士となったが・・・。
第三章「獣と化した幼馴染みに、青年は変わらぬ愛を注ぎ続ける」
幼馴染み同士の凛と夏陽。成長しても、ずっと一緒だった。凛に片思いしている事に気が付き、夏陽は思い切って告白。凛も同じ気持ちだと言ってくれた。
だが、成人式の数日前。夏陽は、凛から別れを告げられる。そして、凛の兄である靖から彼の中に獣の血が流れている事を知らされる。発情期を迎えた凛の元に向かえば、靖がいきなり夏陽を羽交い締めにする。
獣が攻めとなる話です。また、時代もかなり現代に近くなっています。
【完結】ワンコ系オメガの花嫁修行
古井重箱
BL
【あらすじ】アズリール(16)は、オメガ専用の花嫁学校に通うことになった。花嫁学校の教えは、「オメガはアルファに心を開くなかれ」「閨事では主導権を握るべし」といったもの。要するに、ツンデレがオメガの理想とされている。そんな折、アズリールは王太子レヴィウス(19)に恋をしてしまう。好きな人の前ではデレデレのワンコになり、好き好きオーラを放ってしまうアズリール。果たして、アズリールはツンデレオメガになれるのだろうか。そして王太子との恋の行方は——?【注記】インテリマッチョなアルファ王太子×ワンコ系オメガ。R18シーンには*をつけます。ムーンライトノベルズとアルファポリスに掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる