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お芋の勇者

22 勇者の屋台

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「ちゃうべー!おらはお芋屋さんでねーべ。勇者だっぺよー可愛いねぇちゃんがたー!芋食うか?」

「食べるー!」

 魔王様のお姉様が窓から手を振っている。いやはやお芋屋さんはどこでも女性の心を揺さぶるものですね!

「では門を開けますから、屋台ごと中へどうぞ」

 勝手口から屋台は入れないと判断した門番は中に戻ってスイッチを押す。魔導機に魔力が流れて、無駄に大きくてでかい魔王城の大門がゴゴゴ……と地鳴りを立てながら開いた。

「ごゆっくり~」

「助かったっぺよーありがとなー」

 コトコトと勇者は焼き芋屋台を引いて魔王城に侵入を果たした。


「きゃー!焼き芋よーーー!」

 魔王城に勤める女性という女性全てが集まった気がする。

「いっぺぇあるでおさねぇでくんろー。屋台はあっちいで火傷すたら可愛いおててが泣いてまうっぺよ!」

「お芋ちゃん優しいのね!」

 紙袋にガサガサと大きなサツマイモを入れて手渡ししながら、お芋の勇者はぷくっと膨れた。

「おらの名前はお芋ちゃんでねえど?パーシヴァル・ポテテっていうんだど!」

「お芋じゃん」

「でも本人に言うでねぇ!」

「あははは!」

 はふはふ、ほふほふ!と美味しそうに焼き芋を頬張るもお芋の勇者パーシヴァルの顔は浮かない。

「はーーどうすっぺなぁ。倒すべき魔王様もおらんし、しゃーねぇがら山に帰るべかなぁ?」

 残念そうに呟くお芋屋さんにお姉様は言葉をかける。

「うーん、レディアルちゃんはケーキ屋さんだもんねぇ、いま魔王城には一の兄様しか居ないのよね。レディアルちゃんと比べたらあり得ないほど弱いけど、折角だから戦ってく?」

「はぁー記念になるべかなぁ?ちょっとお手合わせ願うかいなぁ?」


 特別マッチが開催される事になった。



 お茶を吹いたのは兄1である。

「待て!待て待て!何故私が勇者と戦わねばならん!」

「しょうがないでしょう?レディアルちゃんはケーキ屋さんから戻ってこないんだもん」

「2はどうした!」

 2は2番目のカジノを経営しているヤツである。

「ショコラティエから戻ってないわよ」

「え……ずっと?」

 こくり、と頷いたのは姉1である。

「鳥がこんな手紙を持ってきたけど無視してるわ」

 ぺらりと一枚の紙切れを開くと中には

助けて 

 と、チョコレート塗れの文字が書いてある。

「……見なかった事にしよう」

「そうね」

 救援の手紙をビリビリに割いて、燃やしてしまう。

「だから残ってるのは一の兄様しかいないのよ。折角だからボコボコにされなさいよ」

「折角ってなんですか、折角って!」


 
 だがしかし、根が真面目な兄1は城の庭、パーシヴァルの前に立っていた。

「はぁ、貴方が勇者ですか、初めてまして」

「あんれまぁ~なんつー別嬪さんだべなぁ……おら、たまげてまったよお!」

「んんっ?!解析しづらい地方言語の使い手の方でしたか」

「ほげぇーめんこいだげてなく、頭っこさぁ賢いたぁ!はー!おら、ますます気に入っただあ!」

「え?」

 今なんと?若干聞き取り辛いもこの勇者、気に入ったとか言ってませんでした?!

「ぜひども!結局を前提におづぎあいさせていただげませんかのう?」

「は?!」

 待て、いや待て、お芋ちゃん!間違ってるぞ!この城にはたくさんの美しい女性がいるし、さっきまできゃいきゃいちやほや囲まれていたじゃないか!なのに、この芋は何を言ってるんだ?!


 
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