上 下
5 / 23
1 魔王マジ魔王!

5 魔王さまの兄上さま2.2

しおりを挟む
「あにう「レイ!レイじゃないか!良いところに!」」
「ごちゃごちゃいってねーで白金貨20枚出しやがれ!」

 
ここで流通している貨幣の説明をしよう。
銅貨   10円
鉄貨 100円
銀貨 1000円
金貨   1万円
白金貨 10万円

 くらいだと思って頂けるとありがたい。魔王さまのお兄さま2は、200万円の借金をこしらえたのです。

「あにう「分かってる!分かってるって言ってんだろー!俺はここのオーナーだ!逃げも隠れもしねぇ!」」
「じゃあ今すぐ出せー!」
 
 巨大カジノは兄上2が発案・運営している。それなのに大負けしたようだ。オーナーすら敗者になるカジノはある意味健全な運営をしているのかもしれない。
 ワルいけど。

「あにう「だーかーらー財布忘れたから取りに行くっつってんだろぉよ!聞こえてねーのか!」」
「信用できっか!何か担保でもなきゃ完全にバックレるやつだろ!」

「あにう「そこでじゃじゃーん!レイ君でっす!弟です!」」
「はぁ?何言って…」

 自分と債権者の男の間に、レディアルを引っ張り込む。

「あにう「見りゃ分かるだろ?俺たち似てるし!」」
「う、うん?確かに兄弟っぽいな。」

 髪の色はどちらも黒。瞳の色は赤いレディアルと黄色の兄上2、2番目の兄。ちなみにピーナツ兄は1番上だ。ついでに瞳は青い。信号機カラーである。

「あにう「レイ君を置いていく!担保の代わりだ!すぐ戻るから絶対変なことするんじゃねーぞ!」」
「変なことねぇ?」
「絶対だからな!戻るまでそこを動くんじゃねーぞ!」

 ビシィっと指を指して、兄上2は転移魔法で飛んで行った。

「あにう「ふーん?へぇ、ほぉ?」」

 残された男は品定めをするように魔王さまの顔を覗き込む。

 刈り込まれた茶色の短髪に底意地の悪そうな緑の目。顔の造形自体はそう悪くはないのだが、男の目と纏う雰囲気が腰を後ろに引かせる。

「まあ、しょうがない。こっちへ来いっ」
「え?ええええええ!」

抗議の声は

「あ?」
「ひぃ!」

2文字半とマーク二つで終了させられ、強引に腕を掴まれ歩かされた。

落ちたミントアイスはただ、溶けてゆくだけだった。





 レディアルは魔王さまである。魔族達に信仰された女神が決めた魔王である。
 だが、大声で怒鳴ったりマウント取ってくるような輩は苦手だった。だって怖いんだもの。

「こっちだ、モタモタすんな!」
「ひえ」

 この男について行きたくないと、レディアルは心の底から思っていたが、なかなかの腕っぷしの強さにあがらいきれなかった。
 男が借りたであろう宿の部屋の前まで連れてこられていた。

兄上はカジノの前で待てと言ったのに

そう反論は出来なかった。口を開こうとすると、

「ぁあん?」

怖い。何かあれば腕輪を外して本来の力を見せればいい。ただしこの周りはかなり壊れるだろう。
 街を壊したら怒られるだろうな。この高級宿屋とか、アイスクリームワゴンとか。

「ちょっと勇者くぅ~ん?何やってんのぉ?そんな美人の子連れ込んでぇ?」

 艶のありすぎる声が後ろからかかる。振り返れば真っ赤な髪の女が、男にしな垂れかかりながら立っていた。
 露出の高すぎる服だか、見れば職業は盗賊といったところだろう。男の方はどうみても魔術師です、と言わんばかりの黒いローブ姿だ。

「よぉ、お前ら。全く仲のよろしいことで!」

 口の端を上げてニヤリと笑う顔は完全なる悪役フェイス。ブルッと悪寒が走る。

「まあ、私たちは仲良くやっとくから、そっちはそっちで楽しんでよ」

「言われなくても」

 バーイと手を振り、廊下を挟み右と左の扉に分かれる。この男はどうやら、次に来た勇者らしい。そして仲間は盗賊と魔術師。3人パーティなんだ、いつ頃登城してくるんだろう。嫌だな、引き返してくれないかな、軽く現実逃避をするレディアルを引きずって部屋に入る。
 ガチャリと、後ろ手に鍵がかかる音がやけに大きく聞こえた。

 末っ子ゆえか、高すぎる能力値ゆえかで危機感の薄いレディアルでも、この状況はかなりまずいと気がつく。

あれ?よく知らない初対面の男に宿屋に連れ込まれた私?

大★正★解







しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜

みおな
恋愛
 学校帰りにいきなり眩い光に包まれて連れて来られたのは異世界でした。  王子はこんなちんちくりんは聖女ではないと言い放ち、私を王宮から追い出しました。  元の世界に帰る方法は、魔王の持つ帰還の指輪が必要と言われ、途方にくれた私の前に現れたのは、美形の魔王でした。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

[BL]王の独占、騎士の憂鬱

ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕 騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて… 王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい

魔王様は俺のクラスメートでした

棚から現ナマ
BL
前世を憶えている主人公ミルは、チートもなくラノベのような世界で、ごく平凡に庭師見習いとして働いて暮らしていた。 ある日、なぜか魔王様に踏まれてしまったミルは、魔王様が前世のクラスメートだったことに気が付き、おもわず名前を呼んでしまう。 呼ばれた魔王様はミルを自分の王宮に連れ込んで……。 逃げたいミルと、どうしても手放せない魔王様の話し。もちろんハッピーエンド。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

処理中です...