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40 楽しさ、秘密級!

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 休日明け、私はルンルン気分で学園へ出向いた。あんまりにいい気分だったので馬車もなんとか無事に乗れたわ。そう、月曜日は実家から学園へ。そして平日は寮で過ごして、週末に帰る、そんなスケジュールよ。

「不思議な感じがするな、妖精が見えるって」
「そうですか?でも音楽を奏でたりして楽しい感じにならないと出て来ませんし」

 お兄様は手を開いたり閉じたりしているけれど、何か体調がおかしいのかしら……私、余計なことをしちゃったのかしら?ちょっと心配だわ。

 校門の前で馬車を降りるとクレス様が忠犬のように待っていた。

「おはよう、アリシア嬢、エヴァン。ルストバーン家の夜会の事で貴族界は持ちきりだぞ?俺も見たかったなー」
「私、だろ。クレス。両親もアリシアもあの後すぐに回復したから、そのうちまたどこかの夜会で披露できるんじゃないかな?その時に来たらいい」
「次はお兄様も一緒よ?」
「へえ!凄いなあ、エヴァン」

 笑いながら2.3歩歩くと、校門から学園の玄関までの間にミオさんが立っていた。

「ミオさ……?」

 目が合うとミオさんはにこっと笑い、両手を広げている。あれは私の胸に飛び込んできなさいポーズかしら?

「ミオさん……?あっ!!」
 
 私はお兄様とクレス様を置いて、小走りにミオさんに駆け寄ってゆく。そして肩でトン、と小さく彼女にぶつかった。

「「きゃあ~」」
「「あらごめんなさい?こんな所にいるなんて目に入らなかったわ、平民ですものね」」
「「なんで、こんな……」」

 これ、ゲームの一幕の再現だ!本当は私がミオさんを転ばせて制服を埃だらけにするんだけれど、ミオさんは微動だにしなかったわね……でも転んだら痛いもの、それでおっけー!

「アリシア?急に走り出したら危ないぞ」
「アリシア嬢、転んじゃうよ!」

「ノー!クレス様もエヴァン様もそうじゃない!「何をしているんだ、アリシア!」よ!」
「え……」
「へ?」
「「大丈夫か、聖女ミオ……立てるかい」くらい言ってくださいよ!」
「いや、君、転んでないだろう?」
「雰囲気読んでよーーー!もういいけどっ」

 お兄様とクレス様はどうしてミオさんが怒るか分からないわよね、当たり前よね。でもミオさんが面白くて私はついくすくす笑ってしまった。

「ミオさん、ここで王太子殿下が出てくるのでは? 」

 ゲームでは王太子が聖女を助けるんだけれども、どうするのかしら?

「あ、それはカットで」

 カットなんだ!ますます面白いわ。

「こんな感じでしたよね、アリシア様」
「ええ!凄いわ、ミオさん。そんな感じだったわ」
「わーい!アリシア様に褒められちゃった~嬉しいな」

 ミオさんは笑ってくるりと一回りする、明るくて可愛い子だわ。

「ねえねえ、アリシア様。ブランシェ様の夜会で妖精を呼んだって本当ですか?私も見たかった!」
「そうみたい。今度皆で合奏をする時は是非ミオさんも来てね」
「ははー!ありがたき幸せ! 」

 胸に手を当てて、綺麗な角度でお辞儀をするミオさんは、クレス様より騎士らしい……。

「負けてるぞ、クレス」
「うお? マジで。ミオ嬢どこで習ったんだ!?」
「フフン、これが才能という奴ですわよ、クレス様」
「にゃ、にゃにおう~~~~! 」

 往来でそんなことをやっているとブランシェ様も現れて、注意されてしまった。恥ずかしいわ。

「アリシア、元気になってよかった。夜会では素晴らしかったわ。皆様大満足だったわ」
「私も嬉しいです、ブランシェ様。今度はミオさんとクレス様も見たいのだそうですわ」
「あら、ちゃっかりしてるわね。ふふ、次があれば招待状を出してあげましょう」
「やったあ~!ブランシェ様すてきー!」
「ルストバーン家の夜会の招待状なんて凄い……両親に自慢できるぞ!」
「マナーはしっかり学んでいらっしゃいね」

「「ぎゃっ」」

 私の学園生活はどんどん楽しくなってきた!

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