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23.俺、再び

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「私はしずかといいます」

 ……は?

「もしかして、あなたが有名な流れの鍛冶職人・しずかさんですか!?」

「はい、そうです」

 ?????? え?

「これから王都でお仕事ですか?」

「王宮に呼ばれましたので、向かうところです」

 そう話しているが、違う。俺が作ったしずかじゃない。
 服装も似ているが違う。
 見間違えるはずはない。だって俺の全キャラは、服装を含めて装備全部しずかで作ったんだからな。

 ぱっと見では分からないが、衣装も装備も全てにLady Sizkaの銘が入っている。
 しかし、なぜしずかの偽物がいるんだ? 偶然同じ名前の似た姿の鍛冶職人がいた? ありえない、それこそ限りなく0%だ。

 と、袖を引っ張られた。ん? リアだ。
 リアを見ると頬を膨らませて怒っている。

「ど、どうしたの?」

「ユーさん、あーゆー人が好みなの?」

 どうやら、偽物しずかをじっと見つめているのがお気に召さないらしい。

「違う違う、俺の知り合いの鍛冶職人と同じ名前だったから、ビックリしただけだよ」

「そうなの? 鍛冶屋さんと仲がいいの?」

「冒険者だからね。装備の修理は信頼できる人にお願いしたいし」

 ああ、とリアは納得してくれた。
 しかし、偽物しずかは腕は良い様だから普通に売り出せばいいのに、なぜ人の名を騙るかたるんだろう。

 それにしてもおかしいな、しずかではなくユグドラで有名になるつもりだったのに……どこでパーフェクツな計画に狂いが生じたのだろう。

 王都へ着くまで数回モンスターの襲撃はあったが、他には特に何もなかった。
 ただ夜寝る時に、商人が用意したテントは敷物の質が悪かったので、自前の二人用テントを使った。
 こっちの方が快適だ。



 王都に到着した。デカい!

 エリクセンやジョザ・マルーザの数倍、いや十倍以上はある大きさで、城壁も高いし大砲が置かれている。

「でっか……」

 馬車の中から城壁を見上げるが、近づけば近づくほど城壁の天辺が見えなくなる。
 他の街だと壁の真下に行かないと、防壁の天辺が見えなくなるなんて無かった。

「ユーさんは王都は初めてなの?」

「王都はおろか他の街も初めてだったから……でもここは別格だね」

 日本でいうところの、町や市どころか県くらいあるんじゃないか?と言うほどに大きく見える。
 午前中に王都に入るための長~い行列に並んで、結局入れたのは昼を過ぎてからだった。
 行列って凄く時間が経つのが遅く感じる。

「お~~~~、っはっはっは」

 人の多さと大きな建物の多さ、色んな店がある事に驚きすぎて笑ってしまった。
 いやTOKYOと比べればそれ程でも無いだろうけど、この世界でこの数は凄いな~。

「ほらこっちこっち」

 リアに手を引かれて海? が見える丘へやってきた。

「これは海?」

「ううん、これは湖。王都オンディーナには、海かと思うくらいに大きな湖があるの」

「これで湖か……向こう側が見えないんだけど」

「ここでは珍しい魚が捕れるんだって。食べに行こ」

 そういえば、行列のせいで昼を食べていないんだった。
 丘を降りると沢山の店が並んでいる。飲食店や土産屋が立ち並ぶ中の一店舗に、リアは迷わず入っていく。

「おススメの焼き魚セットと、かば焼きセットくださーい」

 とても手馴れているようで目がキラキラしている。
 今のリアは間違いなく色気より食い気だ。
 そしてここでも遭遇してしまった。

「あー焼き釜が壊れちまったよ」

「私、直せますよ」

 とても覚えのあるシチュエーションだ。
 見ると茶色を基調とした服装で、ピンクのベレー帽をかぶった以下略。
 しかも馬車を直した偽物しずかとは明らかに別人だ。
 いや早とちりはいかん、衣装が似ているくらいよくある事さハッハッハ。

「私は流れの鍛冶職人のしずかといいます」

 水を吹き出しそうになった。
 どうやらリアも聞いていたようで、慌てて俺の口周りを拭いてくれた。

「ゲホッありがとリア、ゴホッ」

「ううん。それより、またしずかさんだね」

「ああ、俺の知っているしずかも王都を目指すと言ってたけど、一体どうなってるんだ?」

 オンディーナへ来て魔術ギルドと錬金術ギルドへ登録したいし、ポーションや材料、色々な物の品質を見たいんだよね。

 あ、後で冒険者ギルドに顔だけでも出しておこう。

 昼食を済ませて街を散策していると、あちこちでしずかの名前を聞いた。
 この街はしずかで溢れているなぁ。

「リア、冒険者ギルドに顔だけ出してくるよ」

「うん、付いてく」

 あちこち寄り道しながらギルドへ到着した。
 扉を開けると中は冒険者であふれかえっている。なんだこの人数は!

 まずは受付っと……ん? 随分と化粧が濃いな……とても腕が逞しいし……角刈りだし……まさか……まさか!! 王都オンディーナの受付は、まさかのオネエだ!
 オネエが受付嬢の制服着てる! うん教育に悪い。回れ右っと。

「あらアナタ、せっかく来たのに帰っちゃうの?」

 あーうん、オネエ言葉だ。声も低い。帰りたい。

「ユーさんどうしたの?」

 どうやらリアはまだオネエを見ていない様だ。見ないうちに帰りたい!

「ユグドラちゃんは冷たいのねぇ」

 ! コイツ……。

「まだ名乗っていませんよね」

 名前を呼ばれて振り向いた。なんだ、コイツ。

「特徴的な三色の衣装、鎧を着こんでいるのに重さを感じさせない歩き方、マントとローブに付いたシワは、背中に斧を担いでいたからかしら?」

 これはヤバイ奴だ。
 ゆったりとしたローブの下に鎧を着ているなんて、普通は分からない。
 ましてシワの理由なんて気づくはずもない。

「元冒険者か何かでしょうか?」

「あらイヤだ。ワタシはずっと受付嬢をやってるわよ」

 嬢じゃないだろう……と突っ込みたい気持ちを抑える。

「そうでしたか。それで何か御用ですか?」

「御用があるのはソッチでしょ?」

「さあ、私は顔くらい出しておこうと思っただけなので、用事はおわって」

「ユーさんユーさん! ほらほら素材集めの依頼があるよ!」

 リアが掲示板に貼られた依頼書を見てしまったようだ。

「いい子じゃない。で、どうするの?」

「……依頼をお受けします」

「それじゃあ手続きをするわね。それと、もう一つお願いしたい依頼があるんだけど、どうかしら?」

「内容にもよりますね」

「内容は単純よ。噂の鍛冶職人、しずかの護衛をしてほしいの」

 ええぇぇぇぇぇ…………。
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