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第7章 改変された世界
第309話 パメラ、逃亡
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2階建ての横長い屋敷に到着した。
スラムだというのに金持ちの商人が住むような屋敷だ。
「この中にパメラさんがいますね。ん? 屋敷の中が慌ただしくなりました」
「チンピラのリーダーですからね! 私達を国の調査かと思っているのでしょう!」
キャロラインは屋敷の調査を続け、バーバラは本当に調査と銘打った押し入りをする勢いだ。
ナターシャとキャシーは万が一に備え、ラグナの両脇から離れない。
それにしても、バーバラは部分鎧と剣を装備しているが、他の3人はドレス姿なので、なんとこの場に合わない事か。
「それでは入りましょう」
鉄柵の門を押すが鍵がかかっているようだ。
手を緩めて鍵を見ると、カチャリと音がして門は簡単に開いた。
一歩足を踏み入れると数十本の矢が飛んでくる。
罠と一緒にチンピラ共も矢を放ったようだ。
「わ!? うわああああ!!」
1人叫び声を上げるラグナだが、5人を青く薄い膜が覆うと矢は全てはじき返された。
防御しようとした両手は痛くならず、両眼を開けるとまたもや青い膜の中におり、不思議な膜は引き続き矢を防いでいる。
「あ、これはクリスタルベアーに襲われた時の……?」
「はい、そうですよラグナ! これは聖女が使う『全てを拒否する盾』です!」
バーバラが嬉しそうな顔で説明する中、ナターシャとキャシーは矢が飛んでくる場所を特定・攻撃を開始した。
ナターシャは右手のひらを空に向け、キャシーは両手を左右に広げると、拳ほどの大きさの何かが四方八方に飛んでいき、罠を破壊し、チンピラの頭に当たり、あっという間に周りは静かになる。
「封印が解かれてからというもの、魔法の威力調整が難しいですね」
「頭ではわかっちゃいるが、実際に使うと威力が強すぎたりするな」
ナターシャとキャシーは修斗の傀儡だった時代もあり、必要に応じて能力を向上させていた。
ロールドルフ国の操るために数えきれないほど抱き、王子達をあてがい王子妃にさせ、しまいには女王として君臨させたのだ。
ご多分に漏れず能力は高く、9人の悪夢の騎士程ではないがステータスは2万を超えている。
「外は静かになりましたね。それでは中に入りましょう」
キャロラインは鍵穴に手をかざして鍵を開け、両手で両開きの扉を強めに押し開けた。
音をたてて開いた扉は全開になるが、屋敷の中は昼間だというのに薄暗くよく見えない。
中に入るが特に罠はなく、襲ってくる気配もない。
人の気配は複数あるのだが……キャロラインが首をかしげた。
「あら? いけません、ちょっと先に行っています」
キャロラインの体がふわりと浮くと、吹き抜けの玄関から2階の廊下に移動し、そのまま奥の部屋まであっという間に移動していく。
扉を乱暴に開ける音がして、しばらくするとキャロラインが廊下を歩いて戻ってきた。
「逃げられてしまいました」
「え? パメラさんは部屋に居たんですよね!?」
「いたはずですが、途中で強い魔力を感じたので急いで向かったのですが……まさか空間魔法でも使ったのでしょうか、忽然と姿が消えてしまいました」
バーバラの質問に答えるキャロラインだが、その答えが余計に理解できなかった。
空間魔法や転移魔法は、普通の魔法使いはおろか勇者クラスの能力があっても使う事が出来ない。
キャロライン達は簡単に使っているが、それは修斗が使ったのを見て真似をし、実行する能力があるからなのだ。
記憶が封印されたままの状態ならステータスは1000前後、本来ならば使えるはずのない魔法だ。
「飛んだ先はわかりませんか?」
「まさかこれほど素早く消えるとは思わなかったので、トレースもかけていませんでした」
「パメラさんは魔法は得意じゃなかったはず、それがこんな魔法を使えるものかな」
「しかし消えてしまったのならば仕方がありません! このまま調査を続けても時間の無駄でしょうから、明日からの準備にかかりましょう!」
パメラを見つけたらすぐにラグナと目を合わせ、記憶を戻す計画だったのだが、まさか4女傑を、しかも能力の戻った4人を簡単に巻いてしまうとは……一体どんなカラクリだろうか。
しかしどこに行ったか見当もつかないため、スラムでの活動はこれで終わりになる。
翌日からは魔道車に乗り、ラグナ、キャロライン、バーバラ、ナターシャ、キャシー、ティナはザナドゥ王国跡地へと向かった。
以前の魔道車は馬車に毛が生えた程度のモノだったが、最近の物はどことなく1ボックスカーを思わせる形をしている。
6人とその荷物を積んでもまだ余裕があるため、魔道車の進化は早いようだ。
ティナなどは終始驚きっぱなしだったが、油断をすると誰かがラグナと腕を組んでいるため、ラグナの隣の席から動かなくなってしまった。
まずは王都に戻り、そこから南西へと向けて進みだす。
途中でザナドゥ王国の重鎮達に会えればいいが、今のところ手掛かりがあるものは数名のみ。
ザナドゥに来るまでは傭兵をやっていたレベッカとウィリアム、恐らくは魔の森の里にいるであろうカーリン、そして劇団員のフローレンスだ。
レベッカ・ウィリアムは傭兵団や戦いのある場所を、レベッカはザナドゥに行った後で魔の森に、フローレンスは劇団員だから予定を調べればいい。
他にも所在地が判明している者は多いが、全く手掛かりのない者もいる。
修斗が異世界から連れて来た者達だ。
アイカは元日本人な上、異世界に召喚され、さらにこの世界に来たため、一体どこの世界にいるのかがわからない。
ヴァージニアもそうだ。こちらはそもそも大元の世界がわかっていない。
ラグズ、エルノヴァ、ラライラは異世界に居るのだろうか。
そもそも異世界に行く手立てがない以上、この5人は修斗が記憶を取り戻さないとどうしようもない。
かつてザナドゥ王国の食卓には30近い席があった。
席に着く者を探す長い旅が、ここから始まるのだった。
スラムだというのに金持ちの商人が住むような屋敷だ。
「この中にパメラさんがいますね。ん? 屋敷の中が慌ただしくなりました」
「チンピラのリーダーですからね! 私達を国の調査かと思っているのでしょう!」
キャロラインは屋敷の調査を続け、バーバラは本当に調査と銘打った押し入りをする勢いだ。
ナターシャとキャシーは万が一に備え、ラグナの両脇から離れない。
それにしても、バーバラは部分鎧と剣を装備しているが、他の3人はドレス姿なので、なんとこの場に合わない事か。
「それでは入りましょう」
鉄柵の門を押すが鍵がかかっているようだ。
手を緩めて鍵を見ると、カチャリと音がして門は簡単に開いた。
一歩足を踏み入れると数十本の矢が飛んでくる。
罠と一緒にチンピラ共も矢を放ったようだ。
「わ!? うわああああ!!」
1人叫び声を上げるラグナだが、5人を青く薄い膜が覆うと矢は全てはじき返された。
防御しようとした両手は痛くならず、両眼を開けるとまたもや青い膜の中におり、不思議な膜は引き続き矢を防いでいる。
「あ、これはクリスタルベアーに襲われた時の……?」
「はい、そうですよラグナ! これは聖女が使う『全てを拒否する盾』です!」
バーバラが嬉しそうな顔で説明する中、ナターシャとキャシーは矢が飛んでくる場所を特定・攻撃を開始した。
ナターシャは右手のひらを空に向け、キャシーは両手を左右に広げると、拳ほどの大きさの何かが四方八方に飛んでいき、罠を破壊し、チンピラの頭に当たり、あっという間に周りは静かになる。
「封印が解かれてからというもの、魔法の威力調整が難しいですね」
「頭ではわかっちゃいるが、実際に使うと威力が強すぎたりするな」
ナターシャとキャシーは修斗の傀儡だった時代もあり、必要に応じて能力を向上させていた。
ロールドルフ国の操るために数えきれないほど抱き、王子達をあてがい王子妃にさせ、しまいには女王として君臨させたのだ。
ご多分に漏れず能力は高く、9人の悪夢の騎士程ではないがステータスは2万を超えている。
「外は静かになりましたね。それでは中に入りましょう」
キャロラインは鍵穴に手をかざして鍵を開け、両手で両開きの扉を強めに押し開けた。
音をたてて開いた扉は全開になるが、屋敷の中は昼間だというのに薄暗くよく見えない。
中に入るが特に罠はなく、襲ってくる気配もない。
人の気配は複数あるのだが……キャロラインが首をかしげた。
「あら? いけません、ちょっと先に行っています」
キャロラインの体がふわりと浮くと、吹き抜けの玄関から2階の廊下に移動し、そのまま奥の部屋まであっという間に移動していく。
扉を乱暴に開ける音がして、しばらくするとキャロラインが廊下を歩いて戻ってきた。
「逃げられてしまいました」
「え? パメラさんは部屋に居たんですよね!?」
「いたはずですが、途中で強い魔力を感じたので急いで向かったのですが……まさか空間魔法でも使ったのでしょうか、忽然と姿が消えてしまいました」
バーバラの質問に答えるキャロラインだが、その答えが余計に理解できなかった。
空間魔法や転移魔法は、普通の魔法使いはおろか勇者クラスの能力があっても使う事が出来ない。
キャロライン達は簡単に使っているが、それは修斗が使ったのを見て真似をし、実行する能力があるからなのだ。
記憶が封印されたままの状態ならステータスは1000前後、本来ならば使えるはずのない魔法だ。
「飛んだ先はわかりませんか?」
「まさかこれほど素早く消えるとは思わなかったので、トレースもかけていませんでした」
「パメラさんは魔法は得意じゃなかったはず、それがこんな魔法を使えるものかな」
「しかし消えてしまったのならば仕方がありません! このまま調査を続けても時間の無駄でしょうから、明日からの準備にかかりましょう!」
パメラを見つけたらすぐにラグナと目を合わせ、記憶を戻す計画だったのだが、まさか4女傑を、しかも能力の戻った4人を簡単に巻いてしまうとは……一体どんなカラクリだろうか。
しかしどこに行ったか見当もつかないため、スラムでの活動はこれで終わりになる。
翌日からは魔道車に乗り、ラグナ、キャロライン、バーバラ、ナターシャ、キャシー、ティナはザナドゥ王国跡地へと向かった。
以前の魔道車は馬車に毛が生えた程度のモノだったが、最近の物はどことなく1ボックスカーを思わせる形をしている。
6人とその荷物を積んでもまだ余裕があるため、魔道車の進化は早いようだ。
ティナなどは終始驚きっぱなしだったが、油断をすると誰かがラグナと腕を組んでいるため、ラグナの隣の席から動かなくなってしまった。
まずは王都に戻り、そこから南西へと向けて進みだす。
途中でザナドゥ王国の重鎮達に会えればいいが、今のところ手掛かりがあるものは数名のみ。
ザナドゥに来るまでは傭兵をやっていたレベッカとウィリアム、恐らくは魔の森の里にいるであろうカーリン、そして劇団員のフローレンスだ。
レベッカ・ウィリアムは傭兵団や戦いのある場所を、レベッカはザナドゥに行った後で魔の森に、フローレンスは劇団員だから予定を調べればいい。
他にも所在地が判明している者は多いが、全く手掛かりのない者もいる。
修斗が異世界から連れて来た者達だ。
アイカは元日本人な上、異世界に召喚され、さらにこの世界に来たため、一体どこの世界にいるのかがわからない。
ヴァージニアもそうだ。こちらはそもそも大元の世界がわかっていない。
ラグズ、エルノヴァ、ラライラは異世界に居るのだろうか。
そもそも異世界に行く手立てがない以上、この5人は修斗が記憶を取り戻さないとどうしようもない。
かつてザナドゥ王国の食卓には30近い席があった。
席に着く者を探す長い旅が、ここから始まるのだった。
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