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第6章 ダンジョンから始まる世界交流
第280話 開通(エロイ意味ではなく)
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森の木をどんどん伐採し、ならした地面に砕石を撒いて砂で押し固め、石のブロックを置いていく。
手順と進む方向さえ間違えなければ難しくはないが、今回の道作りは距離が非常に長く、しかも魔の森という人が入り込まない場所のため、物資の搬入が非常に重要になる。
「ヴァージニアさん、今日の分の材料が運ばれてきました」
「ん……そろそろ王都との距離が離れて……時間がかかる様になったね」
ザナドゥ王国から毎日材料や物資が送られて来るのだが、やはり距離が遠くなるにつれて遅延が発生してしまう。
人や道具にも限りがあり、運送には冒険者が護衛に付くなどしているが、なにぶん運ぶ荷車は数が足りないようだ。
「とはいえ、すでに半分まで来ていますから、そろそろアボハール共和国側の様子を見に行った方が良いでしょうか?」
「そう……だね……道のズレは最小限にしたいし……ちょっと見て来る」
「え!? ヴァージニアさん自らが行かれるのですか!?」
「アモーリ……あとは……よろしく」
「ヴァ、ヴァージニアさんー!?」
止めようと1歩進んだ時には、すでにヴァージニアの姿は消えていた。
「わ、私1人で指揮をしろと……?」
森の中を、まるで木など無いような速度で走るヴァージニア。
途中で魔物と遭遇するのだが、魔物は風が吹いたとしか思っていない。
「……あ、あれ……かな?」
距離にして10キロメートルほど移動すると、大量の人員と山のように積まれた材料が見えた。
だが誰も手を動かしていない、何かあったのだろうか。
「弱ったな。おい親方はまだか?」
「今呼びに行ってる。もう少しで来るはずだ」
職人達が地面に座り込み、地面の何かを眺めている。
ヴァージニアも何事かと覗き込むのだが、穴の中には……石? の様なものが埋まっている。
「これ……なに?」
「「うおぁ!?」」
背後から声がして驚いたのだろう、全員がヴァージニアを見て驚いた。
「おいおい、女の子がこんな所に来ちゃ危ないだろ。ほらほら、キャンプに戻った戻った」
「大丈夫……どうして作業を……中断してるの?」
「え? ああ、この石なんだけどな? 掘っても掘ってもこの石の底が見えないんだ。壊そうと思っても硬くて壊れないし、親方に聞いてルートの変更をしようと思ってな」
人が数名入れるような穴の中に、上の方は細くて小さいが、下に行くにつれて大きくなる石があった。
どうやらこれのせいで道を作れないようだ。
「壊したら……作業を再開できる?」
「そりゃもちろんさ。俺達はザナドゥ王国よりも早く道を作りたいんだ。こんな所で躓いてる訳にはいかないらな」
どうやら本気らしく、とても強い意思が見て取れた。
それならばとヴァージニアがナイフを抜いた。
「お嬢ちゃん? そんな物騒なもんをどうするつもりだ?」
「こう……する」
右手でナイフを逆手に持ち、頭から穴に落ちたかと思うと、その勢いで石を切り刻んでいく。
一番深い所は残っているが、地表から50センチほどの深さまで切ったため、道を作るには邪魔にならないだろう。
ちなみにこの石はタダの硬い石だった。
思わず職人達が拍手をして盛り上がるが、ヴァージニアをロープで引き上げようとしたら勝手にジャンプして出て来た。
「じょ、嬢ちゃんは凄いな。ひょっとして護衛の冒険者なのか? こんな可愛らしいお嬢さんなら、覚えてると思うんだが」
「違う……ザナドゥ王国の林道開通班」
「「え!?」」
驚くのも無理はないだろう。
ザナドゥ側の人間がここにいるという事は、すでに近くまで道が来ているという事なのだから。
ザナドゥよりも多く道を敷設して、アボハール共和国の国力を誇示するつもりなのだから、すでに負けている事になる。
「ま、まさかもうザナドゥは近くまで来ているのか?」
「まだ……中間地点にいる」
それを聞いて頭に手を当てて悔しがっている。
アボハール共和国側はまだ中間地点まで10キロメートルはあり、すでに中間地点にいるザナドゥ王国に大差を付けられているのだ。
「こうしちゃいられねぇ! お前ら! ペースを上げていくぞ!」
「「おー!」」
こうして中断していた作業は急ピッチで進められた。
そしてしばらく時間がたち、ようやく両方の道がつながった。
「やったー! これで国に帰れるぞー!」
アボハール共和国の職人たちは、長期間にわたる工事ですっかりホームシックになっていた。
だが喜びもつかの間、ある人物が現れた事で現場は混乱した。
「おつかれさま……これで終わったね」
「お嬢ちゃん!? どうしてこんな所に?」
ヴァージニアがアボハールの職人に声をかけられたため、不思議に思ったアモーリがたずねる。
「ヴァージニアさんは、アボハールの職人とお知り合いなのですか?」
「ん……アモーリの祖国だから……少し手伝った」
現場の指揮はアモーリだと聞いていたが、ヴァージニアはそれよりも前に立って指示をしていたため、アボハール共和国の職人は理解が追いつかない。
「ああ皆さん、ヴァージニアさんはザナドゥ王国の重鎮であり、9人の悪夢の騎士に次ぐ権限をお持ちなのですよ?」
アモーリに言われてジャンピング土下座をする職人達。
そんな偉い人とはつゆ知らず、随分と気軽に接してしまったからだろう。
「「大変ご無礼をいたしましたー!」」
「大丈夫……前の方が気が楽……普通にして」
そういわれてやっと安心して顔を上げた。
夜には開通記念で簡単なパーティーが開催されたが、その中で変なやり取りがあった。
「アモーリ様、いつでも帰ってきてくださいね。王様や王妃様も会いたがっていますから」
「そうね、たまには遊びに行くわ。あなた方も、たまには我が国に遊びにいらっしゃい」
アモーリとアボハール共和国の監督の会話だが、完全にアボハール人とザナドゥ人の会話になっていた。
アモーリは自然とザナドゥの事を『我が国』と言ったため、向こうの監督は少々混乱してしまった。
さて、魔の森に道を開通させる少し前、大陸東の海を渡った場所にある砂漠の小国の姫が、部屋の床に寝そべり頬杖をついていた。
「なぁ、ザナドゥのシュウトってやつ、連れてきてくんない? いい男らしいから会いたいんだけど」
手順と進む方向さえ間違えなければ難しくはないが、今回の道作りは距離が非常に長く、しかも魔の森という人が入り込まない場所のため、物資の搬入が非常に重要になる。
「ヴァージニアさん、今日の分の材料が運ばれてきました」
「ん……そろそろ王都との距離が離れて……時間がかかる様になったね」
ザナドゥ王国から毎日材料や物資が送られて来るのだが、やはり距離が遠くなるにつれて遅延が発生してしまう。
人や道具にも限りがあり、運送には冒険者が護衛に付くなどしているが、なにぶん運ぶ荷車は数が足りないようだ。
「とはいえ、すでに半分まで来ていますから、そろそろアボハール共和国側の様子を見に行った方が良いでしょうか?」
「そう……だね……道のズレは最小限にしたいし……ちょっと見て来る」
「え!? ヴァージニアさん自らが行かれるのですか!?」
「アモーリ……あとは……よろしく」
「ヴァ、ヴァージニアさんー!?」
止めようと1歩進んだ時には、すでにヴァージニアの姿は消えていた。
「わ、私1人で指揮をしろと……?」
森の中を、まるで木など無いような速度で走るヴァージニア。
途中で魔物と遭遇するのだが、魔物は風が吹いたとしか思っていない。
「……あ、あれ……かな?」
距離にして10キロメートルほど移動すると、大量の人員と山のように積まれた材料が見えた。
だが誰も手を動かしていない、何かあったのだろうか。
「弱ったな。おい親方はまだか?」
「今呼びに行ってる。もう少しで来るはずだ」
職人達が地面に座り込み、地面の何かを眺めている。
ヴァージニアも何事かと覗き込むのだが、穴の中には……石? の様なものが埋まっている。
「これ……なに?」
「「うおぁ!?」」
背後から声がして驚いたのだろう、全員がヴァージニアを見て驚いた。
「おいおい、女の子がこんな所に来ちゃ危ないだろ。ほらほら、キャンプに戻った戻った」
「大丈夫……どうして作業を……中断してるの?」
「え? ああ、この石なんだけどな? 掘っても掘ってもこの石の底が見えないんだ。壊そうと思っても硬くて壊れないし、親方に聞いてルートの変更をしようと思ってな」
人が数名入れるような穴の中に、上の方は細くて小さいが、下に行くにつれて大きくなる石があった。
どうやらこれのせいで道を作れないようだ。
「壊したら……作業を再開できる?」
「そりゃもちろんさ。俺達はザナドゥ王国よりも早く道を作りたいんだ。こんな所で躓いてる訳にはいかないらな」
どうやら本気らしく、とても強い意思が見て取れた。
それならばとヴァージニアがナイフを抜いた。
「お嬢ちゃん? そんな物騒なもんをどうするつもりだ?」
「こう……する」
右手でナイフを逆手に持ち、頭から穴に落ちたかと思うと、その勢いで石を切り刻んでいく。
一番深い所は残っているが、地表から50センチほどの深さまで切ったため、道を作るには邪魔にならないだろう。
ちなみにこの石はタダの硬い石だった。
思わず職人達が拍手をして盛り上がるが、ヴァージニアをロープで引き上げようとしたら勝手にジャンプして出て来た。
「じょ、嬢ちゃんは凄いな。ひょっとして護衛の冒険者なのか? こんな可愛らしいお嬢さんなら、覚えてると思うんだが」
「違う……ザナドゥ王国の林道開通班」
「「え!?」」
驚くのも無理はないだろう。
ザナドゥ側の人間がここにいるという事は、すでに近くまで道が来ているという事なのだから。
ザナドゥよりも多く道を敷設して、アボハール共和国の国力を誇示するつもりなのだから、すでに負けている事になる。
「ま、まさかもうザナドゥは近くまで来ているのか?」
「まだ……中間地点にいる」
それを聞いて頭に手を当てて悔しがっている。
アボハール共和国側はまだ中間地点まで10キロメートルはあり、すでに中間地点にいるザナドゥ王国に大差を付けられているのだ。
「こうしちゃいられねぇ! お前ら! ペースを上げていくぞ!」
「「おー!」」
こうして中断していた作業は急ピッチで進められた。
そしてしばらく時間がたち、ようやく両方の道がつながった。
「やったー! これで国に帰れるぞー!」
アボハール共和国の職人たちは、長期間にわたる工事ですっかりホームシックになっていた。
だが喜びもつかの間、ある人物が現れた事で現場は混乱した。
「おつかれさま……これで終わったね」
「お嬢ちゃん!? どうしてこんな所に?」
ヴァージニアがアボハールの職人に声をかけられたため、不思議に思ったアモーリがたずねる。
「ヴァージニアさんは、アボハールの職人とお知り合いなのですか?」
「ん……アモーリの祖国だから……少し手伝った」
現場の指揮はアモーリだと聞いていたが、ヴァージニアはそれよりも前に立って指示をしていたため、アボハール共和国の職人は理解が追いつかない。
「ああ皆さん、ヴァージニアさんはザナドゥ王国の重鎮であり、9人の悪夢の騎士に次ぐ権限をお持ちなのですよ?」
アモーリに言われてジャンピング土下座をする職人達。
そんな偉い人とはつゆ知らず、随分と気軽に接してしまったからだろう。
「「大変ご無礼をいたしましたー!」」
「大丈夫……前の方が気が楽……普通にして」
そういわれてやっと安心して顔を上げた。
夜には開通記念で簡単なパーティーが開催されたが、その中で変なやり取りがあった。
「アモーリ様、いつでも帰ってきてくださいね。王様や王妃様も会いたがっていますから」
「そうね、たまには遊びに行くわ。あなた方も、たまには我が国に遊びにいらっしゃい」
アモーリとアボハール共和国の監督の会話だが、完全にアボハール人とザナドゥ人の会話になっていた。
アモーリは自然とザナドゥの事を『我が国』と言ったため、向こうの監督は少々混乱してしまった。
さて、魔の森に道を開通させる少し前、大陸東の海を渡った場所にある砂漠の小国の姫が、部屋の床に寝そべり頬杖をついていた。
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