ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第6章 ダンジョンから始まる世界交流

第272話 龍と言えば龍なのか?

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「お帰りなさいターニャさん。今回も全て買取ですか?」

「ああ、頼む」

 冒険者ギルドの受付で、真っ赤に染まったドレスを身にまとい、顔や髪にも返り血を浴びた女性が報告と買取をしている。
 薄い茶色でクセの強い長い髪と金色の瞳を持ち、少しつり上がった目は気の強さゆえだろうか。
 恐らくは水色を基調としたドレスは胸元が強調され、薄いピンクのフリルが胸元と短い袖付近、長いスカートに付けられている。
 膨らんだスカートは歩きやすそうではあるが、とても戦闘に向いているとは思えない。

 ターニャは大きなリュックから大量のアイテムや素材を取り出し、順番に受付嬢に渡していく。
 武器、防具、アクセサリー、牙、皮、宝石など、回収できる物は全て回収しているようだ。

「いよ~ターニャちゃん、今晩はどうだ? 一緒に飲まねーか?」

 髭の冒険者らしい男が話かけるが、少しだけ微笑み、優しくお断りした。
 どうやら行った先々で有名人になっているらしく、男連中からのお誘いも絶え間ないようだ。
 もちろん飲みではなくパーティーのお誘いもある。

「お待たせしましたターニャさん。今回はAランクの防具がありましたが、やはり買取ですか?」

「そうだな、全て売ろう」

「であればこの価格になりますが、よろしいでしょうか」

「……ああ、問題ない。ありがとう」

 提示された金額に納得し、大きめのトレイに並べられた金貨を受け取る。
 金貨30枚以上はあるだろうが、それを皮袋に詰めるとギルドを出て行く。
 そして町にある孤児院に行き、金貨1枚を除いて全てを寄付した。

「さあ、明日は最下層まで行けるはずだから、今日は早めに休むとしよう」



 洞窟型ダンジョン内に打撃音が響き渡る。
 打撃音、そして破裂音、最後には液体が流れるような音がすると、大きめの何かが地面に落ちる音がする。

「あ、しまった、こいつはツノが売れるんだった」

 大きなサイの魔物を倒し、その解体作業中に思い出した様で、自らの拳で破壊してしまったツノを見て落ち込んでいた。
 せめて破片でも売れないかと持っていくのだが、サイの体は酷いありさまだ。
 顔が左右から挟まれたように潰され、分厚いはずの皮にはあちこちに穴が開き、はらわたが引きずり出されている。

 そしてその返り血を浴びたのか、ターニャの体はすでに真っ赤に染まっていた。

「えっと階段がここら辺に……ああ、アレね。ダンジョン情報によれば、このフロアで美味しい魔物は倒したし、次の最後のフロアに行っても問題ないな」

 自身よりも大きなリュックを片手に持ち、階段をゆっくりと降りて行く。
 階段を降りきるとそこは広間になっていた。

「情報によればココには小型の地龍ちりゅうがいるはずだが……間違っているのか?」

 地龍、いわゆる翼の無い龍の総称であり、四つん這いになっているモノや2本足で立つモノもいるため、漠然とした情報過ぎると役に立たないことがある。
 今回がそれに当てはまるのかもしれない。

 しばらく広間を歩き回るのだが、少なくとも龍と呼ばれるような大きな生き物がいる気配はなく、コウモリや小さなトカゲがいるだけだ。

「ここの攻略は終わっていると聞いたのだが、まさか毎回最深部の魔物が違うのか?」

 広間の奥から音がする。
 しかし軽い音であり、魔物だとしてもかなり小型が歩くような音だ。
 警戒を強め、手に持っていたリュックを地面に置いて拳を構える。

 置くから現れたのは……小さな子供だった。
 5歳程度の子供で、あちこちに怪我をしているのか顔に交差するように血の筋が流れている。

「タ、タスケテ……」

 両手を前に出して倒れそうになりながら助けを求めている。
 服はボロボロ、裸足でたどたどしい足つきだ。

「子供!? なぜこんな所に?」

 ターニャはしゃがみ込み、両手を差し出して抱きしめようとする、その時!
 血だと思っていた顔の赤い筋を境につぼみが開く様に口を開け、ターニャに噛みつこうとするではないか!
 顔全体が口の様に、いや体全体が口の様に大きく開き、ターニャの顔に食らいつく。

 バクン! と顔を咥えこみ、咀嚼しているのかモゾモゾと動いている。
 だが……随分と咀嚼が長い。

 ターニャはすっくと立ちあがると、地面からズルズルと本来の胴体らしい部分が持ち上がってきた。
 両手を大きく開き、勢いよく顔の前で手を叩くとソレの胴体が潰され、苦しかったのか魔物は口を開けてターニャの顔を吐き出した。

「まったく、こんなのに引っ掛かる冒険者なんて居るはずないだろう。子供が1人で最下層に? ないない、擬態するならもっと大人にするんだな」
 
 顔にはよだれらしい液体が付いているが、噛まれた痕はどこにもない。
 いや牙らしきものが数本付いているが、まるでトゲが刺さった程度の感覚で抜いている。
 抜いた後は穴はもちろん血も流れていない。

 地面から全ての体が抜け出し、その全貌が明らかになる。
 顔は人の子供の様な形をしており、相手を油断させて食らいつくという狩り方のようだ。
 その体はヘビに近いが小さな足が左右に複数付いており、全長は5~6メートルといった所だろうか。

「龍……と言えなくもないけど、コレを龍と言ったら龍に失礼な気がする」

 今度は完全に全身が地面に潜り込み、身をひそめてしまった。
 ターニャは周囲を警戒しているのか、目を閉じて静かに拳を握り、空手の様な構えを取る。
 前、後ろ、左右、天井……どこから来ても良いように神経を集中しているが、敵の狙いはそこでは無かった。

 足元に穴が開き、ターニャは下に落ちたかと思うと粘り気のある液体に足を取られてしまった。

「真下から来たのか! だがなんの振動も無かったはずだ!」
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