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第6章 ダンジョンから始まる世界交流

第228話 地域復興とダンジョン作成

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「シュウト様、軍の再編成案をお持ちしました」

 修斗の執務室で、レベッカ魔法兵長が10枚ほどの紙を修斗に渡した。
 紙を手に取って順番に見ているが、なかなかどうして楽しそうな顔で読んでいる。

「随分と数が増えたな。兵科も10種類を超えたか」

「はい。捕虜とした兵の中からザナドゥに残りたい者はそのまま登用し、吸収した国の残存兵を全て取り込んだうえで、新規で募集をかけたところ総数は20万を超えました。なのである程度は分科ぶんかさせた方が良いと判断しました」

「新規で来た奴らは全員素人か?」

「いえ、半分以上は元冒険者で約2万、全くの素人は1万5千程度です」

「冒険者がそれほど多く来るとは思わなかったな」

「ランクの低い冒険者が多いようですので、ド素人に比べればマシ、という程度だと思います。あ、それと……Sランクが1人入ってきました」

「Sランクが? Sなら自分でやった方が稼げるんじゃないのか?」

「それがどうやらフランチェスカと同じ部隊に入りたいらしく、ファの街でドラゴンを倒した姿を見て惚れた様です」

「はっはっはっは! そういえば報告にあったな、ハイエルフのSランク冒険者か」

「その様です」

「まあいい。だが冒険者の登用は仮にしておけ、今各地を復興させる手を考えているんだが、それには冒険者が必須なんだ」

「何をされるんですか?」

「ダンジョンを作ろうと思っている。城塞都市の中にダンジョンを作り、冒険者や商人が行き来しやすい環境を整えようと思ってな」

「なるほど、初心者から上級者まで入れるダンジョンを作るのですね?」

「そうだ。まあ1つくらいは特上ランクのダンジョンを作るが、人が偏らないようにしないとな」

 修斗の頭の中にあるプランとしては、物理が有効なダンジョンや魔法が有効なダンジョン、両方を組み合わせないといけないダンジョンなど、数種類のダンジョンを考えていた。
 その中で取れるアイテムでラスボスから出るアイテムは修斗が作り、それ以外は腕利きの鍛冶屋や細工師、錬金術師に作らせる。

「具体的な案はまだできていないが、兵士ばかりが増えても経済が回らない。冒険者が必要になるだろう」

「分かりました。その話は冒険者や他の者にしても?」

「重鎮以外はもう少し待て。場所は決めてあるが内容を詰めてからだ」

「かしこまりました。それでは訓練には参加させますが、正式採用は後日という事にします」

「ああ、たのむ」

 レベッカ魔法兵長が頭を下げて退室する。
 イスから立ち上がり窓際に立って外を眺めると、街並みが良く見える。
 世界大戦があった事など誰も知らないような、いつも通りの風景だ。

「昔、ダンジョンを作るゲームがあったな。風水だったか? いや普通のもあったか。地下だけではなく塔も欲しいな、レイアウトを考えよう」

 世界大戦と同じように、ゲーム感覚でダンジョンの構想を詰めていくのだった。




「おやレベッカじゃないか。シュウトに報告してきたのかい?」

「パメラ姉さん。ええ、今行ってきました。おおむねOKでしたが、多少の変更が加わるだけで済みました」

 城の廊下を歩いていた所、パメラがレベッカを見つけて声をかける。
 パメラも修斗の所に行くらしく、その手には資料が握られていた。

「変更? どこだい」

「冒険者の採用は仮にしておけと。どうやら……ダンジョンを作るそうですから、冒険者が減ると困るのだとか」

 後半は小声で話していた。
 重鎮なので問題はないが、他の誰かに聞かれても困るのだろう。

「へぇ、また面白い事を考えるじゃないか。魔の森開拓で随分と魔物とは戦ったが、ダンジョンは行った事が無かったねぇ」

「そうなんですか? じゃあ出来たら遊びに行きましょうよ」

「楽しみだねぇ」

 パメラは片手を振って去っていく。
 レベッカ魔法兵長は再編成案を微修正するために自分の執務室に戻るのだが、その前に数か所寄り道をするようだ。

「ラグいるか?」

 ラグズの工房に顔をだした。
 工房は機械的な物だけではなく、鍛冶や錬金など生産系が一か所にまとまっており、そのリーダーがラグズなのだ。
 呼ばれてゴーグルをあげて振り向くと、そこには手を振っているレベッカがいた。

「あ、レベッカさんッスか。お疲れさまッス! どうしたんスか?」

「前に話した再編成案だけどね、シュウト様からほぼOKをもらったから、制作に入って欲しいのさ」

「ああ、あれッスね。生産体制は整えてありますんで、問題はないッス!」

「相変わらず手際がいいねぇ。ラグも知ったおいた方がいいから言っとくよ、シュウト様ね……」

 耳に顔を寄せてヒソヒソ話を始める。

「うっはぁ~! なんスかそれ! 面白そうッス!」

「しばらくしたらシュウト様から正式に命令が出るはずだから、頭の片隅には置いといておくれ」

「了解ッス!」




「フローレンスー? いないのかい?」

「アレ? レベッカさんじゃナイですカ。どうしたんデスか?」

「あれ? キャロルが居るのかい? フローレンスは?」

 フローレンスがいるはずの部屋に来ると、なぜかキャロルがいた。
 そしてキャロルは床を指差す。

「ん? ああ潜ってるんだねぇ、時間がかかりそうかい?」

「モーしばらくかかりソウデス」

「じゃあ伝言を頼むよ」

 こうしてダンジョン作成の話は主要メンバーに伝わっていった。
 そのダンジョンが、思わぬ形で大陸に影響を与えるとも知らずに。
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