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第5章 世界大戦

第199話 開戦

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 行かないでくれとすがり付くキリアム法王をほっぽって、修斗とアイカはザナドゥ王国に空間を跨いで戻ってきた。
 すでに謁見の間には主要メンバーが揃っており、各大臣も並んでいた。

 全員が頭を下げる中央を歩き、アイカは自分の場所へと戻り、修斗は玉座の前に立つ。
 両脇にはパメラ・バーバラ・キャロラインが頭を下げている。

「ようやく反徒どもが動き出したようだな。パメラ! 敵の総数は!」

 修斗の左に居たパメラが顔を上げ、声を張り上げて答える。

「は! 敵の数は約150万、我がザナドゥ王国の30倍です!」

「バーバラ! 敵の編成は!」

 右側の修斗寄りに居たバーバラが大声を上げる。

「は! 歩兵・重歩兵が70万、騎兵が20万、魔法兵が20万、弓兵30万、特殊工兵5万、補給5万です!」

「キャロライン! 敵の配置は!」

 右の外側のキャロラインは、少し冷静に答える。

「はい。北から東、南にかけて満遍なくいますが、我が国の窪んだ部分にはごく少数が残るのみです」

「ウィリアム騎士団長! レベッカ魔法兵長! カーリン弓兵長! 出撃の準備は出来ているか!」

 玉座の前に整列している中から中央先頭の3人が1歩前に出る。

「は! 騎士団はいつでも出られます!」

「魔法兵、ご命令があれば今すぐにでも!」

「弓兵隊、いつでも矢を放てます!」

「キャロル内政・人事担当! 各都市の人員の配備はどうか!」

 3人が列に戻り、その右側から1歩前に出る。

「ハイ。スデに防衛隊ははいちにツキ、いつでもボウエイせんがかのうデス!」

「フローレンス都市開発長! 各都市の防衛体制はどうだ!」

 キャロルが戻り、今度は左側から1歩前に出る。

「は! 各都市の防壁の強化はすでに完了し、守備隊は長期籠城が可能となってございます!」

「ビリー雑用係! 各都市の避難状況は!」

 更に左から1歩前に出る。

「はい、必要数の避難所は完成し、都市が落とされない限りは危険はございませんです、ハイ」

 ビリーが列に戻ると、修斗は改めて全員を見回す。

「今回の戦いは今までとは規模が違う! よって我が国の全てを使って敵を殲滅する! 敵に情けをかけるな! 逃がすな! たとえ大陸全てが敵に回っても俺達には勝てない事を、その魂にまで刻み込ませろ!」

 オウ! と全員が声を出す。
 この場に居る全ての者が勝利を確信しているが、戦いの規模が大きいせいか妙な高揚感がある様だ。
 
「総員、作戦を開始しろ!!!」

 修斗の号令により、各員がそれぞれの役目を果たすべく行動を開始する。



 ところ変わって反ザナドゥ組織『ベフラウィング』の司令部。
 司令部はザナドゥ王国の東側、全軍のほぼ中央に位置している。

「え? 攻め込まないのかって? バッカだな~、アイツらが前に使った方法があるでしょ? 包囲したままひと月もしたら食料が無くなって、向こうから泣いて降伏をして来るよ」

 大きなテントの中には様々な人物がひしめき合っていた。
 各国の王や軍のトップ、王子などもいるようだ。
 その中心にいるのは10歳の少年、マイルフィック。

「だがこれだけの戦力を集めたんだぞ? 攻め込めばあっという間に終わるではないか」

「そうだ! これだけの兵力があれば、ザナドゥ王国を一気に攻め落とす事が出来る!」

「しかし向こうが降伏するのなら、戦わずに済むんだろう?」

 どうやら攻める派と降伏勧告派に分かれているようで、意見が纏まらない。
 ザナドゥをどうにかしたいという考えは共通だが、その手段は意見が分かれている。

「じゃ~さあ? 1週間だけ包囲しようよ。そうしたらこっちの物資は一通り揃うし、その間は攻める振りだけして疲れさせて、こっちの体制が整ったら攻めるってのはどう?」

「おおなるほど! 絶え間なく攻める振りをして、相手を疲弊させるのだな? それは賛成だ」

 この意見にはみんな賛成し、1週間だけ攻める振りをして疲れさせる作戦が取られる事となった。




「向こうの様子はどうだ?」

 城の寝室で、国を抜け出して来たミュゼウスを抱きながら、エルノヴァに状況を確認する。

「どうやらこちらを疲弊させるつもりのようじゃな。あと物資が揃っておらぬようで、1週間後に揃うそうじゃ」

「そうか。なら物資が届く前に全て奪ってしまえ。奪えない場合は燃やすか破壊しろ」

「了解じゃ。ところでお前様、ミュゼウスに怪我は無かったのか?」

 正面から抱きかかえ、小ぶりな胸をつまみながら体を確認する。

「かすり傷一つないな」

「そうか、それは良かったのじゃ」

「それと、タイミングを見て次の作戦に移るから準備をしておけ」

「うむ、了解した」

 エルノヴァが部屋を出ると、数枚の小さな紙を取り出す。
 それにメモ書きをするとスゥッと紙が消え、無くなってしまった。

「さて、連絡は完了じゃ。後はタイミングを見ねばのぅ」
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