179 / 373
第5章 世界大戦
第178話 士気が低いなら上げればいいのよ
しおりを挟む
氷結龍が現れた事により、街の防衛は非常に危険な状況に入ったと言える。
本来ドラゴンという物は人前には姿を出さず、出た時には破壊の限りを尽くす。
それが魔物の大行進と共に現れるなど、危機的状況が絶望的状況に変わってしまった。
当然それを確認した防衛隊は浮足立ち、声にこそ出さないがどうやって逃げようか考えている。
「慌てるな! Sランクの私が居るのだ、ドラゴンなど簡単に倒してみせるぞ!」
ベルゴットが檄を飛ばし、なんとか防衛隊を踏みとどまらせようとする。
冒険者がSランクに上がる条件にドラゴンと同等の魔物を倒すという物があり、ベルゴットもSランクなのでそれ相応の魔物を倒したはずだ。
たしかに随分と冷静であり、ドラゴンだからと焦ってはいないように見える。
「フロストって強いのかしら。随分と小さいし、あまり威圧は感じないのだけれど」
「それはあれッスよ。古代龍のカイザーさんやロードさんをよく見てますし、なれてしまったんスよ」
ザナドゥ王国にはドラゴンの最上級・古代龍がおり、見慣れている2人には他のドラゴンを見てもなんとも思わなくなっていたのだ。
「そろそろ日が沈むわね。夜になると魔物の方が夜目が効くし、矢を射るにしても明るい方がいいかしら」
そう言ってライトの魔法で城壁の外を明るく照らす。
照らすとは言っても、魔物がいる場所全体が昼のように明るくなり、外から街の中が見えない程に明るい。
本来ならば非常にいい事なのだが、残念ながら悪い方向に働いてしまう。
照らされた事により、その数の多さが明らかになってしまったのだ。
その数6万。
6万の魔物が街に向かってきているのだ。
「ひ! あ、あんなの戦えるかよ!」
「無理だ! 逃げろ、逃げるんだ!」
「ふっざけるな! 戦えるわけねーだろ!」
冒険者だけでなく、軍の兵士までもが我先にと逃げようとする。
ベルゴットですら顔を引きつらせ、すでに戦意を喪失しているように見える。
Sランク冒険者でも、ドラゴンの相手をしながら6万の魔物と戦うなど出来ないのだろう。
「愛国心は……ないんスかねぇ」
「ラグ、冒険者は国に所属していないんだもの、生まれ故郷や住み慣れた街ならいざ知らず、流れの冒険者がこだわる事は無いわよ」
「そうみたいッスね~」
だが、だからと言って見逃せるフランチェスカでもない。
何とか戦う手段を考えているが、ここまで防衛隊の士気が低くなってしまっては、取れる手段は数少ない。
仕方がないので、最も有効と思われる手段の一つを試す事にした。
「そういえばフランチェスカさんの杖、お兄さんのお手製なんスよね?」
「ええ、シュウト君が作ってくれたのよ。私には勿体ない程の杖だわ」
杖を構えると、フランチェスカの周囲には8つの巨大な同じ魔法陣が展開される。
「極大火炎弾! 同時発射!」
8つの極大火炎弾が1カ所に向けて飛んで行く。
数キロ先で魔物が行進している真ん中の、10メートルほどの高さで火炎弾同士が衝突し爆発、相乗効果で急激に爆発が広がる。
その破壊力はすさまじく、一瞬で500メートルほどのクレーターが出来上がり、大量の魔物が空を舞っている。
明るすぎて直視はもちろん、目をつむっていても眩しい程だ。
衝撃波と地響きで、街の中にも被害が出ないかと心配になる。
強烈な光が収まり、ようやく周囲が見えるようになった。
防衛隊が城壁から顔を出し、魔物の集団を確認すると……約1万の魔物が消滅し、それ以外の魔物もけがを負っているようだ。
それでも魔物の行進は止まらない。
「す、すげぇ……Aランクってこんな魔法を使えるのかよ」
「フランチェスカさんスゲー!」
「おれフランチェスカ姉さんに付いて行くぜ!」
などと調子づき、すっかり士気が回復してしまった。
とうのフランチェスカだが『やり過ぎた~』という顔だ。
フランチェスカの杖『スピードマジシャン』は10個の魔法を記憶させ、同時使用できるモノだ。
なので2スロットには回復魔法を登録し、残りの8つに極大火炎弾を登録してあった。
そう、1つでも凄まじい威力のある魔法を8つも同時に使用し、更に相乗効果で強力になってしまったのだ。
もちろん他のAランクはもちろん、Sランク冒険者のベルゴットですら呆然としている。
「「「Aランクとか関係ねーよ!!!」」」と内心思っているが。
極大火炎弾単体ならばAランクでも使う者はいる。
しかし8つも同時に使用し、MPが切れないで起きていられるものは他にはいないだろう。
「こ、コホン。さあみんな! フランチェスカ君が道を切り開いてくれたぞ! 諸君等も私達に続いて攻撃をするのだ!」
何とか気を取り直したベルゴットだが、しれっと手柄に便乗している。
したたかさはSランクとして相応しい。
勢いに乗った防衛隊は、遠距離魔法やカタパルトを使って攻撃を開始した。
本来ドラゴンという物は人前には姿を出さず、出た時には破壊の限りを尽くす。
それが魔物の大行進と共に現れるなど、危機的状況が絶望的状況に変わってしまった。
当然それを確認した防衛隊は浮足立ち、声にこそ出さないがどうやって逃げようか考えている。
「慌てるな! Sランクの私が居るのだ、ドラゴンなど簡単に倒してみせるぞ!」
ベルゴットが檄を飛ばし、なんとか防衛隊を踏みとどまらせようとする。
冒険者がSランクに上がる条件にドラゴンと同等の魔物を倒すという物があり、ベルゴットもSランクなのでそれ相応の魔物を倒したはずだ。
たしかに随分と冷静であり、ドラゴンだからと焦ってはいないように見える。
「フロストって強いのかしら。随分と小さいし、あまり威圧は感じないのだけれど」
「それはあれッスよ。古代龍のカイザーさんやロードさんをよく見てますし、なれてしまったんスよ」
ザナドゥ王国にはドラゴンの最上級・古代龍がおり、見慣れている2人には他のドラゴンを見てもなんとも思わなくなっていたのだ。
「そろそろ日が沈むわね。夜になると魔物の方が夜目が効くし、矢を射るにしても明るい方がいいかしら」
そう言ってライトの魔法で城壁の外を明るく照らす。
照らすとは言っても、魔物がいる場所全体が昼のように明るくなり、外から街の中が見えない程に明るい。
本来ならば非常にいい事なのだが、残念ながら悪い方向に働いてしまう。
照らされた事により、その数の多さが明らかになってしまったのだ。
その数6万。
6万の魔物が街に向かってきているのだ。
「ひ! あ、あんなの戦えるかよ!」
「無理だ! 逃げろ、逃げるんだ!」
「ふっざけるな! 戦えるわけねーだろ!」
冒険者だけでなく、軍の兵士までもが我先にと逃げようとする。
ベルゴットですら顔を引きつらせ、すでに戦意を喪失しているように見える。
Sランク冒険者でも、ドラゴンの相手をしながら6万の魔物と戦うなど出来ないのだろう。
「愛国心は……ないんスかねぇ」
「ラグ、冒険者は国に所属していないんだもの、生まれ故郷や住み慣れた街ならいざ知らず、流れの冒険者がこだわる事は無いわよ」
「そうみたいッスね~」
だが、だからと言って見逃せるフランチェスカでもない。
何とか戦う手段を考えているが、ここまで防衛隊の士気が低くなってしまっては、取れる手段は数少ない。
仕方がないので、最も有効と思われる手段の一つを試す事にした。
「そういえばフランチェスカさんの杖、お兄さんのお手製なんスよね?」
「ええ、シュウト君が作ってくれたのよ。私には勿体ない程の杖だわ」
杖を構えると、フランチェスカの周囲には8つの巨大な同じ魔法陣が展開される。
「極大火炎弾! 同時発射!」
8つの極大火炎弾が1カ所に向けて飛んで行く。
数キロ先で魔物が行進している真ん中の、10メートルほどの高さで火炎弾同士が衝突し爆発、相乗効果で急激に爆発が広がる。
その破壊力はすさまじく、一瞬で500メートルほどのクレーターが出来上がり、大量の魔物が空を舞っている。
明るすぎて直視はもちろん、目をつむっていても眩しい程だ。
衝撃波と地響きで、街の中にも被害が出ないかと心配になる。
強烈な光が収まり、ようやく周囲が見えるようになった。
防衛隊が城壁から顔を出し、魔物の集団を確認すると……約1万の魔物が消滅し、それ以外の魔物もけがを負っているようだ。
それでも魔物の行進は止まらない。
「す、すげぇ……Aランクってこんな魔法を使えるのかよ」
「フランチェスカさんスゲー!」
「おれフランチェスカ姉さんに付いて行くぜ!」
などと調子づき、すっかり士気が回復してしまった。
とうのフランチェスカだが『やり過ぎた~』という顔だ。
フランチェスカの杖『スピードマジシャン』は10個の魔法を記憶させ、同時使用できるモノだ。
なので2スロットには回復魔法を登録し、残りの8つに極大火炎弾を登録してあった。
そう、1つでも凄まじい威力のある魔法を8つも同時に使用し、更に相乗効果で強力になってしまったのだ。
もちろん他のAランクはもちろん、Sランク冒険者のベルゴットですら呆然としている。
「「「Aランクとか関係ねーよ!!!」」」と内心思っているが。
極大火炎弾単体ならばAランクでも使う者はいる。
しかし8つも同時に使用し、MPが切れないで起きていられるものは他にはいないだろう。
「こ、コホン。さあみんな! フランチェスカ君が道を切り開いてくれたぞ! 諸君等も私達に続いて攻撃をするのだ!」
何とか気を取り直したベルゴットだが、しれっと手柄に便乗している。
したたかさはSランクとして相応しい。
勢いに乗った防衛隊は、遠距離魔法やカタパルトを使って攻撃を開始した。
0
お気に入りに追加
1,170
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる