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第4章 学園支配

第161話 ゆるいダンジョン。ゆるダン! 全然ゆるくなかった

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「それでミュゼウス、どうしてお前は鎧を着ているんだ?」

「え? だってシュウト様はダンジョンに入るんですよね? ご案内します!」

 冒険者ギルドで受付をしている最中、ミュゼウスの姿が見えないと思ったら、金属の部分鎧をまとって戻ってきた。
 部分と言っても本当に数か所で、籠手ガントレット脛当グリーブ、胸周辺だけで、他は魔法のかかった布鎧だ。

「あの、ミュゼウス様? いくらシュウト君がいるとは言っても、1国の姫がダンジョンに潜るのはどうなんですか?」

「大丈夫ですよ。こう見えても私、結構強いんですから」

「だ、だけども、年端もいかない女性をダンジョンに連れ出すのは、気が引けるのですが……」

「お気になさらず。ほらほら、早速魔物が現れましたよ!」

 ダンジョンに入って少し、一見洞窟のように見えるダンジョンだが、よく見ると壁は何かでコーティングされており、簡単に崩れる事は無いようだ。
 恐らくはダンジョンに住む魔物たちが加工したのだろう。
 それに通路は広く平らにならされており、光の魔法を使ったランタンがあちこちにかけられているため、思ったよりも明るい。

 そして最初に現れた魔物は……人の腕ほどの大きさもある蜂だ。
 しかし羽根は無く、ダンジョンの壁や床を歩いている。

「ウォーキング・ビーですね。狭いダンジョンに生息するハチで、羽根は無いので飛びませんが、とても素早い上に壁を歩くのと、アゴと針に注意が必要です」

「む、ムシィ!? ダンジョンって虫が出るのかしらぁ!?」

 フランチェスカが悲鳴を上げる。
 まるで少女の様な悲鳴に、逆に周囲の者が驚いている。
 へぇ、あのフランチェスカが……思わぬ欠点があった物だ。

「あはは、大丈夫ですよ! ハチは頭と胴体は硬いですけど、尻はやらかいので簡単に倒せます、ホラ」

 ミュゼウスはエンチャントソードを構えたまま一瞬で側面へ移動し、胴体と尻の付け根を切り落とす。
 いきなり体が切断されたハチはのたうち回るが、切断面に剣を突き刺し、剣から炎が発せられると灰になってしまった。

「ね?」

 ね? と可愛く首をかしげているが、修斗以外はどうやって倒したのか理解できていなかった。

「いつの間に移動したんだ……?」

「突然燃えたのだけれど……?」

「え? え? ミュゼウス様って強い……?」

 ミュゼウスがあっという間に1匹を倒したため、ウォーキング・ビーも警戒して距離を取っている。
 お陰で呆然とする4人が襲われなくて済んだようだ。

「なかなか良い感じだな。お前なら正面からでも楽勝じゃないか?」

「はい! この剣のお陰で……ほら!」

 距離を取ってジリジリ後退するハチに一瞬で接近し、風切り音がしたかと思うと、今度は1匹がみじん切りにされてバラバラになった。
 それに驚いたのか、ハチたちは一目散に逃げ始める。

「おっと、経験値が逃げるなよ」

 通路に見えない壁を作り、ハチたちはその場から逃げられなくなってしまう。
 観念したのか覚悟を決めたのか、アゴをカチカチ鳴らして威嚇している。

「よしお前ら、お前らだけで倒してみろ」

「あ、あのシュウト様……実はワーキング・ビーはCランク冒険者以上が推奨されていますので……皆さんではきついのではないかと……」

「……ん? このダンジョンは弱い奴ばかりじゃなかったのか?」

「それはきっと、キャロライン様とフローレンス様の主観だと思います。9人の悪夢の騎士トリプルナインの皆様にとっては、強いダンジョンなど存在しませんから」

「じゃあEランクのこいつ等だと……」

「はい、無理かな~と」

 アゴに手を当てて考え事をしている。
 何度かうなずいたかと思うと、前触れもなく命令をした。

「お前達4人で残りの3匹を倒せ。俺達は指示だけしてやる。ポリン、お前は前衛に回れ、いや、1.5列目で動け」

「ええ!? 私前衛なんて出来ないよ!」

「お前はローガスの邪魔にならない程度に攻撃に集中しろ。後ろの2人は防御と能力向上の魔法を使え」

 問答無用で命令をされ、否応なく従うしかなくなる。
 しかしポリンよりも、フランチェスカの方が前衛に向いているように思えるが……。
 試練のつもりだろうか。

 ローガスは剣を構え、ポリンはその後ろで小さな杖を構える。
 更に後ろではフランチェスカとルミナが防御魔法を唱えていた。
 幸いハチたちはまだ襲って来ないため、能力向上の魔法まで全て唱え終わった。

「それでは行くぞ。ポリン、俺の事はあまり気にせず攻撃をしてくれ」

「は、はい、やってみます!」

 一番近くにいるハチに向けて剣を振るう。
 戦っている脇で、修斗とミュゼウスは世間話を始めた。

「そういえばシュウト様、今度私、お姉さんになるんですよ」

「ほぉ? 随分と年の離れた兄弟が出来るのか?」

 必死に戦うローガス達だが、振るった剣は簡単に避けられ、巨大なアゴがローガスに襲い掛かるのだが、そこにポリンの雷魔法が命中し、倒せないまでも怯ませることに成功する。
 剣を切り返してハチに命中するも、その硬い殻を砕く事は出来なかった。

「シュウト様のお陰で、子供を増やす余裕が出来ました。本当にありがとうございます!」

「気にするな。メナストーンを助けようと思ったのは気まぐれだが、十分に報酬は貰っている」

 後衛の2人も攻撃に参加し、1人はハチの動きを鈍くする魔法を使い、もう1人は他の2匹の攻撃を防ぐため、足止めの攻撃魔法を乱発する。
 ローガスが何とか側面に回り込み、尻と胴体の付け根を攻撃しようとするが、柔らかい尻をグニャリとまげて、針をローガスにむける。

「そんな、まだまだご恩は返せていません」

「最初はそうだったがな、お前がイイ女になった事が、俺にとって1番の報酬だ」

 飛び出す針はローガスに命中! しかし刺さる事は無く体を吹き飛ばすだけだ。
 防御魔法が効いていたのだろう、しかも1度飛び出した針は直ぐには戻らないらしく、針を出したまま振り回している。
 振り回すのだから、わざわざ側面に回る必要は無い。

 正面からでも尻が見えた時、ポリンは尻目がけて空気の針を複数射出し、何本かが命中した。

「わ、私がですか!?」

「ああ。今晩は何回耐えられるかな?」

 尻が切り裂かれ、動きが鈍くなった所をローガスが体重をかけて剣を突き刺す。
 剣を中で一ひねりし、剣を通して魔法を発動させ尻が吹き飛ぶ。
 ハチはしばらくもがいていたが、じきに動かなくなった。

 2匹目3匹目も同じような戦法で戦えたようで、苦労はしたものの、何とか全て倒しきる事が出来た。

「今晩、ですか? えへへ、最後に抱いてもらった時は9回でしたから、今日は10回以上は――」

「ちょっとシュウト君!? 作戦を指示してくれるのではなかったのかしら!?!?」

 戦い終わり、汗まみれ泥まみれの4人は少々怒り気味だった。
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