上 下
105 / 373
第3章 異世界召喚

第105話 拷問を受けたカイリ

しおりを挟む
 カイリ王女は薄暗い地下牢で拷問を受けていた。
 ドレスは破れて裸に近く、髪も肌もボロボロだ。。
 両膝を地面につけ、両腕は広げて鎖で吊るされている。

「嘘ばかりつくな! お前は世界を征服しようとした! 素直に認めるんだ!」

「ちが……ちがう」

「何が違うか! 大魔王軍の力を我が物として、世界を混乱に陥れ、その隙に征服しようとしたんだろうが!」

「し、信じて……ほんとうに、ちがっあああ!」

 鞭が顔に当たり頬が裂けた。
 カイリは涙も出なくなったのだろうか、虚ろな目で拷問官を見ている。
 その目が気に入らなかったのか、拷問官は更に鞭で全身を打ち、皮膚が裂けて血が飛び散る。

「イヒィ~ヒヒヒ! いいぞいいぞ~、簡単に認めたらつまらないからな! やっと、やっとカイリ様を拷問できるんだ! もっともっと俺をたぎらせろーー!」

 どうやら拷問官、拷問が趣味の上、カイリを拷問したくてたまらなかったようだ。
 ズボンの上からでもわかるほどギンギンに膨らんでおり、そのねじれた性癖が見て取れる。
 
「よ~し、今日はここまでさ。ほら、最後のご奉仕をするんだ」

 ズボンをおろし、カイリの顔にペニスが押し付けられる。
 ソレを口に入れようとした時、牢屋の金属の扉が音を立てた。

「うお!? 誰だ一体! クライマックスだっていうのに邪魔するな!」

「それは済まなかったな。だが邪魔だ、どいていろ」

 修斗が少し屈んで扉をくぐり牢屋に入ると、拷問官はあわててズボンをはいた。
 両手が塞がっている拷問官を押しのけ、カイリの前にしゃがみ込んで声をかける。

「約束通り戻ってきたぞ。さあ、勇者召喚に賛成していた国王たちの謝罪を聞こうか」

 ぼやけた目で修斗を確認すると、拷問の苦痛に耐えていたカイリは大粒の涙を流し始める。

「ごめんなさい……シュウト様……! 大魔王軍が……壊滅して、各国は……全ての国は私を、裏切り者だと……大魔王の力を利用して、世界を自分の物にしようとしたと……!!!」

「ほほぅ、それでお前は投獄され、毎日犯されていたと?」

 自分の姿を思い出したのだろう、カイリは少しでも体を隠そうとするが、鎖が邪魔をする。
 以前は小生意気なカイリをへこませて楽しもうと考えていた修斗だが、想像よりも酷い扱いを受けていたため、少し心が痛んでいた。

「それでお前の父親は? 国王はどうしたんだ?」

「お父様は……他国の意見に逆らえず……自分は反逆者ではないと証明するために……直接私を投獄しました」

 さて、ここで大事になってくるのがカイリの意思だ。
 果たしてこの女はここまでされて、それでもなお世界を護ろうとするのだろうか。

「お前はどうしたい? 大魔王軍を滅ぼした俺が望みを叶えてやろう」

 目を見開いて修斗を見る。
 カイリ自身も修斗が大魔王を倒したとは考えておらず、内乱で崩壊したと思っていたからだ。
 自分の浅慮せんりょと軽率さに打ちひしがれ、それでもすがる相手は修斗しかいない。

「助けて……ください」

「分かった」

 腕の鎖を破壊し、前に倒れ込むカイリを受け止める。
 体はやせ細り、体は骨が浮いてゴツゴツしているうえ、栄養失調のため肌色も悪い。

「き! 貴様! 俺のカイリを! 俺のオモチャをどうするつもりだ!!!」

 拷問官が服を着終わったようで、随分と強気に修斗に詰め寄る。
 よく見るとクマ寄りの毛が薄いタイプで、荷物持ちとして有用そうだ。

「うるさい、お前のオモチャじゃない。消えろ」

 修斗が拷問官に手をかざすと、拷問官は一瞬で壁に叩き付けられ破裂した。
 血肉が散らばるが、修斗とカイリには万物を拒否する盾により当たる事は無かった。

 カイリを抱きかかえ牢屋から出ると、案内をした衛兵は姿を消していた。
 
「さあ、次の望みは何だ?」

「もう一度……もう一度だけ各国に話しを……」

 そこまで言って気を失った。

「お前様、この女とどんな約束をしていたのじゃ?」

「勇者召喚に賛成していた国の国王が、俺達に謝れば世界は滅ぼさない。だったかな」

「こほっほっほっほ。無理じゃ無理じゃ、人間モドキヒューマノイドはなぜか妙なプライドがあるからな、国王が勇者に、生贄に頭を下げるなどあり得んじゃろ」

「その結果がこれだからな。ある程度は予想していたが、予想を超えてきやがった」

「お前様の世界では、こんな事はないのか?」

「どうだろうな、向こうの世界でも、似たようなことがあった気もするな」

 地下牢から出てカイリが住んでいた屋敷に到着した。
 するとどうだろう、衛兵がたくさん集まり修斗達を取り囲む。

「裏切り者カイリとその協力者よ! 大人しく投降しろ! 今ならば命までは取らない!」

 リーダーらしき者がそんな事を言っているが、そんな言葉に従う修斗ではない。
 
「オイお前、国王に伝えろ。お前達を全滅させてもいいが、カイリの願いだ、もう一度だけチャンスをやる。各国の国王はここに集まり、そして勇者に謝罪をしろ。そうしたら許してやってもいい」

「ふざけるな! その様なたわ言、聞けるはずがな――」

 リーダーらしき者1人を残し、周囲の衛兵全ての体が破裂した。
 リーダーの体は血まみれになり、部下だった物の肉塊を眺めている。

「ひぃ……ひゃーーーーー!!!」

 全力で逃げ出そうとするが、血で滑って転びまくっている。

「もう一つだけ言う事があったな。大魔王軍を壊滅させたのは俺達勇者だ。内紛などではない」

 リーダーは立ち上がれないようで、四つん這いになって逃げて行った。
 それを眺め、修斗と元大魔王エルノヴァは屋敷の中へと入っていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

成長チートと全能神

ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。 戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!! ____________________________ 質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...