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第3章 異世界召喚

第95話 勇者たちはパーティー三昧?

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 トラの魔族・アシュターテと、恐竜の様な鳥・王鳥を勇者が倒したという情報は、瞬く間に国中に広まった。
 当初は騎士団の功績を横取りしたと言われていたが、100人の騎士団にはそんな力は無く、生き残った騎士達の証言によりそれは否定された。

 そうなると残るは勇者しか無いのだ。
 誰も信じなかった話だが、アイカとヴァージニアのステータスがオールマックスだった話が広がった事で信ぴょう性が増し、遂には限界解除リミッターリリースまでもが伝わり始めた。

 すると一変し、やれ救世主、やれ勇者様、やれ救いの神……今までは蔑む目を向けていたのに、希望のまなざしで、誰もが助けを求める声を上げる。
 そこで話題に上がったのが修斗のステータスだ。

 他の5人とは違い、ずっとステータスは110と表示されていたため、元々限界解除されていたのでは? という詮索が始まった。
 確かにその通りなのだが、他の5人に比べ、戦闘を繰り返してもステータス表示が変わらないことで、修斗のステータスを詮索する者が出てきたのだ。

 勇者たちが王城に戻ってきた時のブタ女・リリーアムの表情は素晴らしく誇らしげだった。

「流石でございますね、勇者様方。私は皆様の成長を信じておりました」

 恐らくは本心で言っているのだろう。
 しかし勇者を召喚した目的は魔族への生贄、だと言う事を知っている勇者たちには、その表情が酷く醜く映った。
 
 城での扱いも良くなり、毎晩あちこちの貴族からパーティーのお誘いがある。
 お誘いは国内だけでなく、国外からも頻繁に来ていた。
 もちろん強力な勇者の恩恵にあずかりたいからだろうが、あわよくば自国に取り込もうとする動きもある。

「ふぅ~ん、今回の異世界人って強かったのね。どんな人なのかしら、会ってみたいわ」

 とある国の姫様が、勇者の報告を受けていた。
 机の上には沢山の書類が積み上げられ、仕事をしながらその話を聞いたようだ。
 手を止めてイスから立ち上がり、窓の外を眺める。
 太陽の日が眩しく照り付けるため、手で影を作っているのだが、そこにあるのは荒れ果てた大地と、遠くには巨大な建造物が見える。

「我が国にこそ勇者が必要だというのに……世界のためだからと勇者召喚という蛮行を許していたけど、これで最後になるのかしらね」



「なんだお前達、美味しい思いをしていないのか?」

 城での朝食中、修斗は男勇者3人に呆れていた。
 
「前にも言ったがよぅ、おりゃ~コイツがいりゃ~それでいーんだよ」

「酒は美味く飲んでいるが、女が沢山いても意味が無い」

「騎士というモノはだねシュウト君、心に決めた女性と添い遂げるものなのだよ」

 3人にも沢山の女が言い寄り、貴族の養子縁組の話も沢山あるはずだ。
 もちろんこの国の王女はその気になっている。
 しかし3人の貞操は強いらしく、隣で一緒に食事をしている女がいれば、それでいいようだ。

「シュウト君は何て言うか、毎晩凄いよね。私達って手加減されてたんだなって」

「むぅ、ご主人様……どれだけでも使ってくれて……いいんですよ?」

「今のお前達に本気を出したら壊れてしまうからな。もうしばらくしたら思う存分やらせてもらおう」

 修斗は毎晩沢山の女を抱いている。
 相変わらず動物寄りの毛だらけは無理のようだが、顔が人間ならば、少々毛深くても大丈夫になったようだ。
 ちなみに昨晩は30人+アイカ・ヴァージニアと複数回やった。

「それにしても動きが鈍いな。もっと激しくなると思ったんだが」

「う、ご、ごめんねシュウト君。私ももっと練習するから」

「腰使い……激しくします」

「何の話だ? 各国の動きが鈍いと言ったんだ」

 男勇者たちが吹き出した。女性たちも声を殺して笑っている。
 そして顔を真っ赤にするアイカとヴァージニア。

「確かにね、私もそう思うよ。名の知れたトラの魔族を倒し、王鳥までも倒した私達へのアプローチが、思った以上に少ないのだからね」

「各国で牽制でもし合っているのか? それとも別の事か……」

「そもそも勇者っつ~モンがよぅ? 不可侵の存在とかじゃ~ねぇ~のか? あ~ん?」

「え? 不可侵って、召喚した国以外は接触禁止とかなの?」

「もしくは……接触は良くても、他国への移籍が不可?」

 それぞれの考えもあるだろうが、基本的に勇者は召喚した国であるイルメリータントのモノだが、別に他国が手出しをしてはいけないと言う事は無い。
 そもそも今までの勇者は、手を出す意味などなかったのだから。

「魔族の領域に、攻め込んでみるか……?」

 今の5人は魔族の先兵には負けない強さがあり、ボスクラスでも協力したら勝てる。
 とは言え、まだ魔族は本気で攻めてくるわけでもなく、小競り合いが起きている程度だ。
 そう……なぜだか小競り合いばかりなのだ。

 今回の勇者による要塞攻略は、その中でもあまりにも大規模な戦いだった。
 その後でも大規模な戦闘が起きたという話は聞かない。
 毎晩パーティーをする為に実力の一端を出したわけではないので、もっと世界には動いてもらわないといけない。
 来ないのならば、行けばいいという理論だ。

「最近ブタからは何か言ってきたか?」

 全員が首を振る。
 以前ならば理由を付けて、修斗達の行動を制限させたり、思い通りに動かそうとしていたのだが、最近はそう言った事もなく、ほぼ好きなことをやっている。

「行っちゃう? シュウト君」

「ご主人様……どこまでもお供します」

「行くんなら行くぜェ~」

「晩餐会にも飽きてきたからな」

「騎士たる者、安寧は望んでも、自分には厳しくあらねばならないからね」

「よし、それじゃあ明日にでも国境を目指そう。魔族領へ入ってもいいし、他国へ行ってもいい。それでも動きが無ければ、俺はこの国を捨てる」
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