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第2章 ザナドゥ王国
第71話 魔族の副官
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魔の森にある山岳地帯に到着すると、聞いていた通り大型の魔物が跋扈していた。
修斗にはどの程度の強さなのか理解できないが、一緒にいるパメラ、キャロル内政・人事担当、ハイエルフの長老、ルルナラの反応を見る限り、かなりの警戒をしている。
パメラは自分の心配ではなく、キャロル達の心配をしているようだが。
「ん? あそこの崖を何かが登っているな。あれもかなりデカイが、強いのか?」
修斗が指差した先には、巨大なゴリラの様な後姿が見えた。
手足を器用に使い、崖をよじ登っている。
「ああ! あれはアイアンバックです! 背中の白い毛が鉄のように硬く、奇襲攻撃が通用しない厄介な魔物です!」
ルルナラが悲鳴のような声をあげて怯えている。
素のルルナラからは想像もできない怯え方だが、それほどに恐ろしい相手なのだろうか。
「しかしなぜ、崖を登っているんだ? 上には何か食い物でもあるのか?」
「あ、忘れてました。あの崖の上には里があるのでした」
「ほぅ? 随分と落ち着いているな。自分の里が襲われそうなのに、アイアンバックを見つけた時とは反応が違うが?」
「だって私はすでにシュウト様の所有物ですもの。里は捨てた身でございます」
なぜか頬を赤らめて照れている。
しかしパメラが何かを発見した事で、状況は一変する。
「ん? なんだいあのデカイ鳥は」
アイアンバックの側を、コウモリの様な羽をもつダークエルフらしき者が飛んでいる。
アイアンバックの周囲を旋回し、ゆっくりと近づくとその場で滞空をしているが……なにやら会話をしているようだ。
「ダークエルフは魔物と話が出来るのか?」
「違いますシュウト様! あれは魔族ですわ! しかも魔王の副官だった者でございます!」
そう、勇者の手により魔王が倒されたが、副官は生き残っていたのだ。
副官は魔王の弔い合戦をするべく、魔の森の魔物を集めて人間界にせめこむつもりだ。
魔族もこの地に集結しようとしているが、生き残りが揃う前に、魔物を仲間に引き入れようとしているのだ。
「魔王? ああ、あ~何だったかという勇者に倒された、激ヨワ魔王か」
「ゲキヨワ……あのシュウト様? 魔王ですよ魔王。名前からして強そうではございませんか? それを激ヨワなどと。勇者だからこそ倒せたのではございませんか?」
「ガルタ・レーベンだろ? それならアタイよりも弱いのが分かってるから、その勇者に負けたんなら激ヨワさね」
パメラの言葉の意味が理解できず、ルルナラはキャロル内政・人事担当を見る。
「えーとデスね、パメラサンは以前、ブジュツ大会でユーシャサンに勝ってるデス。パメラサンはその時よりもツヨクなってるデスし、まおーサンにも勝てるのではナイカト」
修斗どころか、パメラもとんでもない強さであると説明したのだが、やはり勇者ブランドの力は偉大なのだろう、まだ疑っている。
そして長老を見るのだが……。
「ルルナラよ、以前にも話したが、我らが神・古代龍を遣わしてくれたのはシュウト様なのだ。勇者や魔王ごときに後れを取ると思うのか?」
ここまで説明されて、ようやくその強さを理解したルルナラ。
そして何を思ったのか、修斗の腕に抱き付き、豊かな胸を押し付けた。
「私、シュウト様の子が欲しゅうございます」
だそうだ。ルルナラの自分の欲望に忠実な点は、修斗に近いものがある。
とは言え、まだ修斗は子供が欲しいわけではないし、それを良しとしない勢力も存在する。
「ルルナラぁ~? いい加減にしないと、アタイの拳がお前の腹に命中しちまうよ?」
「ワタシはころんだ勢いで、ナイフをサシテしまいそうデス」
女2人に睨まれて、流石のルルナラもやり過ぎたと思って腕を放す。
ルルナラが離れたのを確認し、修斗は魔族を呼ぶ事にした。
「魔族か、どんな奴か見てみたいな。巨大な火炎弾」
今回はレーザーの様な撃ち方はせず、だたの巨大な火球を魔族とアイアンバック目がけて発射する。
魔族は飛んでいたためかわしたが、アイアンバックは崖を登っていたため、避ける事が出来ず命中・炎上し、燃えながら落下していった。
落ちて行くアイアンバックを一目見て、魔族は修斗達の存在に気が付いたようだ。
10キロメートルほど離れていたが、魔族は空を飛び、数回瞬間移動をして修斗達の側まであっという間に移動する。
「オマエたち? 誰に手を出したか分かっていやがるのか? ん~?」
修斗達の前に着地をした魔族は、紫色の肌、ピンクの長い癖のある髪、そして一糸まとわぬ姿なのだが、胸と下腹部周辺だけ毛が生えており、下着のように隠している。
そう、魔族は女だったのだ。背中からコウモリの様な羽が、尻からは細長い尻尾が生えている。
どちらかというと美人タイプだ。
「崖の上には俺の里がある。諦めて帰れ」
「ハ! 人間風情が何を言ってやがるかね。オマエ達は邪魔だから、さっさと殺してやr」
ゴッ!
魔族の女が目覚めた時、両手両足を体の前で縛られ、太い木の枝に吊られて揺れていた。
丸太の様な枝を修斗が担ぎ、それに魔族の手足を括りつけてあるのだ。
「お! オイ! 何した!? 俺様に何をした! てかどうなってやがるコレ!」
やっと目を覚ましたが、すでに手も足も出ない状況になっている。
完全に無視され暴れるが、風が下から吹きつけた。
下を見ると……崖を登っていた。しかもコウモリの様な羽は折りたたまれ、鳥の丸焼きをするようにロープで体に縛られている。
「ヒィィ! お、おい!? 何やってやがるんだ! 降ろせ、おろせぇ~!」
丸太を担いでいる手を離す。
当たり前のように落下していく女魔族。
「降ろす奴があるかぁ~~……」
地面近くで木が数本折れる音がする。
どうやら無事着地したようだ。
一行は崖を登り切り、山岳ダークエルフの里へと到着した。
修斗にはどの程度の強さなのか理解できないが、一緒にいるパメラ、キャロル内政・人事担当、ハイエルフの長老、ルルナラの反応を見る限り、かなりの警戒をしている。
パメラは自分の心配ではなく、キャロル達の心配をしているようだが。
「ん? あそこの崖を何かが登っているな。あれもかなりデカイが、強いのか?」
修斗が指差した先には、巨大なゴリラの様な後姿が見えた。
手足を器用に使い、崖をよじ登っている。
「ああ! あれはアイアンバックです! 背中の白い毛が鉄のように硬く、奇襲攻撃が通用しない厄介な魔物です!」
ルルナラが悲鳴のような声をあげて怯えている。
素のルルナラからは想像もできない怯え方だが、それほどに恐ろしい相手なのだろうか。
「しかしなぜ、崖を登っているんだ? 上には何か食い物でもあるのか?」
「あ、忘れてました。あの崖の上には里があるのでした」
「ほぅ? 随分と落ち着いているな。自分の里が襲われそうなのに、アイアンバックを見つけた時とは反応が違うが?」
「だって私はすでにシュウト様の所有物ですもの。里は捨てた身でございます」
なぜか頬を赤らめて照れている。
しかしパメラが何かを発見した事で、状況は一変する。
「ん? なんだいあのデカイ鳥は」
アイアンバックの側を、コウモリの様な羽をもつダークエルフらしき者が飛んでいる。
アイアンバックの周囲を旋回し、ゆっくりと近づくとその場で滞空をしているが……なにやら会話をしているようだ。
「ダークエルフは魔物と話が出来るのか?」
「違いますシュウト様! あれは魔族ですわ! しかも魔王の副官だった者でございます!」
そう、勇者の手により魔王が倒されたが、副官は生き残っていたのだ。
副官は魔王の弔い合戦をするべく、魔の森の魔物を集めて人間界にせめこむつもりだ。
魔族もこの地に集結しようとしているが、生き残りが揃う前に、魔物を仲間に引き入れようとしているのだ。
「魔王? ああ、あ~何だったかという勇者に倒された、激ヨワ魔王か」
「ゲキヨワ……あのシュウト様? 魔王ですよ魔王。名前からして強そうではございませんか? それを激ヨワなどと。勇者だからこそ倒せたのではございませんか?」
「ガルタ・レーベンだろ? それならアタイよりも弱いのが分かってるから、その勇者に負けたんなら激ヨワさね」
パメラの言葉の意味が理解できず、ルルナラはキャロル内政・人事担当を見る。
「えーとデスね、パメラサンは以前、ブジュツ大会でユーシャサンに勝ってるデス。パメラサンはその時よりもツヨクなってるデスし、まおーサンにも勝てるのではナイカト」
修斗どころか、パメラもとんでもない強さであると説明したのだが、やはり勇者ブランドの力は偉大なのだろう、まだ疑っている。
そして長老を見るのだが……。
「ルルナラよ、以前にも話したが、我らが神・古代龍を遣わしてくれたのはシュウト様なのだ。勇者や魔王ごときに後れを取ると思うのか?」
ここまで説明されて、ようやくその強さを理解したルルナラ。
そして何を思ったのか、修斗の腕に抱き付き、豊かな胸を押し付けた。
「私、シュウト様の子が欲しゅうございます」
だそうだ。ルルナラの自分の欲望に忠実な点は、修斗に近いものがある。
とは言え、まだ修斗は子供が欲しいわけではないし、それを良しとしない勢力も存在する。
「ルルナラぁ~? いい加減にしないと、アタイの拳がお前の腹に命中しちまうよ?」
「ワタシはころんだ勢いで、ナイフをサシテしまいそうデス」
女2人に睨まれて、流石のルルナラもやり過ぎたと思って腕を放す。
ルルナラが離れたのを確認し、修斗は魔族を呼ぶ事にした。
「魔族か、どんな奴か見てみたいな。巨大な火炎弾」
今回はレーザーの様な撃ち方はせず、だたの巨大な火球を魔族とアイアンバック目がけて発射する。
魔族は飛んでいたためかわしたが、アイアンバックは崖を登っていたため、避ける事が出来ず命中・炎上し、燃えながら落下していった。
落ちて行くアイアンバックを一目見て、魔族は修斗達の存在に気が付いたようだ。
10キロメートルほど離れていたが、魔族は空を飛び、数回瞬間移動をして修斗達の側まであっという間に移動する。
「オマエたち? 誰に手を出したか分かっていやがるのか? ん~?」
修斗達の前に着地をした魔族は、紫色の肌、ピンクの長い癖のある髪、そして一糸まとわぬ姿なのだが、胸と下腹部周辺だけ毛が生えており、下着のように隠している。
そう、魔族は女だったのだ。背中からコウモリの様な羽が、尻からは細長い尻尾が生えている。
どちらかというと美人タイプだ。
「崖の上には俺の里がある。諦めて帰れ」
「ハ! 人間風情が何を言ってやがるかね。オマエ達は邪魔だから、さっさと殺してやr」
ゴッ!
魔族の女が目覚めた時、両手両足を体の前で縛られ、太い木の枝に吊られて揺れていた。
丸太の様な枝を修斗が担ぎ、それに魔族の手足を括りつけてあるのだ。
「お! オイ! 何した!? 俺様に何をした! てかどうなってやがるコレ!」
やっと目を覚ましたが、すでに手も足も出ない状況になっている。
完全に無視され暴れるが、風が下から吹きつけた。
下を見ると……崖を登っていた。しかもコウモリの様な羽は折りたたまれ、鳥の丸焼きをするようにロープで体に縛られている。
「ヒィィ! お、おい!? 何やってやがるんだ! 降ろせ、おろせぇ~!」
丸太を担いでいる手を離す。
当たり前のように落下していく女魔族。
「降ろす奴があるかぁ~~……」
地面近くで木が数本折れる音がする。
どうやら無事着地したようだ。
一行は崖を登り切り、山岳ダークエルフの里へと到着した。
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