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第2章 ザナドゥ王国

第63話 ザナドゥ王国 対 ゲーベルク軍国家

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「あの国はバカなのか? おい教えてくれ、俺の目に映っている事は真実なのか?」

 ゲーベルク軍国家の指揮官は、わずか3千しかいないザナドゥ王国軍をみて戸惑っていた。
 対峙している場所は元々魔の森があった所なため、まだまだ切り株だらけだ。
 なので馬は効果が薄く、歩兵戦になると思われる。
 魔の森とも接するゲーベルク軍国家は、ザナドゥ王国と隣接する国では両端の片側であり、すぐ側には開拓されていない魔の森が広がっている。

 まだまだ開発途上のザナドゥ王国は、中心にある首都しかなく、各国とは大きな街道が繋がっているだけだ。
 ここは街道も整備されておらず、ゲーベルク軍国家とは交渉も進んでいないため、街道が出来るめども立っていない。
 国境には杭が打ち付けられ、ロープで囲われているだけなので、侵略は非常に簡単だ。

 ゲーベルク軍国家と接している国境は大きくは無いが、それでも1万人は横に並べる広さがあり、それだけでも簡単にザナドゥ王国軍は包囲されてしまう。
 
 そう、ザナドゥ王国は3千の兵は3つに分けられ、それぞれの先頭には隊長らしき人物が陣取っている。
 そのさらに背後には、修斗が本陣に待機している。
 パメラ、バーバラ、キャロラインの3人のみを連れて。

「やはりお飾りの国王だったか。この兵力差を見ても、自分なら何とか出来ると勘違いしているのか?」

「指令! ザナドゥ王国から使者が来ました!」

 馬上からザナドゥ王国軍を見ていたが、使者と聞いて一安心していた。

「そうか、今行く」



「……以上の事から、貴国は我がザナドゥ王国を侵略する意図があるものとし、撤退しない場合はコレを実力を持って排除するむねとする。以上、何か反論があれば述べてください」

 使者の言葉を聞いて、司令官は顔を真っ赤にしてプルプル震えていた。

「ふざけるな! こんな子供を遣わせて、我々を愚弄ぐろうするにも程がある! しかも撤退しない場合だと!? それはこっちのセリフだ! てっきり降伏の使者かと思えば、何なのだコレは!!!」

 テーブルを何度も激しく両拳で叩きつけ、テント内に大きな音が響き渡る。
 もちろん怒り心頭なのは司令官だけではなく、周囲に居る副官や護衛も同じだ。

「降伏? なぜ僕たちが弱い相手に対して、降伏をしないといけないのでしょうか?」

 フローレンス都市開発長は顔の高さで読んでいた紙を下ろし、司令官に対して大変失礼な感想を述べた。
 
「なぜだと!? 子供を送ってきたかと思えば無礼な事をぬけぬけと! 出来たばかりの国だからといっても礼儀をわきまえんか!」

「失礼はどちらですか? 僕は子供ではありません、1人の使者として扱っていただくことを希望します」

「うるさい! 女子供なら許されると思うな! ええい殺せ! このガキの死体を敵陣に投げつけてやれ!」

 宣戦布告の使者が殺されるのは世の常。
 今回も例外なく、使者の体には沢山の剣が突き刺さる事となった。
 フローレンス都市開発長の体には敵の護衛による剣が……刺さっていなかった。
 剣はぐにゃりと曲がり、フローレンス都市開発長の体を避けている。

「は? え? なんで?」

「剣が……剣が曲がっている……!?」

「この! このぉ!」

 数名の兵士は何度も剣を振り、刺そうとしているが、剣は柔らかい細枝のようにしなり、しまいには折れてしまった。

「ええいグズ共が! 俺がやる!」

 司令官が業を煮やして自らの剣を手にするが……結果は同じだった。
 
「な、何なのだコレは……俺は悪い夢でも見ているのか?」

「悪夢などではありませんよ、純然じゅんぜんたる事実です。シュウト様に楯突いた事、後悔する事になるでしょう。それではこれにて失礼」

 大げさに演技がかった挨拶をし、悠々とテントを出て行った。
 それを見て司令官は冷や汗を拭う。

「何が起こった……一体何があったんだ。アレは子供ではない、人間? いや、魔の森に住まうバケモノではないのか……?」

 微かに揺れる出口の布を見て、司令官は震えていた。

 一方その頃、いつの間にか本陣に到着していたフローレンス都市開発長は、修斗に報告をしていた。

「残念ながら撤退の意思は無いようです。剣で斬りつけられてしまいました」

「ほっほ~、俺の女に手を上げたのか、よし、全滅させよう」

 天幕の中でキャロラインの膝枕で横になり、顔に乗ってくる両乳を持ち上げて遊んでいたのだが、乳を顔ではねのけて勢いよく起き上がる。

「ひゃん!」

「それじゃあ全軍に攻撃命令を出すかい?」

「シュウト様! 先陣は私めに!」

「お前達は俺の側に居ればいい。号令を出した後は、他の6人で好きにやらせる」

 天幕を出て各部隊の隊長と空間を繋げる。

「聞け! あいつらは俺のモンに手を出した! その罪は殲滅を持って償わせてやれ! 各自! 好きに暴れてこい!!!」

「「「了解しました!」」」

 第1軍ウィリアム騎士団長
 騎士団1500、中央先頭。

 第2軍レベッカ魔法兵長
 魔法兵1000、左翼。

 第3軍カーリン(ハイエルフ)
 弓兵500、右翼。

 キャロル内政・人事担当 及び ビリー雑用係
 兵力無し、右翼の更に右、魔の森近くの丘の上で待機中。

 フローレンス都市開発長
 兵力無し、左翼の更に左にて、土中で待機中。

 いま、修斗にとっても初めてとなる、国をかけた戦いが始まった。
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