ステータスを好きにイジって遊んでたら、嫁たちが国造りを始めました

内海

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第2章 ザナドゥ王国

第61話 大使は14歳の少女

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「修斗は武器も作れるのかい?」

「武器自体はまだわからん。出来た武器をいじる事は出来るな」

「じゃあこのナイフをさ、もっと切れるようにできるかい?」

 パメラの腰にかかっているナイフを修斗に渡すと、マジマジと眺めている。
 
「このナイフは斬るよりも突く方が強い様だが?」

「突くよりも斬る方が好きなんだ。どうだい? できそうかな」

「こんな感じか?」

 あっさりと終わりパメラにナイフを返すと、次は投げナイフを渡すように言う。
 パメラはベルトに刺さっている5本を渡すが、今度は随分しっかりと観察している。
 何かをやっているようだが、それが終わりパメラに投げナイフを返す。

「あの石の壁へ向けて投げてみろ」

 食堂の壁に向けて無造作に投げると、ナイフは半分以上も石に食い込んでしまった。

「シュウト? 何をしたんだい?」

「空気抵抗を無くして、刀身の強化、後は自動回収かな」

「自動回収?」

「ナイフに『戻ってこい』と念じて見ろ」

「え? うん……あれ? ナイフが無くなってるよ?」

「パメラさん! ベルト、ベルトを!」

 壁に突き刺さっていたナイフが消えたかと思うと、ナイフはベルトに収まっていた。
 恐らくは空間魔法だと思うが、本来使い捨てのナイフが回収できるのは便利そうだ。

 その後は面白くなり、まずは重鎮が持つ武器を強化していき、他にもSランクからCランクまでの武器とアクセサリーを製作した。 
 これはどうやら貢献の多い者・国に使わせる様だ。

「そういえばCランクのブレスレットが献上品に入っていたが、メナストーンという国からだが、どんな国だ?」

「はっシュウト様、メナストーンは南の山岳地帯にある小国で、街は首都を合わせて3つと小さく、山岳地帯のため農作物もあまり取れず、経済的にも苦しい国でございます。Cランクのブレスレットであれば、国の財政が傾いてもおかしくは無い額だと思われます」

 フローレンス都市開発長が律儀に立ち上がり、右手を胸に当てて報告した。
 メナストーンの歴史自体は古いが、近年ではメイン産業である鉱石もあまり取れず、石炭や木炭の生産が主な産業になっている。

「ほぅ。じゃあザナドゥ王国にすがる様な気持ちで送ってきたのか?」

「そう考えて間違いないでしょう。かの国は世継ぎが1人しかおらず、3代先はあるかどうかも分からない国、そう呼ばれてございます」

「なんだ? 国王は種なしか?」

「違うよシュウト。あの国は国王ですら満足に食えていないんだ。悪い国じゃないんだけどさ、山奥に籠ってるだけじゃ世俗からも置いて行かれるからねぇ」

「食うに事欠く国が、俺にCランクを送ってきたのか。バカなのか?」

「バカですねシュウト様! しかしバカにはバカの理論があるのでしょう! それに嫌なバカではありません!」

「そうですね、アクセサリーを送ってバカ正直に『頼りたい』と言っているのでしょうし、確か王族が総出でパーティーに参加していたはずです。ザナドゥ王国に、シュウトさんのお力にすがりたいのでしょう」

「そうか。バカの相手は疲れそうだが、大使館くらいあるんだろう? 城に呼んで話くらいは聞いてやろう」

 朝食が終わり、せっかくあるのだからと巨大な謁見の間で簡単な打ち合わせをしていると、キャロル内政・人事担当の元に伝言が渡された。

「えっと、シュウトサマ? メナストーンの大使がトウチャクしたようデス」

「もう? メシが終わってから使いを送ったはずだが?」

「ハイ、もう……デス」

 キャロルも困惑しているようだが、来たというのならば会うしかない。
 少しして謁見の間の大きな扉が開かれると、そこには小さな女の子がいた。

「お、お、お、お目通りかないました事! ま、まっことに恐悦至極に存じます!」
 
 恐らくは10歳ほどの少女は、年齢に似合わない言葉遣いで玉座の前に立っている。
 髪は軽く肩にかかる程度で紫がかった銀色。華奢な体つきで顔も細い……いや、頬がこけている。
 黒と深い緑を基調としたゴシックドレスを着ているが、装飾品はあまりない。
 そして愛嬌はあるのだが、間違っても器量よしとは言えない顔をしている。
 ソバカスもあるし肌も荒れている。

「あまりかしこまらなくていい。メナストーンの大使はお前なのか? 随分と幼い様だが?」

「は、はい! ミュゼウス・ミゼルビア・アッテルバードと申します! 14歳です! メナストーン国の第一王女をしております!」

 緊張するな、というのが無理な話ではあるのだが、それにしても下手したてに出過ぎな気もする。
 それにしても14歳らしいが、随分と小柄だ。
 しきりに頭を下げているが、このままでは話が進まないと思い、修斗は勝手に話しを始めた。

「お前の国から贈られたアクセサリーだがな、あれは――」

「粗末な物で申し訳ありません!!! でもあれが我が国では精いっぱいの――」

「俺が喋っている時に口を挟むな」

「も、申し訳ありません!」

 そう言ってまた頭を下げ、今度は歯がカチカチ音を立てるほどに震えている。
 きっと失敗した、やってしまった、もうおしまいだ、とでも思っているのだろう。

「アレがお前の国の精いっぱいという事は理解している。その上で、返礼をしようと思う。持ってこい」

 ウィリアム騎士団長に命令すると、謁見の間の隣の部屋から大層な装飾が施された黒い木箱に、一本の大きな剣が収められていた。
 修斗が作ったエンチャントソードだ。
 箱の中は赤いフカフカの布が敷き詰められ、鞘に収まってなお、剣はひと際存在感を放っている。

「これは俺が作った武器でな、お前達の誠意に対する一つの対価だと思えばいい」

 ウィリアム騎士団長がミュゼウスに近づき、低い身長に合わせて片膝をつく。
 しかしミュゼウスはどうしていいのか分からず、修斗とウィリアム騎士団長の顔を交互に見ている。
 いきなり数倍の価値がある物を渡されたのだ、この反応が普通だろう。

「大丈夫ですよ、コレはシュウト様のお気持ちなのです。お受け取り下さい」

「で、でも私、こんな大きなものを渡されても……」

「ご安心を。この剣は軽いのです。しかも何故か箱まで軽いのです。さあどうぞ」

 恐る恐る手を伸ばし、自身の慎重に近い大きさの箱を受け取ると……。

「あ、本当に軽いです! どうして?」

「私にもさっぱり」

 ウィリアム騎士団長、顔に似合わず子供の扱いが上手いようだ。
 蓋を閉じて箱を両手で抱えるように持つミュゼウスだが、箱が大きすぎて顔が隠れてしまう。
 そういえば本来居るはずの付き人がいない。
 その理由を理解したのか、ウィリアム騎士団長、箱を持ってミュゼウスの斜め後ろに待機している。
 逆にミュゼウスはオロオロしているが。

「それで、お前の国は俺に何を望む」

「え、えっと、資金……援助か、土地の開発を、手伝っていただけないかと……」

「資金は良いとして、メナストーンは山岳地帯だったな。土地を広くして街を増やすつもりか?」

「いえ、まだ手付かずの山がありますから、そこを掘れば鉱石が出てくるのではないかと思ってます」

 単純な支援ではなく、国の事業を復活させたいようだ。
 資金援助だけでは金が尽きたらお終いだが、今までの経験がある事業ならば継続性があり、少なくとも鉄鉱石が尽きるまでは資金に困る事は無いだろう。
 山岳地帯なので木材には事欠かないだろうが、金額的には補助にしかならない。

「わかった。ザナドゥ王国が最初に行う他国の支援は、メナストーン国の鉱山開発だ」
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