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第42話 神の魔法

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「出てこい女神ルデリット」

 降臨の儀式を行い、修斗は自分を転生させた女神、ルデリットを降臨させた。
 魔法陣が光り、天井を突き抜けて光の柱が伸びたかと思うと人の姿が現れる。
 足元まで伸びる長く輝く髪、白く薄い布を体に巻いただけのその姿は、以前あった時と変わらず美しい。

 光の柱が消えると、女神は床に着地する。

「私を呼んだのはあなたですか?」

 まるで初めて会うような挨拶だ。
 修斗にとっては忘れる事の出来ない出来事だが、女神にとっては特別な事では無かったのかもしれない。
 
 しかし本当に同じ女神なのだろうか。
 以前とは全く様子が違うように見える。

「俺を覚えていないのか?」

 以前ならばどうとも思わなかっただろう。
 しかし今の修斗は国王であり、更には自分の力を認識しているため自己顕示欲も強い。その自分を忘れたのだから、心中穏やかではいられない。

「以前お会いしたことがありましたか? 申し訳ありませんが、人との関りは薄いので、あまり記憶には残らないのです」

「お前が間違えて日本に転生させ、死んだのを良い事に麻薬中毒の親から産み捨てられた男の事を、覚えていないだと?」

 説明をすると腕を組んで考え始める。
 その表情は真剣そのものなのだが……随分と表情が豊かなようだ。
 上を向き、口をきつく閉じ、目をつむり、途中からは唸り始めた。
 段々と顔が下を向き、その豊かな胸に埋もれるのではないかと思うほどに下を向いている。

「あ! 思い出しました! 修斗さんでしたっけ? 確かあれは600年ほど前に……?」

 ぱっと正面を向き、思い出して嬉しいのかとても明るい顔だ。

「精々3~4年だ!」

「あれ? そうでしたっけ。すみません、人とは違って時間の概念が違うんです」

 女神、神に名を連ねる者は、どの時代へでも時間の行き来が自由なのだ。
 なので修斗と会った時は女神にとって600年前で間違いはない。

「まあいい。お前に召喚されてから、俺は随分と好き勝手をしている自覚がある。人を殺す事にも躊躇ためらいが無く、気に入った女は犯し、国を裏から操り、自ら転生さえしてのけた。そんな男を放置していていいのか?」

「はい、構いませんよ?」

 あまりにも……あまりにもあっけらかんと言ってのけた。
 修斗にしてもこの答えは意外で、少しはとがめられると思っていたのだ。
 だが逆に、女神からしたら他の人間と変わらない存在である……そう言われているようにも聞こえた。

 自分が特別ではない、それが気に食わなかった。

「なら俺はこれからも好きなことをしていくぞ? 何なら気分次第でこの世界を破壊するかもしれない」

「それも構いませんよ? どうせどの世界も数兆年もしたら衰退するのですし、そうしたら別の世界が産まれるだけですから」

 数兆年……途方もない数字が出てきたが、いくつもの世界を管理し、いくつもの崩壊と再生を見てきたのだろう。
 この世界も日本の世界も、しょせんその中の一つの世界に過ぎない。
 流石の修斗も途方の無い数字に呆然としていた。
 やはり神様は人の考えが及ぶ所では無いのだろうか。

「じゃ、じゃあ俺はこのまま好き勝手に生きていく。いいな?」

「はいどうぞ。何でしたら神の恩恵を追加しましょうか?」

 追加……ステータスを自由に書き換え、自分はおろか他人の書き換えまでできる修斗に、更に追加で能力を渡すと言っている。
 現段階で修斗はスキルを勝手に作り、世界の法則さえ捻じ曲げる事が可能なのだ。

 神とは一体どんな存在なのか、それを知りたくて女神のステータスを見ようとする。

「ここには実体がありませんから、私の事を知る事はできません」

 ステータスを見ようとしたが、女神の言う通り何も表示されなかった。
 いやその前に、女神は今、修斗の思考を読んだのか?

「お前は人間界で生活する事は出来るのか?」

「出来ません。下界とは世界が違いすぎるのです」

「そうか。それで、追加の恩恵はなんだ?」

「魔法を使えるようにして上げましょう」

 魔法……しかし修斗はすでに魔法を使える。
 しかもマスタークラスの腕前だ。

「ふざけるな。俺はすでに魔法をマスターしている。今さら何を下らない事を言っている」

「あなた方が使っているのは魔法ではありません。あれは私達神々の残滓ざんし、下界に零れ落ちた力の残りカスなのです」

 修斗達が使っていたのは、神々に取ってみたら魔法ではなかったようだ。
 しかも神々の力の残りカスを使って魔法だと騒いでいたのだ。
 それでは魔法とは一体……?

「なら魔法とは一体なんなんだ?」

「お見せしましょう」




 数分後、修斗は床に手を付いて嘔吐していた。
 目は血走り、体中の血管が浮き出て、今にも体が破裂してしまいそうだ。
 最初は良かったが、力が強すぎたのか、体が付いていけなかったのだ。

「か……! ああ……苦しい……」

「やはり無理でしたか。では魔法は無かったことに――」

「ま……て。使いこなして……みせ、る。魔法をな……なくすな!」

 折角もらったのだから、という訳ではなく、今の万能な修斗が使いこなせ無い事が気に食わなかったのだ。
 だからこの魔法の力を、意地でも無くすことは出来なかった。
 なので急ぎ、スキルを追加した。

「わかりました。しかし無理をし過ぎると、体が消滅してしまう事もありますので、注意してください」

 口元を拭い、歯を食いしばりながら立ち上がると、女神の姿は薄くなっていた。

「そろそろ時間のようですね。それでは修斗さん、よき人生をお送りください」

 そのまま女神の姿が見えなくなり、魔法陣も役目を終えたのか光を失った。
 まだ息の整わない修斗は、恨めしそうに魔法陣を睨みつける。

「クソ、気に食わない女神め。次に会う時は絶対に俺の事を覚えさせてやる」

 そう言いながら自分のステータスを表示させ、数値を変更する。

 名前:修斗
 年齢:14歳
 HP:11100000
 MP:200000
 力強さ:1100000
 知 力:1100000
 防御力:1100000
 素早さ:1100000
 魅 力:1100000
 状 態:
 スキル:ステータス改変
     神魔法使用可能
     炎系魔法LV100
     水系魔法LV100
     風系魔法LV100
     大地系魔法LV100
     空間系魔法LV100
     光系魔法LV100
     闇系魔法LV100
     対象のステータスを開示
     検索
     地図瞬間作成
     書写
     鑑定
     神魔法LV100

 相変わらずステータスに0を1つ追加し、さらにスキルには神魔法使用可能を追加、更にLVを100にした。
 これにより体調が元に戻り、吐き気もしなくなった。
 神魔法という名前が正確なのかは分からないが、どうやら修斗が考えているモノが対象として認識されるようだ。

かみ魔法……か。こんなものが魔法だと? ふざけるな、使ったら世界がいくつも崩壊するぞ……」

 空間魔法で次の目的地、遺跡へと向かった。
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