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第9話 魔法のレーザー

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 指名手配犯を捕えて懐が潤った修斗は、その足で魔法屋へと向かう。
 攻撃魔法や補助魔法など、600Gで買える分の魔法の書を買いあさり、その場で全て読破してしまった。
 
「店の裏で魔法の試し打ちが出来ますが、ご利用になられますか?」

 魔法を知らない修斗はいきなり実戦で使うのは危険と判断し、試し打ちをする事にした。裏に案内されると、そこには広場があり、黒い球体がいくつも浮いていた。

「あの球体を目がけて魔法を使ってください。壊れる事はありませんので、思う存分撃ちまくって大丈夫ですよ」

 なるほど便利な物だ。
 では早速、と、修斗は覚えた魔法を使う。

巨大な火炎弾マファーバ

 右手を前に突き出して呪文を唱えると、巨大な火の弾が手の前に現れる。
 その火の弾は徐々に大きくなり、さらに大きくなり……直径が5メートルを超えた時点で店員が声を上げた。

「ストーップ! やめてください! それを撃ち出すと、一面焼け野原になってしまいますから!!」

「なぜだ? 精々中ランクの魔法だと言っていたじゃないか」

「そのはずです! 巨大な火炎弾マファーバはC級魔法で、そんなに大きな弾にはならないはずなんです!」

 普通は人の頭くらいの大きさらしい。
 それが5メートル……確かに撃ち出したら大惨事になりそうだ。

 仕方が無いので店での試し撃ちは諦め、王都に来る途中で襲ってきた怪物に試す事にした様だ。
 怪物が見つからなくても、人気のない所でなら試し撃ちが出来るだろうから。

 


 王都から随分と離れた場所で巨大な爆発が起こり、その衝撃波は王都の街中にまで響き渡った。

 一体何が爆発したのか……修斗の仕業だった。
 王都から数キロ離れた場所で怪物を発見し、何も考えずに巨大な火炎弾マファーバを使ったのだ。
 その結果、100メートル程のクレーターと、周囲の木々をなぎ倒す事となった。

「中級程度の魔法でもコレか。被害が大きすぎて使い物にならないな」

「ねぇシュウト、もっと威力を小さくできないの?」

「威力の調節か……」

 ステータスを確認すると、巨大な火炎弾マファーバのLVは1となっている。
 LVが上がれば威力は上がるだろうが、果たして調節は出来るのだろうか。
 しかし単純な熟練度と考えれば調節も出来そうだが……修斗は何も考えず、巨大な火炎弾マファーバのLVを100にした。

 そして今度は呪文を唱える事なく、指先に意識を集中させる。
 指先に小さな炎が集まり、ソレの光は段々と強くなっていく。
 そして発射させると、光の線が地面に焦げ目を作り、倒れていた木々が切断された。

「わ! なになに今の! シュウトすっごい!」

「レーザーになったのか! クックック、たまんねぇな」

 他の魔法もLV1で試し撃ちをした後、全てLV100にしていく。
 各種属性魔法がマスタークラス、更には魔法の威力に関わる知力が高いため、C級魔法ですらS級魔法の比ではない威力になってしまった。

 ゲームでしか見た事のない魔法を自分が使ったという喜びからか、修斗は興奮を抑えきれず、面白がって乱発してしまう。

 満足して王都に戻る頃、何故か大量の兵士と冒険者らしき者たちが王都を出発していった。目的地は……修斗が作ったクレーターだ。
 そんな事は全く気にも留めず、修斗達は王城へと戻る。

「ねぇシュウト、王城に来たがってたけど、何をするの?」

「もちろん国の役に立ちたいからさ。僕の能力があれば、きっと役に立てると思うんだ」

 城の廊下を歩きながら話をしているが、修斗の話し方がいつもと違う。
 その理由は部屋に入ってから判明する。

 ドアを閉め、周囲に誰もいない事を確認すると、パメラを叩いた。

「きゃっ! ご、ごめんよシュウト。アタイ、なにかやっちまった?」

「人前でくだらない事を聞くな。国を乗っ取るつもりだ、なんて言えるはずが無いだろうが。考えてから喋れ」

 国を乗っ取る。その最大の目的は、この国のお姫様であるキャロラインを自分の物にする事、国を乗っ取るのはその為の手段でしかない。
 だが具体的な方法があるわけでもなく、行き当たりばったりでしか考えていない。

「今回は上手い具合に国王と会える機会があったが、こんな機会は二度とないかもしれないんだ。適当に国王を言いくるめて、何としてもお姫様と会うんだ」

「分かったよシュウト、アタイも協力するからさ、上手くいったらご褒美をおくれよ。何でもするからさ」

「上手くいけば、な」

 実際の所、今のパメラ以上に役立つ人間は居ないのだが、本人も含め、それを理解している人間が居ない。
 パメラの能力と、修斗の精液の効果が判明するのは、まだ先の事だ。

 そして定期報告の当日になる。
 定期報告は国中の貴族が集まるため、会場にはかなりの人数が入る事になる。
 修斗とパメラはアドバイザーとして参加するが、それは他の貴族にもアドバイザーが居るため特別な事ではない。

 意気揚々と会場へ向かう修斗とパメラ、ルネリッツ伯爵だが、珍しい人から呼び止められた。

「そこの者、止まりなさい!」

 城の長い廊下を3人で歩いていると、廊下の脇から数名が姿を見せた。
 兵士らしい者に守られて、先頭に立っているのは白い服装を身にまとい、腕・足・腰などに部分鎧を装備している女性だ。
 髪は黒く肩にかからない短さでストレート、頭にはサークレットが付いている。

 その女性は厳しい目で修斗を睨みつけている。

「これはこれはバーバラ聖女様! このような場所でいかがなされましたか?」

 ルネリッツ伯爵は聖女と呼び、その足元にかしずいた。

「アナタではありません。そこの子供! アナタからはバケモノじみた力を感じます。一体何者ですか!」

 手に持った細身の剣を向けられた修斗だが、思いのほか喜んでいた。
 『ここにもいい女が居るじゃないか』と。
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