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第2章 王太子の楽しみ

5.やらかしの代償

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 ――次の茶会で、俺は自分がやらかしたことの大きさを実感する
ことになった。

「ああ、私と一緒に居てもつまらないとのことでしたわね。
その言葉、そっくりそのままお返ししますわ!」

 茶会の開始早々、メリッサ嬢がいきなり辛辣しんらつな言葉
を吐いたのだ。

「なに……!」

 動揺のあまり、俺には言葉がそれしか出てこない。

 イレーヌ以外の他者との会話で、賞賛、承諾、歓迎以外の気持ちを
向けられたのは初めてだ。

「せっかく二人で居るのに、私だけが一方的に話を続けたり、無言で
本を読むだけで、楽しいとでも? 成績優秀でイケメン王太子だからって、
皆がクラリオン様の機嫌をとるのに必死だなんて思わないことね!」

 正論だ。返す言葉もない。

 ないはずなのだが――聞きなれない言葉を心が受け付けたくないせいか、
反射的に勝手に口が反論する。これも高貴な血筋のなせる技なのか。 

「俺はそこまで自信過剰な人間ではない。だがそこまで言うのであれば、
メリッサ殿のしたいようにすればよい」

「分かりました。つまらないお茶会なんて辞めて、私は私の行きたい
ところへ行きますわ。クラリオン様もお好きになさって」

 やはりメリッサ嬢は「つまらない」と思っていたのだな……。

 薄々察してはいたが、いざ目の前に突き付けられると心にクる
ものがある。
 砕け散ったプライドを総動員して表情をなんとか変えずにいる
ので精一杯だ。

 だから彼女が立ち上がって振り返りもせず王宮の庭を出て行こう
としても、俺には引き留めることが出来なかった。

***

 それでも婚約者に呆れられて茶会をすっぽかされた挙句、別行動中
に婚約者が見知らぬ誰かに危害を加えられてしまった――なんて失態
は起こせない。

 王族として致命的なダメージだ。
 完璧な王太子である俺が、そんな愚を犯す訳にはいかない。

 仕方なく、俺は彼女を尾行することにした。 
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