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第1章 メリッサの決意
4. 研究の成果
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一月後。
私は準備万端でお茶会に臨みました。
前回のことがあるので、もしかしたらお茶会は中止になってしまうのでは
ないかしらと不安でしたが、そんなことはなく、クラリオン様はいつも通り
のご様子で来てくれました。
今までもそうですが、クラリオン様は律儀なのです。約束をキャンセルされ
たことは今まで一度もありません。
「メリッサ……殿」
どこかぎこちない様子でクラリオン様が切り出します。
婚約して以来初めて、クラリオン様が私を名前で呼んでくださったことに
単純な私は思わず感動してしまいます。
――あ、いけない! おもしれー女にならないと!
「前回のことは――」
しかも珍しくクラリオン様の方から話しかけてくださりました。
要求でも相槌でもない話題提供――これはもしかして。
――噂に聞く婚約破棄?
この後、真ヒロインなる女性が登場してクラリオン様に寄り添い、
私は身に覚えのない罪状で断頭台行きに――そのフラグなのでは?
これは先手必勝しかありません!
私が「おもしれー女」になったことを披露しなければ!
「ああ、私と一緒に居てもつまらないとのことでしたわね。その言葉、
そっくりそのままお返ししますわ!」
「なに……!」
「せっかく二人で居るのに、私だけが一方的に話を続けたり、無言で本を
読むだけで、楽しいとでも? 成績優秀でイケメン王太子だからって、
皆がクラリオン様の機嫌をとるのに必死だなんて思わないことね!」
「俺はそこまで自信過剰な人間ではない。だがそこまで言うのであれば、
メリッサ殿のしたいようにすればよい」
――あれ? 参考文献によると「この俺にそんなことを言うなんて、
おもしれー女!」と称賛されるはずですのに。
でもここでいきなりキャラ変するのも、一貫性がなくてよろしくあり
ません。
ここは無理にでも通すことにしましょう。
「分かりました。つまらないお茶会なんて止めて、私は私の行きたい
ところへ行くことにしますわ。クラリオン様もお好きになさって!」
そう言い残して私は立ち上がると、振り返りもせず王宮の庭を出て
行きます。
心臓はもうバクバクです。
でもここが正念場。
動揺を見せる訳にはまいりません。
気になるクラリオン様の反応を確認することもなく、私はそのまま
歩き出します。
第一の神髄――クラリオン様を突き放すのは、ミッション・コン
プリートです!
次のミッションは、第二の神髄――予想のつかない行動。
参考にしたのは「ギワード商会長の愛され妻」。
もちろんイレーヌさんからお借りした参考書です。
ストーリーは国一番のやり手美形商人のギワードが、平凡な学生ハガネと
偶然出会い、恋に落ちるというもの。
そしてこの二人が出会うのが、歓楽街にある盛り場なのです。
ギワードは富豪ゆえに普段は専らサロンで社交を嗜んでいるからこそ、
偶然訪れたガヤガヤと賑やかな街の盛り場も、そこで学費を稼ぐために
働いていたハガネも新鮮に映った――舞台装置が整っていたからこそ、
そこで塩対応をして見せたハガネがより魅力的に感じたのですわ!
ここまで読み解いた私が、向かう先はもう決まっています。
――もちろん、盛り場です。
私は準備万端でお茶会に臨みました。
前回のことがあるので、もしかしたらお茶会は中止になってしまうのでは
ないかしらと不安でしたが、そんなことはなく、クラリオン様はいつも通り
のご様子で来てくれました。
今までもそうですが、クラリオン様は律儀なのです。約束をキャンセルされ
たことは今まで一度もありません。
「メリッサ……殿」
どこかぎこちない様子でクラリオン様が切り出します。
婚約して以来初めて、クラリオン様が私を名前で呼んでくださったことに
単純な私は思わず感動してしまいます。
――あ、いけない! おもしれー女にならないと!
「前回のことは――」
しかも珍しくクラリオン様の方から話しかけてくださりました。
要求でも相槌でもない話題提供――これはもしかして。
――噂に聞く婚約破棄?
この後、真ヒロインなる女性が登場してクラリオン様に寄り添い、
私は身に覚えのない罪状で断頭台行きに――そのフラグなのでは?
これは先手必勝しかありません!
私が「おもしれー女」になったことを披露しなければ!
「ああ、私と一緒に居てもつまらないとのことでしたわね。その言葉、
そっくりそのままお返ししますわ!」
「なに……!」
「せっかく二人で居るのに、私だけが一方的に話を続けたり、無言で本を
読むだけで、楽しいとでも? 成績優秀でイケメン王太子だからって、
皆がクラリオン様の機嫌をとるのに必死だなんて思わないことね!」
「俺はそこまで自信過剰な人間ではない。だがそこまで言うのであれば、
メリッサ殿のしたいようにすればよい」
――あれ? 参考文献によると「この俺にそんなことを言うなんて、
おもしれー女!」と称賛されるはずですのに。
でもここでいきなりキャラ変するのも、一貫性がなくてよろしくあり
ません。
ここは無理にでも通すことにしましょう。
「分かりました。つまらないお茶会なんて止めて、私は私の行きたい
ところへ行くことにしますわ。クラリオン様もお好きになさって!」
そう言い残して私は立ち上がると、振り返りもせず王宮の庭を出て
行きます。
心臓はもうバクバクです。
でもここが正念場。
動揺を見せる訳にはまいりません。
気になるクラリオン様の反応を確認することもなく、私はそのまま
歩き出します。
第一の神髄――クラリオン様を突き放すのは、ミッション・コン
プリートです!
次のミッションは、第二の神髄――予想のつかない行動。
参考にしたのは「ギワード商会長の愛され妻」。
もちろんイレーヌさんからお借りした参考書です。
ストーリーは国一番のやり手美形商人のギワードが、平凡な学生ハガネと
偶然出会い、恋に落ちるというもの。
そしてこの二人が出会うのが、歓楽街にある盛り場なのです。
ギワードは富豪ゆえに普段は専らサロンで社交を嗜んでいるからこそ、
偶然訪れたガヤガヤと賑やかな街の盛り場も、そこで学費を稼ぐために
働いていたハガネも新鮮に映った――舞台装置が整っていたからこそ、
そこで塩対応をして見せたハガネがより魅力的に感じたのですわ!
ここまで読み解いた私が、向かう先はもう決まっています。
――もちろん、盛り場です。
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