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1.さようなら愛しい人

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「運命の人が分かったから、お前とは離婚する」

 久しぶりに旦那様から届いた手紙には、一行だけそう書かれていた。
 私とは顔も合わせる必要がないと判断したのでしょう。

 使者が気まずそうに私の顔色を窺っている。
 彼は既に内容を知っているようだ。

 薄々こんな未来がやって来る予感がなかったとは言えない。
 旦那様は、もはや隠そうともしていなかったのだから。
 それでもやはり……いざ目の前に突き付けられるとなかなかの衝撃。  

「わかりました。でも……」

 精一杯動揺を顔に出さぬようにして、私はなんとか言葉を紡ぐ。
  

 ――その瞬間、私の脳裏に一気に何かが雪崩れ込んできた。

 あまりの勢いに眩暈がして、私は思わず頭を抱えて椅子に座り込んでしまう。

「タリア様……!」

 心配そうに遠くから様子を伺っていた侍女が水瓶を手に駆け寄ってくる。
 ありがたいけれど、それどころではない。

 
 ――私は思い出していた。

 これが2回目の出来事であると。
 そしてこれから先の未来に待ち受けているのは、最悪なものであることを。

「…………」
  
 完全に思い出した私は、意を決して立ち上がった。 
 完全に座った眼をした私を見て、使者がギョッとした顔で後ずさる。

 怯える使者を見つめて、私は騎士団長の妻らしく威厳をもって言う。
   
「離婚しても構いませんけど、あなたはその人に殺されますよ」
「え……」
「――そう、あの人にお伝えください」

 最悪の未来を回避する――私の戦いは、この日から始まった。 
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