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第144話
しおりを挟むバスに乗り、真白ちゃんの家まで相合傘をしながら帰る。
その間も、会話はしていたけど・・・真白ちゃんはどこか緊張しているような面持ちだった。
そんな真白ちゃんを横目で見ながら、歩いていると、“真白”と書かれた表札が見えてくる。
「真白ちゃん家、ここ?」
「は、はい。そうです」
へぇ・・・ここなんだ。
俺ん家からそんなに離れてないじゃん。
俺の家から歩いて30分もかからないぐらいの所だったから少し驚いている。
「ありがとうございました、先輩──って、肩濡れてるじゃないですか!」
「え?・・・あー・・・」
軒下に移動した真白ちゃんが俺の事を見て声を上げる。
自分の肩を見てみると、傘をさしていたのに濡れていた。
真白ちゃんの方に傾けてたからちょっと濡れちゃったのか。
「タオル貸すのでちょっと待っててください。すぐ取ってくるので」
「別にこのくらい──」
「唯ー?傘なかったけど大丈夫だったー?」
俺が大丈夫だと伝えようとした時、ガラッと音を立てて玄関が開く。
それと同時に、真白ちゃんにそっくりな人が顔を出した。
「あらヤダ!!送ってもらったの!?イケメンと相合傘なんて、唯もやるわね~」
「お母さん!ちょっと黙ってて・・・!」
優しそうな雰囲気で真白ちゃんと話をするお母様。
「あら、肩が濡れちゃってるわ。唯、タオル持ってきてあげて」
「言われなくても持ってくるから!」
「え、いや。このくらいなら大丈夫なんで──」
俺が言い終わる前に、真白ちゃんはパタパタと家の中へと入っていってしまう。
これは・・・帰れないパターンかな?
「唯を送ってくれてありがとね。えっと・・・お名前は?」
「あ、3年の山崎 優(やまざき ゆう)です」
「優くんね、そこだと濡れちゃうから中に入って。ほらほら」
「あ、あの・・・」
俺の背中を押し、家の中へと入れてくれるお母様。
想定していなかった展開に、思考が追いつかない。
「も~。唯ったら、こんなイケメンな彼氏いるなら言ってくれたらいいのに~」
「あ、いや・・・俺、真白ちゃ──唯ちゃんの彼氏じゃないです。・・・“まだ”」
「まだ!?じゃあつまりは・・・!!」
「・・・まぁ、そうですね」
お母様に向かってこの言い方は失礼なんじゃないかなと思いつつ、本音を口にする。
勘違いさせたままなのも嫌だけど、付き合いたいって気持ちはあるし・・・この言い方がいいと思ったのだ。
「ふぅん・・・で、唯のどこが好きなの?」
「え・・・えっと・・・中学ん時に、助けてくれて・・・その時に一目惚れして・・・好きなところはいっぱいあるんですけど、普段は凛としてるのに、時々見せる気の抜けた表情とか、ツンケンしてるところとか・・・ですかね?」
「ヤダ、ゾッコンじゃない」
お母様の問いかけに素直に答えると、俺の背中をバンッと勢いよく叩く。
うぉっ・・・意外と力強いな・・・あの力の強さは母親譲りか。
そんなことを思っていると、タオルを持った真白ちゃんが俺の元へと走ってくるのが見えた。
「まぁ・・・そうですね」
その姿を見て愛おしさが溢れ出しきて、思わず笑みを浮かべる。
それを見たお母様は目を見開きながら俺の事を見ていた。
「先輩、タオルどうぞ」
「あっ、ありがとう、真白ちゃん」
差し出されたタオルを受け取り、自分の肩を拭く。
濡れた範囲も狭いし、すぐに乾きそうだ。
「じゃあすみません、俺これで失礼しますね」
「あら、夕ご飯食べていけばいいのに」
「家帰ったら食べますんで。・・・タオル、ありがとう。またね」
タオルを真白ちゃんに渡し、お辞儀をして家を出る。
予想外の自宅訪問だったな・・・。
そんなことを思いながら、自宅までの道を歩き出した。
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