136 / 170
第136話
しおりを挟む文化祭当日──辻本さんが二海と付き合った。
正直言って、二海の奴なんかに取られるとは思わなかった。
二海のどこが良かったんだ?
それは辻本さんにしか分からないけど、やっぱり納得は出来ない。
例え、人違いだったとしても好きになった人ではあるから。
俺の方が気も使える上に顔も良いし、二海よりは性格もいい。
辻本さんにあんな酷いことも言わない。
それなのに・・・彼女は二海を選んだ。
今となっては“元”だけど、マドンナだって心底腹立たしかったんだろうなって、初めは思ってたけど・・・。
気が付いたら、マドンナは別の男に惚れていて、卒業式の時に公開告白をしていた。
あーぁ・・・俺だけ置いてけぼりかよ。
そんな心情の中、俺は学校へと向かっていく。
辺り一面には桜の木が嫌味ったらしく咲き乱れている。
桜の花びらが舞い落ちていく中、高校最後の始業式に参加する。
正直どうでもいいんだけど、さすがに3年になってから退学するなんて選択肢は俺には出来なかった。
そんな思いで通い続けてはいるけど、ダルいのはダルい訳で・・・。
早く終わんねーかな、始業式と新入生歓迎会。
そんなことを思いながら、淡々と紡がれる視界の言葉を聞き流す。
「続いて、新入生代表挨拶。代表、真白 唯(ましろ ゆい)」
「え──・・・」
辻本さんの名前?
一瞬そう思ったけど、どうやら“まひろ”ではなく“ましろ”だったみたいだ。
ましろ・・・か、ダメだ、今辻本さんの名前かと思っちゃった。
そんなことを思いながら、壇上に上がっていく女の子の姿が見える。
長い髪をサイドで縛り、後れ毛をピンで留めている、身長150cmぐらいの女の子。
俺は、その子の事を見たことがあった。
凛とした姿に丸い目、やわらかく、動く度に揺れる髪。
そして──
『まひろもどう?イケメンいるよ』
『・・・別にいい、キョーミないし。それに、その人めっちゃ困ってるじゃん』
あの時会った子と同じ声だった。
「──1年代表、真白 唯」
あの時呼んでた名前・・・ましろ・・・だったんだ。
俺、てっきり“まひろ”だと思って、辻本さんにアタックしてたけど・・・。
別人だったんだ・・・俺があの時気になった子は。
「・・・どおりで・・・辻本さんに聞いても覚えてない訳だ・・・」
・・・やっと見つけた、俺の運命の人。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

「史上まれにみる美少女の日常」
綾羽 ミカ
青春
鹿取莉菜子17歳 まさに絵にかいたような美少女、街を歩けば一日に20人以上ナンパやスカウトに声を掛けられる少女。家は団地暮らしで母子家庭の生活保護一歩手前という貧乏。性格は非常に悪く、ひがみっぽく、ねたみやすく過激だが、そんなことは一切表に出しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる