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第132話

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由紀side



時は過ぎ、卒業式──



他校とは時期がズレての卒業式だけど、私にとっては好都合だった。



今日が、最後のチャンス。



式が終わるのと同時に、ドキドキと高鳴る心臓を押さえながら、茂木さんを探す。



「ねぇ、茂木先輩いた?早く告白してきなさいよ」



「わ、わかってる。でも、茂木先輩見つからないんだもん」


その時、近くの女の子が私と同じように告白をするために茂木さんを探しているようだ。



──早くしないと、先を越される。



そう感じた私は、いち早く見つけるために茂木さんを探す。



早く・・・早く探さないと・・・。



辺りをキョロキョロしながら人をかき分けて行くと、バスケ部のマネージャーだった中島さんが茂木さんと話していた。



「茂木くん、あのね。私、茂木くんに言いたいことがあったの」



「俺に?なに?」



この雰囲気は、告白だ。



そう理解した瞬間、私は茂木さんの元へと駆け出していた。



「茂木さんっ・・・!!」



「ちょ・・・由紀ちゃん!?」



「え、三島ちゃん・・・!?」



中島さんが話しているのにも関わらず、茂木さんに後ろから抱きつく。



2人が驚いているけど・・・そんなこと構ってられない。



後ろからなら、言える気がする。



「私っ・・・茂木さんが好きです!他の誰よりも!!あなたが好きです!!私と、付き合ってください!!」



さっき茂木さんを探していた女の子だって、中島さんだって、告白をしようとしていた。



今言わないと後悔すると思ったから、大声で叫びながら告白をした。



「・・・由紀ちゃん、腕、離して?」



聞こえてきたのは、茂木さんの優しい声。



・・・もしかして、振られる?



そんなことを考えながら、抱きつく腕に力を込めた。



「由紀ちゃんの顔、みたい。ねぇ、ダメ?」



甘えるような言い方に、ドキッとしながらゆっくりと腕を離す。



私のことを正面から見る茂木さんは、とても優しい顔をしていた。



「顔、赤くなってる・・・可愛いね」 



私の頬に手を添えながら、愛おしそうに笑う茂木さん。



「俺も、由紀ちゃんが好き。・・・俺でよければ、付き合って欲しい」



「!茂木さ──」



返事を聞いて、嬉しさのあまり茂木さんの名前を呼ぼうとした時、辺りからうおぉぉぉ!!と歓声が聞こえてきた。



ビクッとして辺りを見回すと、近くにいた人達が私達を見ていた。



「おめでとう!!」



「よっ、茂木!!モテ男!!」



ガヤガヤと周囲が騒ぎ出す。



・・・私、茉弘と同じことした?



「ふふっ、目の前で同級生と後輩の告白シーン見れるとは思わなかったわ」



「えっ!?だ、だって中島さんが茂木さんに告白しようとしてたから・・・!!」



「部活できなくてごめんねって話をしようとしたんだけど・・・勘違いさせちゃった?」



中島さんがクスクスと笑いながら私のことを見てくる。



う、嘘・・・だとしたら私。めっちゃ失礼なことしたじゃん・・・!!



しかも公開告白だし・・・!!



「2年生では公開告白が流行ってるのね、見てて面白いわ」



「・・・忘れてください・・・」



顔を覆い、恥ずかしさのあまり消えたくなる。



勢いで言っちゃったけど、茉弘と同じことする羽目になるとは・・・。



「俺は嬉しかったよ。・・・由紀ちゃん、手ぇよけて」



「え──」



腕を掴まれ、視界が開けたと思ったら、茂木さんが超至近距離に見えた。



チュッ・・・というリップ音を立てながら、唇に茂木さんのが触れた。



それと同時に歓声が上がる。



「なっ・・・!?何して・・・!?」



「由紀ちゃんが可愛くて、つい」



ふふっ、といたずらっ子のような笑みを浮かべる茂木さん。



その笑顔に何も言えなくなり、口を閉ざして茂木さんの胸に顔を埋める。



恥ずかし・・・。




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