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第112話
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茂木side
部活前に足りなくなった備品を買い出しに出かける。
荷物を持ちながら体育館に戻ろうとした時、茉弘ちゃんと由紀ちゃんが何か話していた。
「・・・私がアンタに本性出した後から、茂木さん、休み時間に私の所に来てくれるようになったじゃん?」
「あぁ、確かに。よく見かけるね」
「・・・あの時から好きになったんだけど・・・なんで、会いに来てくれるのかなって・・・」
え──・・・。
聞き間違いじゃなければ・・・由紀ちゃん、俺が好きって言った・・・よね。
それって、どういう──
「んー・・・どうだろ?なんでそう思うの?」
「私が好きで会いに来てるのかと思ってたんだけど・・・浮いてる私のこと、心配して来てくれてるのかなって・・・考えちゃって・・・」
ボトルを作りながらポツポツと話す由紀ちゃん。
その姿は、恋してる女の子の姿で──
俺は、心中穏やかじゃなかった。
当たり前だろう、好きな子が自分のことを好きって言ったんだから。
「・・・私にはわかんないから、茂木さんに直接聞いてみれば?」
茉弘ちゃんがそう言ったのと同時に、止まっていた足を動かす。
「あのねぇ・・・聞けたら苦労しな──」
「俺が会いに行く理由は由紀ちゃんの顔が見たいからだよ」
「っ・・・!?」
由紀ちゃんの後ろから本心を告げると、驚いたように振り返る由紀ちゃん。
その顔はちょっと赤くなっていた。
・・・可愛い・・・。
「もっ・・・茂木さんっ・・・!?あのっ、どこから聞いてっ・・・!?」
「さぁ?どこからだろうね」
慌てる姿も可愛くて、思わず意地悪な返答をしてしまう。
本当はガッツリ聞いてたんだけど・・・内緒にしておいた方がいいだろう。
頬が緩むのを実感しながら、体育館の中へと入る。
「あっ、茂木さん。おかえりなさい。・・・なんかいいことでもありました?」
中に入るなり、二海が俺に声をかけてくる。
「え、なんで?」
「なんか、いつもより顔が緩んでるから」
「え」
思わず顔に手を当てると自分で思った以上に表情筋が緩んでいたのがわかる。
そりゃ嬉しくもなるだろ・・・好きな子があんなこと言ったんだもん。
「まぁ・・・嬉しいことはあったかな」
荷物をベンチに置きながら二海に話す。
前までは俺がそういう話を聞いていたのに・・・今回は立場が逆になっちゃったな。
「ふぅん・・・好きな子にでも告られました?」
「フフッ・・・そんな感じ。まだ直接は言われてないけどね」
「直接言われてないってことは・・・盗み聞きしたんすか?」
「ちょっと聞こえちゃっただけだよ。ほら二海、練習戻りな」
いつまでもベンチで休んでる二海に声をかけ、練習するように促す。
だけど、戻ろうとはしない。
「いやちょっと・・・指やっちまって・・・まひろ──辻本にやってもらおうかなって!」
「ふふふ、そっか。茉弘ちゃんならもう少しで戻ってくると思うよ。・・・はい、テーピング」
茉弘ちゃんの名前を呼びそうになって慌てて“辻本”と言い直す二海。
そっか・・・付き合いだしてから下の名前で呼ぶようになったのか。
微笑ましく思いながら買ってきたテーピングを二海に渡す。
「・・・今の、聞かなかったことにしてください」
「ハイハイ、わかったわかった。恥ずかしいんだね?」
「うるさいっすよ、今度は茂木さんのことからかってやりますからね」
そんなことを言いながら、茉弘ちゃんが戻ってくるのを待つ二海。
からかってやるから・・・か。
俺、由紀ちゃんが幸せならそれでいいかなって思ってたけど・・・ちょっとだけ、動いてみようかな。
部活前に足りなくなった備品を買い出しに出かける。
荷物を持ちながら体育館に戻ろうとした時、茉弘ちゃんと由紀ちゃんが何か話していた。
「・・・私がアンタに本性出した後から、茂木さん、休み時間に私の所に来てくれるようになったじゃん?」
「あぁ、確かに。よく見かけるね」
「・・・あの時から好きになったんだけど・・・なんで、会いに来てくれるのかなって・・・」
え──・・・。
聞き間違いじゃなければ・・・由紀ちゃん、俺が好きって言った・・・よね。
それって、どういう──
「んー・・・どうだろ?なんでそう思うの?」
「私が好きで会いに来てるのかと思ってたんだけど・・・浮いてる私のこと、心配して来てくれてるのかなって・・・考えちゃって・・・」
ボトルを作りながらポツポツと話す由紀ちゃん。
その姿は、恋してる女の子の姿で──
俺は、心中穏やかじゃなかった。
当たり前だろう、好きな子が自分のことを好きって言ったんだから。
「・・・私にはわかんないから、茂木さんに直接聞いてみれば?」
茉弘ちゃんがそう言ったのと同時に、止まっていた足を動かす。
「あのねぇ・・・聞けたら苦労しな──」
「俺が会いに行く理由は由紀ちゃんの顔が見たいからだよ」
「っ・・・!?」
由紀ちゃんの後ろから本心を告げると、驚いたように振り返る由紀ちゃん。
その顔はちょっと赤くなっていた。
・・・可愛い・・・。
「もっ・・・茂木さんっ・・・!?あのっ、どこから聞いてっ・・・!?」
「さぁ?どこからだろうね」
慌てる姿も可愛くて、思わず意地悪な返答をしてしまう。
本当はガッツリ聞いてたんだけど・・・内緒にしておいた方がいいだろう。
頬が緩むのを実感しながら、体育館の中へと入る。
「あっ、茂木さん。おかえりなさい。・・・なんかいいことでもありました?」
中に入るなり、二海が俺に声をかけてくる。
「え、なんで?」
「なんか、いつもより顔が緩んでるから」
「え」
思わず顔に手を当てると自分で思った以上に表情筋が緩んでいたのがわかる。
そりゃ嬉しくもなるだろ・・・好きな子があんなこと言ったんだもん。
「まぁ・・・嬉しいことはあったかな」
荷物をベンチに置きながら二海に話す。
前までは俺がそういう話を聞いていたのに・・・今回は立場が逆になっちゃったな。
「ふぅん・・・好きな子にでも告られました?」
「フフッ・・・そんな感じ。まだ直接は言われてないけどね」
「直接言われてないってことは・・・盗み聞きしたんすか?」
「ちょっと聞こえちゃっただけだよ。ほら二海、練習戻りな」
いつまでもベンチで休んでる二海に声をかけ、練習するように促す。
だけど、戻ろうとはしない。
「いやちょっと・・・指やっちまって・・・まひろ──辻本にやってもらおうかなって!」
「ふふふ、そっか。茉弘ちゃんならもう少しで戻ってくると思うよ。・・・はい、テーピング」
茉弘ちゃんの名前を呼びそうになって慌てて“辻本”と言い直す二海。
そっか・・・付き合いだしてから下の名前で呼ぶようになったのか。
微笑ましく思いながら買ってきたテーピングを二海に渡す。
「・・・今の、聞かなかったことにしてください」
「ハイハイ、わかったわかった。恥ずかしいんだね?」
「うるさいっすよ、今度は茂木さんのことからかってやりますからね」
そんなことを言いながら、茉弘ちゃんが戻ってくるのを待つ二海。
からかってやるから・・・か。
俺、由紀ちゃんが幸せならそれでいいかなって思ってたけど・・・ちょっとだけ、動いてみようかな。
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