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第109話
しおりを挟む時は過ぎ、文化祭当日。
ヒロイン役の茉弘にメイクを施して、本番を迎える。
劇の後半、茉弘はアドリブを言い出した。
しかもそれは、二海くんに向けたもので・・・。
劇の内容を知っている私から見れば、役を借りて告白の返事をしているようにしか見えなかった。
素で言えないのは、茉弘らしいけど・・・公開告白だってこと、わかってる?
しかも、公開キスまでする始末。
一応劇だってこと、忘れてない?
劇が終わった後、茉弘に問いただしてみるとやっぱりその場の勢いでやってしまったみたいだ。
公開告白に、公開キス・・・しばらくは話題にされるだろう。
だけど・・・好きな人と結ばれたんだ。
ちょっと・・・羨ましい。
そんなことを考えていると、茉弘が謝ってくる。
もしかして、私がまだ二海くんのこと好きだと思ってる?
「・・・あのね、言っとくけど私、二海くんのこともう好きじゃないからね。・・・他に好きな人できたし」
「えっ!?」
目に見えて驚いた様子の茉弘。
やっぱりか・・・。
「てか、二海くんのこと好きなままならアンタに助言なんてしないっつーの」
私が親友と好きな人が被ったら譲ってあげるような優しいやつに見えるのか?
その真逆なことをする人間よ、私は。
「・・・だ、誰?私が知ってる人?」
恐る恐ると言ったように、私の好きな人を聞いてくる茉弘。
ここで答えなかったら、まだ二海くんのこと好きだって勘違いさせちゃうもんな。
「アンタが知ってる先輩よ」
誤魔化すことも考えたけど・・・素直に言葉にする。
茉弘が知ってる先輩がどれぐらいいるか分からないけど・・・茂木さんは知らないという方がおかしいだろう。
「茂木先輩・・・とか?」
「・・・わかっても普通追求しないでしょ」
鈍感な茉弘に言い当てられ、少し黙り込んでから言葉を発する。
そんな私に対して、“由紀ならいけるよ”と簡単に言い放つ。
「簡単に言わないでよ。かなり手こずってるだから」
素直になれない私に、勝機があると思うのかな、この子は。
私だって素直になって気持ち伝えたいけど・・・どうしても素直になれない。
そんな自分の性格が、今はうらめしい。
そんなことを考えていると、二海くんが茉弘のことを呼ぶ。
多分、文化祭を一緒に回りたいんだろう。
案の定、二海くんは茉弘に文化祭を回ろうと提案してくる。
その言葉に私のことを見てきた茉弘に、クイッと顎を動かす。
私の事なんて見てないでさっさと行きなさい、そんな想いを込めて。
「う、うん。回ろ!・・・じゃあ、由紀、行ってくる!」
「えぇ、行ってきなさい」
茉弘の背中を押し、二海くんの元へと送り出す。
パタパタと廊下へ消えていく茉弘を笑みを浮かべながら見送ったあと、服を片付ける。
好きな人と文化祭を回れるのか・・・良いな。
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