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第103話
しおりを挟む劇が終わり、挨拶をすませた私達は各々文化祭を楽しんでいた。
私はと言うと、劇で告白してしまったことに対して尋問を受けていた。
「アンタ、自覚したのはいいけどあんな大衆の面前で告白することないじゃない」
「ごもっともです・・・」
由紀に手伝ってもらいながら衣装を脱ぎながら答える。
あの時は気持ちが昂って気にしてなかったけど、見てる人達も公開告白について公開キスをしたと盛り上がっているようだった。
そう考えるとめっちゃ恥ずかしい。
「公開告白に公開キスとか、しばらくは話題にされるわよ」
「忘れて欲しい・・・」
「まぁ、でも良かったんじゃない?好きな人と結ばれたんだもの」
そっか、由紀にとっては好きな人を取られたみたいな図面になってるんだ。
自分のことに浮かれて忘れてたけど、由紀だって二海のこと好きなのに。
「・・・なんか、ゴメン」
「・・・あのね、言っとくけど私、二海くんのこともう好きじゃないからね。・・・他に好きな人出来たし」
「えっ!?」
驚いた。
てっきり、由紀は二海のことが好きなままだと思ってたのに・・・。
「てか、二海くんのこと好きなままならアンタに助言なんてしないっつーの」
た、確かにその通りか・・・。
でも、好きな人って誰なんだろ。
「・・・だ、誰?私が知ってる人?」
「アンタが知ってる先輩よ」
誤魔化さずに答えてくれる由紀。
前までは好きな人なんて居ないよ、って誤魔化してたのに・・・。
変わったな、由紀。
だけど、私が知ってる先輩ってなるとかなり絞られるぞ。
「茂木先輩・・・とか?」
「・・・わかっても普通追求しないでしょ」
否定しないということは、そういうことだろう。
前に茂木先輩が由紀の好きな人を確認してたことがあったし、脈アリなんじゃないだろうか。
「由紀ならいけるよ」
「簡単に言わないでよ、かなり手こずってるんだから」
そんなことないと思うんだけどな~・・・。
そう思いながら、制服に着替えスカートの裾を整える。
ずっと長いドレスを着ていたから短く感じてしまう。
「なぁ、辻本。着替え終わったか?」
制服を整えていると、教室の外から二海の声が聞こえてくる。
二海も着替え終わったのかな。
「終わったよ」
「・・・あのよ!・・・一緒に、文化祭回ろーぜ」
外から声をかけてくる二海の声に、思わず由紀のことを見る。
由紀はクイっと顎を動かして“行ってきなさい”とジェスチャーする。
「う、うん。回ろ!・・・じゃあ、由紀、行ってくる!」
「えぇ、行ってきなさい」
優しく微笑む由紀に背中を押され、二海の元へと駆けていく。
扉を開けると、二海が壁に背中を預けるようにして立っていた。
「・・・行こ?」
「おう」
私の言葉で壁から離れて私の隣に来る二海。
そして、目的地も決めずに歩き出した。
「・・・なぁ、辻本」
「なに?」
名前を呼ばれ、二海の方を見る。
だけど、二海とは目は合わない。
「・・・付き合ってくんね?」
そっぽを向きながらそう口にする二海。
「いいよ、どこ行く?」
「・・・そーじゃなくて・・・俺の彼女になってくんね?・・・ってこと」
私の答えを聞き、頭をガシガシとかきながら言い直す二海。
そんなの、答えなんて決まってるじゃん。
「・・・公開告白した奴が、嫌だなんて言うと思う?」
「・・・思わねぇけど・・・一応聞いとかねぇとだろ?」
「そ、そう・・・。ま、まぁ・・・付き合いますけど・・・」
二海から視線を逸らし、照れながら答える。
改まって言われると恥ずかしいな。
「・・・おう」
二海も照れているのか、頭をかきながら私とは違う方を見ている。
いたたまれない空気の中、どちらからともなく手を繋ぐ。
「気になったんだけど・・・さ。アンタ、いつ私の事好きになったの?」
「・・・去年の球技大会ん時。お前、負けた後体育館倉庫で悔し泣きしてただろ?・・・それ見つけて・・・そっから」
少し恥ずかしさがあったけど、気になったことを聞くと、頭を掻きながらポツポツと話し始める二海。
確かにあの時は隠れて泣いてたけど・・・それ、見られてたんだ。
「だから私の事覚えてたんだ」
「まぁな。・・・んで、そっちはどうなんだよ」
「え・・・っと」
二海に言われ、少し考える。
きっかけというきっかけはなかった気がする。
気が付いたら好きだったって感じだったし・・・。
「気が付いたらって感じだったから、いつ・・・とか、わかんない」
「気付いたのいつだよ」
「え・・・劇の練習前に、アンタが寝てた時・・・かな」
あの時にはっきり自覚した訳だし・・・。
その前からもしかして、とは思ってたけど・・・。
「最近じゃねーか。気付くのおっそ」
「うるさいわね、これでも由紀に考えろって言われてから割とすぐに答え出したんだからね!?」
とは言っても、多少は時間かかりはしたけど・・・でも、気付いてからは待たせてないはずだもん。
「三島に?・・・だからアイツ、待ってればいい事あるって言ってたのか・・・」
「?なにが?」
「なんでもねぇ。・・・たこ焼きでも食うか」
「うん」
二海の手をしっかり握りながら返事をする。
その後、2人で屋台を見て周り、思う存分文化祭を楽しんだ。
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