犬猿☆ラブコンフリクト

綾鷹ーアヤタカー

文字の大きさ
上 下
99 / 170

第99話

しおりを挟む
茉弘side



文化祭に向けての準備が本格化する中、本番で着る衣装の準備が出来たようだ。



着るように促され、着替えたはいいものの・・・。



「似合わないな~」



お嬢様が着てそうなドレスを身にまとった自分を見て、強く思う。



体を動かしながら服を見るけど、こういうのは由紀の方が似合いそうだ。



「馬子にも衣装ってこのことを言うのね」



着るのを手伝ってくれた由紀が腕を組みながらしみじみと呟く。



「けなしてる?」



「褒めてんのよ。想像してたよりは似合ってるわ」



それは褒めてると言っていいのだろうか・・・。



そんなことを考えながら由紀をみると、顎に手を当てていた。



「だけど、顔が衣装に負けてるわね・・・化粧もした方がいいかも」



「い、今から?」



「当たり前でしょ、ちょっと顔貸して」



どこかからメイクポーチを取りだした由紀は、私を椅子に座らせる。



私は由紀にされるがまま化粧を施される。



ファンデーションに、アイシャドウ、アイライナーとテキパキとメイクをしていく由紀。



「・・・はい、できたわよ」



そう言って鏡を見せてくれる由紀。



そこには私じゃない人が映っていた。



いつもより大きく見える目、プルっとした唇、アラがない肌。



知識としてはあるけど、自分で化粧をしない私からしたら魔法にかかったような感じがする。



「着替え終わったか?」



後ろから声をかけられ、振り返る。



そこには二海がいて、バチッと目が合う。



その途端、二海は目を見開いてこちらを見つめていた。



「・・・な、なによ」



「・・・馬子にも衣装だな」



ふいっとそっぽを向いて吐き捨てるように言う二海。



「アンタもそれ言う?なに、そんなに似合ってない?」



「・・・似合ってない、とは・・・言ってない」



頭をガシガシかきながら呟く二海。



その頬は少しだけ赤くなっていた。



「・・・あっそ」



いたたまれない空気になってしまい、私も黙り込む。



「お前ら着替えたな、んじゃその状態で練習するぞー」



クラスメイトの1人がその空気をぶち壊し、練習を始める。



だけど、相変わらず演技中は二海と目が合わない。



序盤はむしろ目を合わさない方がいいと言われていたからそれでいいんだけど、終盤は目を合わせろと散々言われている。



このまま目を合わせらんないと色々とマズイぞ。



「ねぇ、二海くん──」



そう思っている時、ジッと見ていた由紀が二海に耳打ちをした。



なんて言ったかは私にはわかんなかったけど、その言葉を聞いた二海は、手で顔を覆った。



「・・・言われなくてもわかってるっつーの」



なんの事かは分からなかったけど、由紀の言葉で私を見つめる二海。



「なぁ、辻本。もう1回」



「う、うん」



二海の催促によってもう一度告白のシーンをやり直す。



私がセリフを言う時も、二海は私を見つめたまま目を逸らさない。



まるで、本当に告白してる時みたいな感覚がして、かなり恥ずかしい。



だけど、二海は目を逸らすことなくセリフを言いきった。



散々目が合わなかったはずのセリフを目が合った状態で言われてしまい、思わず頬が熱くなっていく。



まるで、二海に告白して返事を貰ったみたいな感覚。



もしかして、二海もそう感じて目線合わさなかったのかな。



だとしたら、気持ちわかるな。



「辻本、なんか顔赤くね?」



「へ!?そんなことないと思うけど!?暑いせいかな!!」



顔が赤いとクラスメイトに指摘を受けてしまい、挙動不審になりながらこたえる。



変なところで目敏いんだから。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

青春の初期衝動

微熱の初期衝動
青春
青い春の初期症状について、書き起こしていきます。 少しでも貴方の心を動かせることを祈って。

食いしん坊な親友と私の美味しい日常

†漆黒のシュナイダー†
青春
私‭――田所が同級生の遠野と一緒に毎日ご飯を食べる話。

坊主女子:学園青春短編集【短編集】

S.H.L
青春
坊主女子の学園もの青春ストーリーを集めた短編集です。

「史上まれにみる美少女の日常」

綾羽 ミカ
青春
鹿取莉菜子17歳 まさに絵にかいたような美少女、街を歩けば一日に20人以上ナンパやスカウトに声を掛けられる少女。家は団地暮らしで母子家庭の生活保護一歩手前という貧乏。性格は非常に悪く、ひがみっぽく、ねたみやすく過激だが、そんなことは一切表に出しません。

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

処理中です...