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第62話
しおりを挟む渡り廊下を渡っている途中、ビブスを手にした由紀と相手チームの男子2人が立ち話をしていた。
「ねぇ、連絡先だけでも教えてくんない?」
「私急いでるので・・・」
「いいじゃんいいじゃん、ほら、スマホ出してよ」
いや、立ち話じゃない、どう見てもナンパだ。
由紀、すごく困ってるし・・・見過ごせない。
「ちょっと!何してんのさ!」
由紀を2人から引き離し、由紀の前に立つ。
ナンパの退治は何度かしたことあるし、その時と同じような感じでやればいいはず!
「え、なに?オレこの子に用があんだけど」
「こっちは用ないので。失礼します。・・・行こ、由紀」
冷たくあしらい、由紀の手を引いて体育館に戻ろうとする。
だけど、由紀を引っ張る腕が掴まれた。
後ろを振り向くと、由紀も同じようにもう1人の男に腕を掴まれて動けなくなっているようだ。
「君、気が強いね。君でもいいよ。連絡先交換しよう」
「離してください、これから試合の準備があるんです」
「試合なんてどうでもいいじゃん?オレ、別に勝敗に興味無いし」
腕を振り払うけど、すぐに掴まれてしまって意味が無い。
いい加減にして欲しい、そう思った時私の腕を掴んでいた男が引き離され、肩に腕が回され後ろに引っ張られる。
「すんません、うちの大事なマネージャーなんで手ぇ出さないで貰えます?」
耳の近くから聞こえたのは二海の声。
顔を上げるとそこに居たのはやっぱり二海で、私は二海の腕の中にいる。
それを脳で理解した時、なぜかはわからないけどドキドキと心臓が高鳴り始めた。
「は、はぁ?オレは──」
「聞こえなかった?うちのマネージャーに手ぇ出すなっつってんの」
凄みのある声を出す二海に、男達は舌打ちをして退散していく。
退散していった男達の背中を見つめていると、ふぅ、とため息が聞こえてくる。
その息でさえ、ドキリと心臓が跳ねた。
「今回の相手は手が早ぇって茂木さんが言ってたけど・・・ホントに油断も隙もねぇな」
私の肩から手を離しながら、退散して行った男たちを睨みつける二海。
二海は離れたはずなのに、私の心臓はバクバクと高鳴り続けていた。
「・・・ありがとう、二海くん。助かったよ」
「あぁ、気にすんな」
由紀の言葉に短く返す二海。
私もなにか言うべきなんだけど、なぜか言葉が出てこない。
「早く戻るぞ、茂木さんスゲー心配してたから」
「そうだね、試合の準備も出来てないし」
由紀は特に動揺することなく、体育館の中へと戻っていく。
だけど、私はその場から動けそうになかった。
慣れないナンパをされたせいなのか、二海に抱き締められたせいなのか・・・。
理由は分からない、けど、動ける気がしなかった。
「・・・辻本、大丈夫か?」
大丈夫かって・・・別に大丈夫だけど・・・。
でも、なんか・・・今は二海の顔を見ると落ち着かない。
でも・・・なんで?
「いや・・・相手しつこかったな~って、思って・・・」
ふいっと二海から顔を逸らしながら答える。
おかしいな・・・二海の顔が見れない。
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