上 下
42 / 170

第42話

しおりを挟む

授業が終わり、放課後になった。



荷物をまとめ、バスケ部に行くために準備を始める。



「なぁ、辻本。お前今日部活来んの?」



荷物をまとめていると、隣からスポーツバックを背負う二海が声をかけてくる。



なんでそんなこと聞いてくるんだ?



「え、行くつもりだけど・・・?」



「マズいドリンク確定か~、俺可哀想~」



「はぁ!?」




頭の後ろで手を組んで歩き出す二海からの言葉に腹を立てる。



由紀の作るドリンクには文句言わないのに私のには文句言うってどういうこと!?



「そんな事言ってると、アンタのだけ作らないからね」



荷物を背負い、準備を整えながら二海に吐き捨てる。



本気でそんなこと言ってるなら作らないぞ、私は。



「うっわ職務怠慢じゃん、茂木さんに言いつけよ~」



「アンタがマズイって文句言うからでしょ!?」



「文句じゃありませーん、事実を言っただけでーす」



べーと舌を出して手をヒラヒラさせながら私の前を通り過ぎる二海。



「それならなおさら作んない!!」



「なら俺は茂木さんに言いつけるわ~」



私の言葉に返事を返しながら、部活に向かう二海。




なにが文句じゃない、よ。




文句以外の何物でもないじゃない。



全く・・・と思いながら荷物を背負い直し、由紀のことを待つ。



だけど由紀はすぐに私の元へやってきた。



「お待たせ~。・・・二海くんと何話してたの?」



「部活来るかって聞かれたの。行くって答えたら“マズいドリンク確定か~”って言われて・・・本当腹立つ~!アイツのドリンク絶対作んない!」



地団駄を踏みながら由紀の問いに答える。



普通に考えても、作ってもらってるのに文句タラタラってどういうことよってなっちゃう。



「・・・なんか、毎回そんなこと言われてない?」



「そうなの!!毎回!!ドリンク作る度に言われる!」



私がドリンクを作り直す度に“マズい”と言われ続けていたのを、由紀も聞いていたのだろう。



ていうか、由紀の近くで毎回やり取りをしてるから知ってて当たり前か。



「毎回言われるからケンカ売ってんのかなって気になるよ・・・ホントムカつく!」



「・・・二海くんって、そう言いつつ茉弘に頼むよね。ドリンク」



「そう!!それが理解できないんだよね~、マズいなら頼むなって話じゃん!」




私が作るドリンクまずいなら由紀に頼めばいいものを私に頼んでくるのだ。



自分からマズイものを頼みに来るなんて、ドMなのかと思ってしまう。



「・・・む・・・く・・・」



ボソッと聞こえてきた由紀の声──だけど、私はそれをハッキリとは聞こえなかった。



「え、なに?」



「!・・・ううん、なんでもないよ。早く行こ!」



聞き取れなかったから由紀に聞き返すけど、なんでもないと言って部活に行こうと急かされる。



いや、今は確実になにか言おうとしてたと思うんだけど・・・。



なんだったんだろ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

スーベニア・イン・ザ・スカイ ~僕が青春を忘れた理由~

純鈍
青春
私はこの生きづらい世界の中で僕の居場所を探した。 心は男、でも身体は女。穂花は本当の自分を隠して世間の普通に紛れるように高校生活を送っていた。しかし、ある時、不良である高校の同級生、光に罰ゲームで告白される。これは自分を揶揄った罰……、穂花は光に自分の秘密を共有する。光は穂花の話を聞き、真剣に友達になってほしいと言った。光も母親から酷い扱いを受けており、自分の居場所を探していたのだった。これは二人の高校生の葛藤と成長、そして、友情の物語。

粗暴で優しい幼馴染彼氏はおっとり系彼女を好きすぎる

春音優月
恋愛
おっとりふわふわ大学生の一色のどかは、中学生の時から付き合っている幼馴染彼氏の黒瀬逸希と同棲中。態度や口は荒っぽい逸希だけど、のどかへの愛は大きすぎるほど。 幸せいっぱいなはずなのに、逸希から一度も「好き」と言われてないことに気がついてしまって……? 幼馴染大学生の糖度高めなショートストーリー。 2024.03.06 イラスト:雪緒さま

すべて実話

さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。 友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。 長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

数十センチの勇気

こつぶ
青春
同じクラスの人気者に恋する女子のお話。 遠くから見つめるだけだった恋の急展開。 甘酸っぱい青春をもう一度。 笑 日常のちょっとした一コマを切り取った さらっと読める短編ストーリー。

【短編】怖い話のけいじばん【体験談】

松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。 スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

処理中です...