上 下
38 / 170

第38話

しおりを挟む

やっとの思いでたどり着いた学校──だけど、最難関が待っていた。



そう、体育だ。



今日ほど体育がなくなって欲しいと思ったことは無い。



机に突っ伏しながらお腹を押さえて唸り声をあげる。



正直、立ってるのもやっとな状態で体育なんてできるはずがない。



「ねぇ、茉弘・・・大丈夫?次体育だよ?」



由紀が心配そうに私を見ながら声をかける。



だけど、体を起こす気力は私にはなかった。



「薬飲んで落ち着いてはいるんだけどね・・・しんどいかも~・・・」



「体育、休む?」



「嫌、単位落としたくないもん」



休むのはいいけど、その分単位は落ちる。



それだけは避けたかった。



「うーん・・・じゃあ、無理しない程度にやりなよ?」



「わかった~」



由紀に返事をしたあと、ゆっくりと立ち上がる。



それだけでも少しだけフラフラする感覚があった。



とりあえず着替えてみるか・・・と、体操着を持って更衣室へと向かう。



その隣で由紀は心配そうに私についてきてくれた。



着替え終わってから体育館に向かい、授業が始まる。



私のクラスは男子が多いせいで男女に別れて体育はしない──つまり、男女混合。



正直体力が追いつかない。



いつもなら男子顔負けな動きができるけど・・・今は無理。  



「おい、辻本手ぇ抜いてんのか~!?今日動き悪いぞ~!」



「いつもの動きはどーした~!?」



私の動きがいつもと違うことに気付いたであろう男子が、私に声をかけてくる。



いや、今は無理だから。



そんなことも言えずに休憩が終わる。



仕方ない・・・と、私も立ち上がった時、視界が暗転した。



バタン──



「──おい・・・!!」



遠くから聞こえる物音と誰かの声・・・だけど、目を開けることが出来ない。



「・・・せん・・・ほけ・・・し・・・つ・・・きま・・・」




肩と膝の裏に暖かいのが触れたと思ったら、突然浮遊感が私の体を襲う。



あ・・・暖かい・・・。



そんな事を考えながら、意識を手放した。

しおりを挟む

処理中です...