20 / 170
第20話
しおりを挟む由紀が超のつく甘党疑惑が私の中で渦巻いている最中、ふと視線を上げてみると、私の方に向かって勢いよく飛んでくるバスケットボールが視界に入った。
「あっ──・・・!?危ねぇ!!」
「え──・・・」
迫り来るボール・・・恐らく、このタイミングじゃあ避けるに避けれない。
ボールを目の前にして私がとった行動は──・・・。
ベシン・・・!
──ボールを手で弾き落とす、というものだった。
「す、すみません!大丈夫でしたか!?手、痛くないですか!?」
恐らくボールを飛ばしたであろう人がいそいそと私の所まで来てボールを弾いた私の手を取り、赤くなっていないかを見てくる。
「・・・か弱い女子じゃあるまいし、このぐらい平気です。練習に戻ってください」
やんわりと掴まれた手を振りほどき、弾いたボールを手に取り、心配してくれた彼にボールを渡す。
私はか弱い女の子では無い、むしろその逆。
そんな女の心配しても、するだけ無駄。
・・・まぁ、されたらされたでちょっとは嬉しい。
いつも学校じゃあ女扱いされたことなんてないし。
まぁ、そうなったらそうなったで居心地が悪かったりもする訳だが・・・。
「・・・複雑・・・」
チグハグな思考に思わず思ったことが口からこぼれでてしまい、頭を抱えた。
「あ"ー・・・あっつい・・・!」
モンモンと考え事をしていると、Tシャツを裾を掴みバサバサとあおぎながらベンチへと戻ってくる二海の姿が視界に入る。
そう言えば、ボトル作り直したことまだ伝えてないな。
「ねぇ、二海」
「・・・?何だよ」
暑くてかなわない、と言った様子で汗を拭きながら顔をこっちに向ける二海。
「ボトル、飲まないの?・・・最初の一口から全然飲んでないよね?あんなにボトルまだ?って急かしてたのに」
「──・・・・・・!?」
わざと答えにくいような質問を二海にぶつけると、目に見えて慌て出す。
ふっ、ざまぁみろ。
「味、濃いんでしょ?・・・薄めてきたから飲みなよ」
「・・・・・・なんでわかったんだよ、イノシシ女のくせに」
「あんなにわかりやすく固まってたら馬鹿でもわかるっての。・・・ていうかイノシシ女はやめてよ、汗だく男」
ナチュラルにイノシシ女呼びをしてくる二海にべーっと舌を出す。
バツが悪そうにそっぽを向いた二海は、そのまま私の作り直したボトルを手に取って一口飲む。
「・・・・・・不味い」
「文句言うなら飲むな。性悪男」
うえーっと私に舌を見せて“不味い”アピールをしてくる二海。
なんで由紀には文句言わないで私には言うの・・・!?
ほんとむかつく。
「・・・ありがとな、辻本・・・」
「え──・・・・・・?」
今・・・二海、私の事・・・辻本って、呼んだよね?
あの性悪男の二海が・・・!?
私を、名前で呼んだ!?
イノシシ女じゃなくて!?
二海が私のことを“辻本”と呼んだことに驚きを隠せずにいると・・・。
「・・・・・・ぷっ、あほ面」
私の方を見るなり吹き出して笑う二海。
「っ、あんたにだけは言われたくないですぅ~。っていうか、由紀が作ったのには一言も文句言わなかったくせに、なんで私の作ったのには文句言うのさ」
「俺、さっきありがとうって言いましたけどぉ?そんなすぐ前のことも忘れるほど脳みそが空っぽなのかな~」
「いたたたたたたっ、頭わしづかみにしないでっってばっ・・・!」
私の頭に手を置き、グググッと力を入れてくる二海の手首をつかんで抵抗をした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】余韻を味わう りんご飴
Ria★発売中『簡単に聖女に魅了〜』
青春
キミと過ごした日々を噛み締めながら味わった祭りの後のりんご飴。
初恋を忘れられず、再会を果たした彼には彼女が出来ていた。
キミへのこの想いは何処へ行くのかな・・・
一章 再会
二章 絡まる想い
三章 新しい経験
四章 行き着く先は
ファンタジーしか書いて来なかったので、このジャンルは中々書くのが難しかったですが、少女漫画をイメージしてみました♪
楽しんでいただけると嬉しいです♪
※完結まで執筆済み(予約投稿)
※多視点多め。
※ちょっと男の子へのヘイトが心配かもしれない。
※10万文字以上を長編と思っているので、この作品は短編扱いにしています。
数十センチの勇気
こつぶ
青春
同じクラスの人気者に恋する女子のお話。
遠くから見つめるだけだった恋の急展開。
甘酸っぱい青春をもう一度。 笑
日常のちょっとした一コマを切り取った
さらっと読める短編ストーリー。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル
諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします!
6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします!
間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。
グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。
グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。
書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。
一例 チーム『スペクター』
↓
チーム『マサムネ』
※イラスト頂きました。夕凪様より。
http://15452.mitemin.net/i192768/
鬼の子
柚月しずく
青春
鬼の子として生まれた鬼王花純は、ある伝承のせいで、他人どころか両親にさえ恐れられる毎日を過ごしていた。暴言を吐かれることは日常で、誰一人花純に触れてくる者はいない。転校生・渡辺綱は鬼の子と知っても、避ける事なく普通に接してくれた。戸惑いつつも、人として接してくれる綱に惹かれていく。「俺にキスしてよ」そう零した言葉の意味を理解した時、切なく哀しい新たな物語の幕が開ける。
【短編】怖い話のけいじばん【体験談】
松本うみ(意味怖ちゃん)
ホラー
1分で読める、様々な怖い体験談が書き込まれていく掲示板です。全て1話で完結するように書き込むので、どこから読み始めても大丈夫。
スキマ時間にも読める、シンプルなプチホラーとしてどうぞ。
光のもとで1
葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。
小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。
自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。
そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。
初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする――
(全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます)
10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。
あのときは泣きたかった。
さとなか達也
青春
さとなか達也が二年半をかけて、構築した、全くもって、すばらしい、野球青春小説。出版社からも、文庫化のお誘いのあった、作品をモデルに、ストーリーを展開。面白さ、真面目さ、悲しさ、恋愛。すべてを注ぎ込んだ、名作をあなたの元へ。Web発信。頑張ろう!(がんばって!!先生。)さとなか達也
ぜったい、読んで。さとなか 達也
あのときは泣きたかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる